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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第1章 地味顔に転生しました
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パジャマパーティー

「一年が経つのって、早いわよね~~。歳は取りたくないわー」


 例によってお母様がため息を吐いている。

 私の12歳の誕生日直後にそのセリフは、お願いだからやめてもらいたい。




あれから一年――


 今我が家には、去年の私の誕生会&レオンのお披露目の時の顔触れがまるっとそのままいらしている。彼女達とはあれからずっと、親しくお付き合いをしている。

去年がガーデンパーティーだったので、今年は趣向を凝らしてパジャマパーティーという事になった。

提案したのはもちろん私。夢だったのよね~パジャマパーティー! 男子禁制ガールズトークに憧れていたの。前世も今世も通して初めての女の子同士のお泊まり会。実はすごく張り切っている。


 この日のためにサブレット(クッキー)をレオンに手伝わせて作ってみた。可愛い袋に入れたので、あとからみんなに配るつもり。私は公爵令嬢だけど、現在はお菓子作りにハマっている。貴族は厨房に入らないのが普通。だけど我が家はお母様の許可さえあれば、大抵の事はクリアできる。

去年弟が料理の本をくれたから、『レオンのプレゼントなら』という事でお母様の許可が出た。何で……?




 そんなわけで各々が家族や親に許可をもらい、年末の今日うちに集合することとなった。


「ダイアン様、イボンヌ様、この時期にうちにいらしていただき大変光栄ですが、本当によろしいんですか?」


 つまり、年越しイベントなんて貴重な機会に婚活しなくて姉さん達大丈夫? って聞いてみた。


「あら、公爵家の名前を出せば大抵の我が儘は通るわよ?」


「そうよ、この家の方が素敵な殿方が多いものね?」


 イケメン好きなお二人、相変わらずご立派です。

 宰相であるお父様も近衛騎士であるお兄様も、忙しいこの時期は王城に詰めていて滅多にお会いできない。だから夕食の時二人が戻っていると聞き、私も弟もホッとした。ところが、ヴォルフ兄様のそばに友人のガイウス様……はわかるけど、父様の隣にはレイモンド様までいらっしゃった。


「甥のリオンが来たがったけど、彼は王子でさすがに無理だからね。私は幸い暇だったから、面白そうだし付いてきちゃった」


 そんな感じでサラッとおっしゃった。王族でこんな時期に城抜け出したらダメでしょ。この人どんだけ自由人?

 もしやみんなこの人の世話を押し付けられたから一時帰宅が許されたのかしら? レオン、嫌そうな顔は止めなさい。でも、長テーブルで向かい合ったご令嬢方は当然喜んでいらっしゃる。


「レイモンド様、素敵」


「ガイウス様もカッコ良いわ」


「ヴォルフ様を間近で見られるなんて」


 口々にそうおっしゃるので『今夜のパジャマパーティーは中止かなぁ~』とガッカリしていると、「それはそれ、これはこれですわ!」とみんなに力説された。嬉しくって自然にふふっと笑みが溢れた。




「夜もまだ早いしせっかくお越しいただいたのですから、いかが?」


 楽しいことが大好きなお母様の企画で大広間ボールルームでダンスをする事になった。広間には既に楽団の皆様がスタンバイされている。食べ過ぎた私は正直かなりしんどい。地味だし普段は壁の花だから、ここはひとつおとなしく壁に張り付いていよう。


 一番身分の高いレイモンド様、当然ご令嬢達ハンターに狙われている。彼のキレイな瞳が誰かを探してさまよう。あろう事かこちらに向かって歩いてくる。ま、まさか! 

 優雅に手を差し出された私は、ポッコリお腹でレイモンド様と向き合うことになってしまった。後から考えたら公爵家の誕生会を兼ねたパーティーで、主役を誘うのはただの礼儀。正式な舞踏会でもないから断れたのかも。でもその時の私は焦っていて、咄嗟に頭が回らなかった。


 といってもダンスが苦手なわけではもちろんない。リオネル様とも遊びで踊ったことがあるし、レオンともマナーの時間に練習していたからダンスはわりと得意な方。

お姉様方も同い年のご令嬢方も、年下のローザちゃんも相手が見つかったようだ。後から感想聞いてみようっと! 初めはテンポの遅いワルツ。胃にやさしく、激しい曲でなくて助かった。


「何考えてるの?」


 身長差があるにも関わらず、ちびっ子の私を滑るようにリードして下さるレイモンド様。

 

「いえ、何も。強いていえば夕食のパイのことを」


「ぶはっっ」


 だってキノコとサーモンのパイにイチジクっぽい酸味のあるソースがかかって、絶品だったんですよ? あれ。


「私と踊っている時に食べ物のことを考えるのは君だけかもね? もう少し大人になったら、私のこと以外何も考えられないようにしてあげるよ」


 耳元で色気たっぷりに囁やかれたけど。

 子どもには刺激が強すぎるから、それ、やめようか。




 食後の運動ダンスで少しはお腹がヘコんだかしら?

 この後はいよいよお楽しみのパジャマパーティー! 私はわくわくしていた。

 一番広い客間にベッドを何台か運んであるし、お茶のセットとお菓子も用意してある。どうせ朝まで起きているだろうし、今日だけはカロリー気にしない! パジャマやナイトドレスは各自で持参しているから、準備万端。早くみんな来ないかな?


 一番最初にいらしたのは、同い年の清楚系美少女アイリス様。サラサラストレートのシルバーブロンドのロングヘアーで、紫の瞳が憂いを帯びていている。


「あら、わたくし早く来すぎてしまったかしら?」


「いえいえ、一人で寂しかったので大歓迎ですわ!」


 前世でイジめられていた中学生の頃。

「次の移動教室変更になった」と聞いたから、その教室でたった一人みんなをずーっと待っていた。もちろんそれは大ウソで、途中で気づいていたものの私はその子を信じたかった。

「彼氏を取られた仕返しだ」と後から言われたけれど、当然そんな覚えはない。その頃の記憶を思い出した私は「来てくれてよかった」と密かに胸を撫で下ろした。


「どうかなさいました?」

 アイリス様が心配そうにこちらを見つめている。

 そうだった。この世界での私は地味だから、イジメになんてあってない。それに、私の知る人達はみんなとても親切だから。これからも目立たないよう大人しくしていれば、大丈夫なハズ。


「いいえ、大したことはありません。お菓子が足りるかな~、と思って」


「食べることがお好きですものね、アレキサンドラ様は」


 言いながら同い年のジュリア様が入ってきた。

 ジュリア様は金髪グリグリ縦ロールのゴージャス美人。夕食で食べ過ぎてたのやっぱりバレてたんかーい。

 ダイアン様とローザ様姉妹はご一緒にいらした。焦げ茶色で緑の瞳のダイアン様は頼りになるお姉様で、お兄様と同い年の18歳。密かに姉御と呼ばせてもらっている。

 ローザ様はピンクブロンドの髪の可愛いきゅるるん系10歳。クマのぬいぐるみを片手に持っている姿も愛らしい。


「あら、皆様もういらしてたのね?」


「アレキサンドラちゃん、遅くなってゴメンなさい」


「いえいえ、イボンヌ様がまだですわ」


 満を持して登場したのは、イボンヌ様。

 深くれたカットのナイトドレスで、大きな胸の谷間が丸見えです。女子会でそのカッコってどうするつもりですか? 貴女。


「あら、やだ。わたくし大人だからこういう服しか持っていなくて~~。お気になさらないでね?」


 濃い金髪にポッテリした唇に大きな胸は言うまでもなくセクシー系。これで17歳って何食べたらそうなるのか、後から本気で教えて下さい!




 みんなそろってベッドの上でガールズトーク! 話題はもちろん先程のダンスパートナーのこと。

 一番人気はやはり王弟のレイモンド様で、二番目にうちの兄のヴォルフ。レオンと、あろうことかお父様の名前まで挙がったのにはビックリした。不倫はいけませんよ、不倫は!


 カッコイイ男の人やときめく仕草のこと、美味しいお店におしゃれな小物、ハマっている美容法など女の子同士の話題は尽きない。一年経った今もこうして仲良くしてくれて、楽しく話せる女友達がいるって幸せだ! 

 これからもずっと、こんな素敵な時間が続けば良いと思う。


 私が望んだ幸せは、案外身近にあった。

 転生は偶然でも、こうしてみんなと出会えた事は必然。

 一年の終わりに、我が身の幸せを思う。


 来年もどうか優しく温かいこの世界で、みんなが幸せでありますように――


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