表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
32/107

黒い陰の正体

 もう間もなく、リオネル王子が到着するとの先触れが届いた。何でも公務先の港町から戻る途中で、わざわざうちに寄るらしい。幼なじみとはいえ、成人したばかりの彼に忙しい時間を割いていただくのは、申し訳ない気がする。

 リオネル様と私は同い年。

 彼の方が誕生日が早く、先に16歳を迎えた。大人になった姿を見るのは、実はちょっぴり楽しみでもある。弟のレオンも劇的に変わっていたから、もしや王子様も? と期待をしてしまう。


 でも待てよ、リオネル様は変わらない方がカッコいいのかな? まさか太ってお腹が出てたりしないよね? ふくよかな男性は別に嫌いではないけれど、以前とギャップがあり過ぎて、わからなかったら困るし……

 向こうも、眠っている間に髪や瞳の色が変わった私を見てどう思うだろう? 調子にのるのや卑屈になるのは止めたけど、『他人からどう見えるか』というのは、今でもちょっとは気になる。




 まだリハビリ中でドレスは重くて着られない。

 せめて少しだけでもおめかししよう!

 そうはいっても、張り切ってくれたのは侍女さん達。

少し動くだけでもしんどいので、コーディネートも髪型もお化粧も、全て『太鼓持ちーズ』にお任せした。エルゼさんが妙に生き生きしていて、以前に比べてリリーとメリーの統率が取れていたのが怖かった。


 鏡の中から見返す、少し化粧をした自分の顔。前よりずっと大人になって垢抜けたように感じる。

4年前に着ていた服はもう着られない。新しい部屋着は柔らかな白い素材で胸に大きなリボンが付いている。金色になった髪が白に映えて、悪くはないと自分でも思う。


「お嬢様、美しいです」

「お嬢様、さすがです」

「お嬢様、食べてしまいたいです」


うん、きっちり褒めてくれて。

 みんな、今日もありがとう。


 王子に会うので張り切っていた私を、兄のヴォルフは一瞥しただけで何も言わず、弟のレオンは苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

 そんなに似合ってないのかな?


 さっきまでの浮上していた気持ちが、一気にシュッと#萎__しぼ__#んでしまった。自分では結構イケてると思っていただけに、美貌の兄弟に否定されるとダメージが大きい。

 2人ともイケメンで何を着ても似合うから、要求水準が高すぎるのかも。だけど、嘘でも良いからレディは褒めるべき。兄様ったら以前はレイモンド様の近くにいたのに、そういう所は学んでこなかったのかしら?




 王家の馬車が到着したようだ。

我が家が#俄__にわ__#かに騒がしくなった。ドキドキしながら待っていると、金髪のイケメンが2人、並んで入ってきた。


「アレク……」


 久々に会った幼なじみの王子様は、以前の面影を残したまま。大人っぽくさらにカッコよく成長していた。柔らかな金色の髪と、キラキラ光る碧の瞳は変わらない。嬉しそうにこちらに向かって走ってくるから、腰掛けていた椅子から立ち上がり、軽く礼をした。


「アレク、とても綺麗だ。具合はもう良いのかい?」


 そうそう、これよ!

 キラキラ王子は今も輝いていて、こちらの期待を裏切らない甘いセリフを言ってくれる。これぐらいの心遣いが、身内からも欲しかった。


「リオネル様もお元気そうで。公務でお忙しいのにわざわざお立ち寄りいただいて、大変恐縮です」


 #淑__しと__#やかに見えるよう控えめに応えると、後ろの麗人が面白そうに笑った。レイモンド様ったら、相変わらず鋭いんだから! 一生懸命猫を被っているので、放っておいて下さいな。

 王子様は私の気取った様子に気付かないふり。座っていた長椅子に腰かけるよう促すと、自分も隣に座った。なぜかそのまま私の両手を取って、端整な顔を近づけてきた。


 ええっと……何これ?

 この世界の人々は、みんな距離感を忘れてしまったの? それとも私がアレキサンドラの偽物じゃないかと、疑っているとか?


「君に会えて嬉しい。アレク、僕は……」


「ちょっといいかな? 国に関わる大事な話をしたいんだが」


 リオネル様を遮って、レイモンド様が声をかけてきた。あ、これ絶対に面白がっている顔だ。でも大事な話なら聞かなきゃいけないし、何より後ろの兄弟達がホッとした表情をしているのが気になる。王子様だけがムッとした顔をなさっていたけれど。


「回復しきっていないところを悪いんだけど、話を聞いておきたくて。黒い陰に#囚__とら__#われた者のうち、今のところ君だけが唯一の生還者なんだ」


 話というのは私が遭遇した事件についての事だった。事件の後、1人歩きや夜間の外出を禁止したので被害自体は減ったものの、未だに犯人不明の犯罪や誘拐事件が起こっているそうだ。その中の何割かに【黒い陰】が関係しているらしい。

 レイモンド様は調査の責任者。

 私は彼に体験したことを思い出しながら、話すことにした。




「目覚めた時に4年も経っていたと聞いて驚きました。自分では昨日のことのように感じておりましたから。4年前のあの日は……」


 浮かれて買い物に出かけた。

 店で試着しようとしたら、外に案内された。外に出た途端にアイリス様が豹変して、後ろから黒い陰が現れた。アイリス様が闇に呑みこまれそうに見えたから、思わず突き飛ばしてしまい、逆に自分が囚われた。

 誰かの叫び声を聞いて、そのまま何もわからなくなった。気付いたら真っ暗闇の中にいて、暇なので自分の人生を振り返っていた。しばらくしたら声が話しかけてきたので、助言に従って元の世界に戻ってきた。

 

「良い自分も悪い自分も全部受け入れて、幸せになってやる。そう思ったところで、黒い闇が元の世界への帰り方を教えてくれたんです」


 転生してきたこと以外の全てを話し、締めくくった。

 いつものチャラ男っぷりとはうって変わって真剣な表情のレイモンド様。疑問に思ったことを次々に質問してくる。


「じゃあ君は、自分のことを前向きに考えたから元に戻れたってこと?」


「はい。陰は、『僕は君で君は僕』と言っていました。思うに黒い闇は、自分の中の負の部分が具現化したものではないかと」


「ふうん。でも君が黒い陰に囚われたのって、確か12歳になったばかりの時だったよね? その年で自分のことを、そんなに冷静に見つめられるものかな?」


 う、疑われている……

 前世も入れたら17+12歳で29歳。囚われた時の私は、ここに居る誰よりも年上だった。

 でも、そんな事を言っても信じてもらえないし、頭がおかしくなったと思われるのがオチだ。ただでさえ、眠ったままで悪影響が出ていないかと心配されているから、バカになったと勘違いされたら大変だ。どう答えよう?

 困った顔で見回すと、周りが助け舟を出してくれた。


「アレクは感受性が強いから、他人より勘が良いんだよ」


 そう言ったのは、手を握ったままのリオネル様。


「アリィは普段は抜けてるけど、バカじゃあない」


 レオン、それって庇ってくれてるんだよね?


「病み上がりで疲れているのに、貴方は妹を責めるんですか?」


 睨みを効かせたのはヴォルフ兄様。

 若干1名、私をバカにしていた気がする。


「わかったわかった。しつこく聞いて悪かったね」


 レイモンド様が降参したように、溜息をつきながら両手を挙げた。

 ふう。これ以上責められないで良かった~。

 でも何かと鋭いレイモンド様は、相変わらず興味深げに私を見ている。まさかやっぱり疑われている?


「黒い陰とは自分の負の部分が具体的に現れたものだ、と君は感じたんだね? じゃあその陰――闇に囚われないようにするためには、囚われても戻って来られるようにするためにはどうしたら良いと思う?」


 うぅ、何だか面接を受けているみたい。

 もしくは、倫理や哲学の授業で居残りをさせられているような。ここで適当な事を答えたら、放してもらえないような気がする。


「明るく楽しい事を考え、自分を好きになるよう努力すれば良いのではないかと……」


「自分の心を強く持てば良いって事だね?」


 そうそう、言いたかったのはそれです!

 さすがはレイモンド様、セクシー担当だけでなく頭脳派です! ぶんぶん必死に頷くと、レイモンド様の顔にわざとらしくない笑みが戻った。


「わかった。大変参考になったよ。君の言ったその線で、今後の対策を立てていくことにする」


 あー良かった~。

 このまま面接が続いたら、体力の前に神経がすり減るし。

 イケメンだけど、何だかこの人苦手だわ~。


 でも、向こうはそう思っていないよう。

「ありがとう、助かったよ」と言って、頬に挨拶代わりのキスをすると、立ち去った。その動作があまりに自然だったので、避ける暇がなかった。


 それを見たリオネル王子は手を握ったまま呆気にとられているし、レオンは怒りに震えて舌打ちしている。ヴォルフ兄様の周りは5℃程気温が下がった気がした。かくいう私も顔が熱い。「無理して熱が出たのでは!」と侍女達が大騒ぎ。


 ベッドに強制送還されることになったので、リオネル様ともこの場でお別れすることになった。王子様は握っていた私の手の甲にそっとキスをすると、「今度ゆっくり改めて」とニッコリ微笑んだ。

 さすが、親戚同士!

 優美な仕草が様になっているけれど。

 幼なじみの彼までチャラ男にならないか、今後がとっても心配だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ