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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第1章 地味顔に転生しました
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侍女の証言

 アレキサンドラ付きの侍女、ベテランのエルゼは思った。

 『お嬢様の様子が最近おかしい』


 いえ、前から変わっているとは思っていましたが……

 鏡の前でため息をつくのは以前と同様。でも、前はため息の後にすごく暗い顔をなさって「こんな容姿では王子様とやっぱりつりあわない」とか「地味過ぎる」とか悲壮感を漂わせていたのに対し、最近は鏡の前で何やら呟いた後、嬉しそうになさっている。

 大好きな幼なじみの王子様にお会いする時でも、以前はそれはもう念入りに支度していらっしゃいました。

 やれ、ドレスの色が思っていたのと少し違うだの、レースの幅が気に入らないだの、髪に飾るリボンの位置が悪いだの、髪型をもっとふわっとしたいだの。

 まあ、好きな方に会うための子どものちょっとしたワガママと思えば可愛いものです。私達も自分の職務は心得ていましたし。


 ところが久々にお会いするという昨日、さぞや念入りに……と何通りもの髪型を考えドレスの用意をしていたのに私達は肩透かしをくらいました。

「ドレスと髪型はエルゼにお任せするわね」と、あっさり。

 これはもしや実力を試されているのでは?! 私エルゼはかなりのプレッシャー&汗ダラダラでございました。

 それを見越したのかお嬢様は、「エルゼはセンスが良いから。殿下はお忙しい方ですし、どうせすぐに帰ってくるから簡単な恰好でいいと思うのだけど」と、はにかみながらおっしゃった。


 か、かわいい~~~


 いえ、お嬢様が可愛らしいのはいつもの事ですけれど。

 奥方様の様な誰もが振り返って二度見するような派手な美貌ではないけれど。旦那様や兄君様のような一度見たら忘れられないような超絶美形ではないけれど。

 何ていうか、癒し系?

 耳の長い『ラビット』とかいう生き物に似ているような気が致します。

 先月贈り物として屋敷に届いたこの生き物を、お嬢様は「ピーター」と呼んで可愛がっていらっしゃる。


 話がれました。

それならそれで「お任せ下さい腕によりをかけますわね」と張り切って申し上げたのに、「いえ、本当に普通で」とおっしゃった。

 普通とか地味という言葉が何より嫌いなお嬢様がそんな事をおっしゃるなんて……


 おかしなことはまだありました。

 お嬢様は公爵令嬢。体型維持のためか食事といえば目に麗しいメニューをほんの少しつまむ程度。それが最近、「こんなに用意して、余ったらどうするのか」だとか、「もったいないから最初にみなさんの分を分けて、余ったのを私に下さい」だとかおっしゃるようになりました。

 いえいえ、それ、料理長が聞いたら卒倒致しますから。

 というより、公爵家のお食事を使用人が先にいただくなどとは本末転倒。あってはならない事です。


 料理長いわく、最近お嬢様が調理場の近くに頻繁に出没されるようになったとのこと。

 ご本人は隠れていらっしゃるつもりですが、茶色の髪が出入口から時々見え隠れするらしく、ぴょこぴょこ厨房を覗かれる姿が『ラビット』に似ているらしいのです。

 その料理長のジャンが「ラビットは食材にできるかも」と不吉な事を呟いていたこと、お嬢様には内緒にさせていただきますね。

 それにしても、最近(特に)おかしなお嬢様、私が心して見ていかねば。



 *****



 ゴメンなさい、お嬢様がおかしくなったのは私リリアンヌのせいです。


 あの日、遅く起きた奥様の部屋から洗面用の水を運ぶ際、「玄関ホールの花をかえたっけ」と確認のためそのまま寄り道してしまいました。

 カーペットにつまずくとは思わずに……

 あろう事か、たまたま1階にいたお嬢様にかかるとは。

 ボー然となさってらしたお嬢様。

 顔面蒼白の仲間たち。

 いつものようにお叱りを受けるかと、いえ、最悪クビも免れないと思って慌てて下に降り、平身低頭謝りました。でもお嬢様はボー然となさったまま。その後フラフラとご自分の部屋に戻られました。真っ青な顔をされて。

 しばらくお部屋で固まっていたと聞きました。

 私はもちろんお部屋に近付くことは許されず、上の者から下に至るまで散々に怒られましたが自業自得です。お嬢様はその後もお風邪を召さずに済んだご様子なので安心致しました。

 私に直接のお咎めは無かったのですが、エルゼさんいわく「あの後どうもお嬢様のご様子が……」とのこと。


 確かに、いつも以上に食い入るように鏡をご覧になっていらっしゃいます 。お顔やスタイルを以前よりいっそう気になさっているのかと思えば、食事をもりもり、いえ、たくさん召し上がるようになりました。

 そうかと思えば、「もったいないから余った分は捨てずに皆様で分けて下さいね。皆様がよろしければ、ですけれど……」と、おっしゃるようになりました。


 通常、毒味役以外の使用人は、使用人達用の公爵家と別メニューをいただいております。公爵はお嬢様から事前に相談されていたようで特に反対なさらず、人の良い奥様はむしろ賛成なさってらしたようです。

 この日以来私達の食事が大変豪華になり、「公爵家に一生ついて行きます」と心の中でコブシを握り密かに誓ったことは言うまでもありません。

 料理長以下シェフ達も「手間が減った」と不届きにも喜んでおりましたし。


 そういえば、愛しの王子様の所からもすぐに帰っていらっしゃいました。

 お部屋に戻るなりさっぱりした満足気なご様子で「お別れしてきちゃった」と……

 あんなに好きだったのにフラれてしまったのでしょうか?

 最近使用人にもフランクに接して下さるお嬢様をどうお慰めしようかと一同思案にくれていたところ「あ、私から距離を置くことにしたから気を遣わないでね」と。

 その後も思い悩むご様子は無く、今もペットの『ピーター』とお庭で遊んでいらっしゃいます。


 うぅ、今まで「うっかりリリー」とみんなから呼ばれ嫌な思いしかしてきませんでしたが、もう一生「うっかりリリー」でいいです。

 ですから元通りに、とまでは言いません。

 だって今のお嬢様の方が親しみやすいので。

 せめて王子様とは仲直りなさって下さい。

 でないと、旦那様や奥様はじめ王族の方々からも怒りを買いそうで怖いです。



 *****



 メリーです。

お嬢様付きの侍女の中では新人です。

 自分で言うのも何ですが、手先が器用です。マッサージやお針子の経験アリ。お嬢様を美しくする事にかけては、誰にも負けるつもりはありません!

 ドレスの直しや採寸、小物の管理も私の仕事です。

 だからこの前登城する時も、エルゼさんと一緒に念入りに心を込めて準備致しました。あ、もちろんリリーさんも。

 前回同様胸のパットは三割増し、ドレスのフリルやリボンも多めに付けさせていただきました。なのにお嬢様ったら、「胸のパットは要らないから取っていただける? あと、フリルやリボンは次からは少なめでお願いね。あと、普通で良いから」と、おっしゃった。


 普通って何~~!!

 私は驚き一瞬動きを止めてしまいました。

 地味という言葉が一番嫌いなお嬢様に、いったい何があったの?! このままでは私の出番が減ってしま…いえ、お嬢様を美しく磨くために雇われた私のいる意味が無くなってしまいます。

 ご本人は「地味」とおっしゃっていますが、素材は良いんですもの。今後がとても楽しみです。公爵家侍女の意地にかけても私がこれから存分に磨いて差し上げますわ!!

 だからどうか、『地味顔だから』と諦めずに私に出番を!!

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