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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第1章 地味顔に転生しました
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自慢のお兄様

  新しくできた弟に夢中ですっかり忘れていたけれど、私には六つ上の兄がいる。兄は母譲りの長い銀色の髪を一つに結び、父と同じアイスブルーの瞳をしている。超絶美形な上に頭も良く運動神経も抜群だったから、最年少で騎士団に入団し普段は寮にいる。自分ばっかり両親のいいとこどりをしてズルいと思う。何か一つでも妹に残しておいて欲しかった。

 そんな兄は、休暇の度に家に帰って来る。

 何でも城の寮にそのままいると、ファンのお姉様方がうるさいんだそうだ。ただでさえ騎士はモテる。そこに公爵家嫡男という肩書までついてきたのでは、女の人達が放っておくはずがない。父は「私の若い頃にそっくりだ」と苦笑し、母は「私に似たのね?」とご満悦。

 じゃあ私は? 私はどっちに似ているの?

 まあ、地味な容姿に満足しているから別にいいんだけど。


 兄のヴォルフは妹の私にとても優しい。

 会えばいつもにっこり微笑んで頭を撫でてくれる。

 その笑みがすごくレアだと評判になっている、とはこの前侍女のリリーさんが言っていた。

 普段の兄はあまり笑わないらしく、そのせいで『氷の貴公子』の異名を持つ。女性陣はその冷たい顔がたまらないらしい。城だけでなく我が家の中にも熱烈なファンがいるんだそうだ。でも冷たくされて嬉しいだなんて、みんな変なの。私だったら断然優しい方が良い。

 確かにヴォルフの顔は綺麗。

 お兄様で無かったら、私も見惚れてしまっていたかも。だけどずっと見慣れている顔だし、ただでさえうちの一家は私を除いて美形揃い。いちいち見惚れていたら、家族の会話もスムーズにできやしない。

 兄は自分を棚に上げて、私に「可愛いよ」と言ってくれる。ちょっと過保護でシスコン疑惑があるのが玉にキズ。でも、何でもできる兄は私の自慢だ!

 



 兄と義弟のレオンが初めて会った日。

 てっきりお互いに警戒するのかと思っていたら、兄は予め父から連絡を受けていたらしく、割とすんなり受け入れていた。レオンの方も兄に気後れして私の後ろに隠れるのかと思っていたら、堂々と前に進み出てガッチリと男同士の握手を交わしていた。


「我が家へようこそ。弟として歓迎するよ」


「こちらこそ、よろしくお願い致します」


 何だか少し羨ましかったので、二人の手の上に私もそっと手を乗せてみた。

 すると、二人揃ってバッとこちらを向かれてしまった。

 表情がそっくりで、まるで本物の兄弟みたい! 

 そう思った私は、おかしくってクスクス笑ってしまった。


「アリィ、今日も楽しそうだな」


 笑顔の兄が頭を撫でてきた。

 いつもなら嬉しいんだけど、弟のレオンがじーっと見ていたから姉としての威厳が! 子供っぽいと思われて呆れられてしまう……まあ、子供だけど。


「お兄様、淑女(レディ)を甘やかし過ぎですわよ?」


「淑女? ああ、ごめんごめん。小さな淑女はお気に召さなかったようだ」


 言いながら私を持ち上げるから、なお悪い。

 複雑な顔で見ていた弟。

 もしかしたらレオンも、兄様に抱っこしてもらいたかったのかな?




 家に帰ってくると、兄は時々宰相である父と難しい話をしている。

 我が国の情勢だとか各国の動向だとか、人の動きがどーだとか。おそらく仕事絡みの話なんだろうけれど、聞いていても全然わからない。

 誕生日が過ぎたヴォルフは現在、転生前の私と同じく17歳だったはず。なのに話している内容は一人前の大人並み。私が17の時はもっと可愛げがあったと思う。テスト前にしか勉強していなかったし。

 いつもなら構って欲しくてお父様との話が終わるのを待って兄の所に行く。だけど今の私は立派なお姉ちゃん! 子供の特権利用して、イケメンに甘えようとしてはいけません。

 

「なあ、アリィって……」


「なあに? 可愛い弟のレオン」


「それやめろって。今は俺と同い年だろ? っつーかアリィってお兄さん好きだよな」


「当たり前じゃない! 妹なら誰だってお兄さん大好きよね?」


 元々一つしか違わないから、先に誕生日が来て同い年になった弟のレオン。身長も既に同じくらい。そのせいか最近は『お姉ちゃん』に対する敬意が欠けているような気がする。


「そんなもんなのか?」


「そうでしょ。しかもヴォルフ兄様優しいし、騎士様だし」


「俺だって優しいぞ?」


「知ってるけど……あ、レオンったら、さては嫉妬しているなー」


「なっっ、急に何を」


「大丈夫! 兄様は天使のような弟の事もちゃんと好きだから」


「違っ! そっちじゃないし……。その天使って言うのもいい加減やめろって」


「ええー何でぇー。せっかく可愛いのに。あ、じゃあ『お姉ちゃん』ってちゃんと呼んでくれたら止めてもいいかも」


「い・や・だ。どうせまた可愛いだとか弟は私がいないとダメなんだ、とか適当な事言い出すんだろ?」


「うげ、バレてる」




 弟はやっぱり生意気だ。

 でもレオンはずっと猫を被っているし勉強も頑張っているからか、家族やうちにいるみんなからの評判はうなぎ上りだ。綺麗な顔で愛想もいいから、地味な私の存在がますます霞んでいるような気がする。

 だけど兄様は、昔からずっと変わらず私に優しく接してくれる。地味な妹でもちゃんと可愛がってくれているから、私は大好き! 今も私とレオンが言い合いをしていたからか、心配して来てくれた。


「どうした、ケンカをしているのか? せっかく姉弟になったんだ。仲良くしなきゃだめだぞ」


 そう言って私と義弟の頭を撫で撫で。

 やっぱり兄様は優しい。

 レオンと同じ扱いなのが気に入らないけれど、騎士団寮に帰って欲しくない。

 このまま家に居てくれたらいいのに。

 そう思ってギュッと腰に抱き着いてしまう。


「兄様……」


 横目で見ている弟。

 でも、ダメ。兄様は譲ってあげない!


「すまないがアリィを頼むな、レオン」


 って、えぇぇぇぇーー!?

 

「ちょっと待って、私の方がお姉ちゃんなのに!」

 

 カッコいい兄を見て必死の抵抗を試みる。


「そうだったかな? まあ、レオンの方がしっかりしているしお前と違って賢そうだ。悪いが後は任せた」


「わかりました。兄様もお仕事頑張って下さい」


 そんなぁ!

 レオンの方が賢そうってひどい!

 しかも弟も私の事は未だに「お姉ちゃん」って呼んでいないよね? なのにヴォルフの事はあっさり「兄様」ってズルくない? 何でぇぇぇぇ!?

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