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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第1章 地味顔に転生しました
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お姉ちゃんですよ?

 レオンが最近生意気だ。



 よく動きよく食べるようになって少しずつ元気になってきたからか、顔色も良くお肌もツヤツヤピカピカに。天使っぷりにも磨きがかかってきた気がする。

 金色の髪はツヤツヤでサラサラ。

 青い瞳は常に輝き、ほっぺは薔薇色だ。

 可愛さでも美しさでも圧倒的に私が負けている。

 もう少しで身長も抜かされそうだし。

 地味だけどお姉ちゃんだし女の子なので、せめて何か一つぐらいは褒めてもらいたい。その事を侍女さん達に相談したら、ちょっと考えた後で言ってくれた。


「お嬢様は可愛らしいです。仕草が」

「お嬢様、最高! 今日のドレス」

「お嬢様、素晴らしい食べっぷりでした」


 よく考えたら褒められていないぞ?

 くっそう。




 結局、我が家に来てから三か月程でレオンは正式にうちの子になった。その時非番で帰って来た兄様は「アリィより賢そうで安心した」と、失礼な事を言いながら男同士の固い握手をしていた。うちに来たばかりの頃とは違って、初対面の人物に対しても怖がらなくなったようなので安心した。

 子供好きの母、マリアンヌはもちろん小躍りして喜んだ。美人で優しい自慢の母だけれど、嬉しさがはじけたのかレオンをぎゅっとし過ぎて酸欠にしかけたので当分お触り禁止だ!

 私ももちろん天使のような可愛い弟ができて嬉しかった。兄は騎士団の寮に入っているからなかなか会えないし、父と母は私を甘やかしてばかりで子供扱いするし。ま、前世が高校生とはいえ今は本当に子どもなんだけど。でも前世はひとりっ子だったから、自分より下の可愛い存在がいるってそれだけで毎日が充実していてとても楽しい。


 後日お父様に聞いてみた。


「レオンをイジメていた家には行かれました? 何ておっしゃってました?」


 お父様は何も答えず、すんご~く黒く微笑んだ。

 ああ。きっと近々取り潰しか王都から追放だな、その家。

 本当はひどい事をしたからレオンに直接謝って欲しい! 

 でも、レオンの方が彼らの顔を見るのも嫌かもしれない。

 私も、「自分をいじめていた連中にまた会いたいか」と聞かれたら「絶対ヤダ!」と答えるから。だから今はまだ、そっとしておいた方がいいというお父様の判断なんだろう。少しずつ元気を取り戻していくレオンを見て、心の傷も時が癒すことができたらいいのに、と願わずにはいられない。




 本人がいいと言うから、私も「レオン」と呼ぶ事にした。『君』を付けないだけで本物の弟っぽくて、何だかテンションが上がる!


「『可愛い弟』って呼ぶから『お姉ちゃん』って呼んでもいいのよ?」


 そう提案したのに、即却下されてしまった。

 前より仲良くなれたと思っていたのにどうしてだろ?

 おかしーなー。


 イヤ、もちろん可愛いくって天使みたいなのは相変わらず。

 人前では猫をかぶるし誰にでも丁寧に接しているのに、私に対してだけは口を開けば遠慮がない。昨日も毎朝の習慣に文句を言われた。


「朝、いきなり寝込みを襲うのやめて~。俺も男だし、アリィも女の子なんだからちょっとは考えなよ」


 何を考えろと言うんだろ?

 可愛い弟を起こすのに遠慮してたらもったいない。天使のような寝顔を見るのも、薔薇色のほっぺを朝一でプニプニするのも、姉の特権だ!




 そんなわけで今日も突撃! ……は止めて、今朝はそーっと近付くことにする。枕もとに立っていつものように抱き着こうと手を伸ばした。すると、レオンの可愛い声。

 

「おばあちゃん……」


 って、ええええぇ!?

 まだお姉ちゃんとも呼ばれていないのに、一足飛びにそっち? もしや私っておばあちゃんみたいに地味?

 それともフツー過ぎる?

 レオンと1つしか違わないのに老けて見えるのなら、せめて服だけでも派手なドレスを着るようにすればいいんだろうか? 侍女のメリーさん監修のフリフリドレスなら、まだたくさんあったはず。


 でも何だ、可愛らしい寝言か。

 お姉ちゃん、ビックリしちゃったよ。

 顔を近づけて「フフフ」と微笑む。

 カーテンの隙間から差し込む朝の優しい光が、弟のレオンを照らしている。こうして近くで見てみると、髪に光が当たって輪っかができて、本当に天使みたい!

 私は幸せだ。

 こんなに可愛らしい弟は、探したってそうはいないだろう。寝顔を見ながらうっとりしていたら、突然ガバッと飛び起きたレオン。




「なっ、アリィ。俺言ったよな! 勝手に部屋に入るなって」


 ぷりぷり起こる姿も愛らしい。

 これで口が悪くなければ満点なんだけど。


「まったまた~~。私とレオンの仲じゃない!」


「だーかーらー、女の子は気軽にベッドに近付いちゃダメでしょ。襲うよ?」


 レオン、その顔でそのセリフはおかしいから!

 まだ小さいのに頑張って悪ぶっているのが余計に可愛い。

 ああ、もう。

 やっぱりすごく好き~~!!


 我慢が出来なくてベッドに腰かけ、レオンをギューッと抱き締める。

 いつものようにほっぺを合わせてスリスリ。

 逃げようったってそうはいかない!

 今日はまだ、いつものあの言葉を言っていないから。


「レオン、今日も可愛い。大好き~~!!」


「アリィ、頼むからもう勘弁してくれ……」


 あれ、何で涙目?

 よしよし、姉の抱擁が泣くほど嬉しいんだね?

 それともまさかの反抗期?

 仕方がないのでハグしたまま頭をポンポン。

 困った顔まで絵になるなんて、神様ったら罪作り。


「……俺、絶対バカにされている」


 ブツブツ呟くレオン。

 真面目な顔もやっぱり可愛い。


「ああもう、今朝も天使なんだから!」


「はあ? 何それ。意味わかんないんだけど」


「今日も私の弟は超絶に可愛いってこと!」


「全っ然嬉しくない! むしろ悪口だろ、それ」


「えぇぇぇぇ~~! 最上級の褒め言葉なのにぃ」


「どうでもいいけどそろそろ離れて欲しい……何の拷問だ?」


「拷問? 失礼ね! 愛のあるスキンシップと呼んで」


「わかったからどいてくれ。でないと、襲うよ?」


 思わずクスクス笑ってしまった。

 私の方が力が強いのに、そんな事を言うなんて変なの。

 そう思っていたら……


 回していた腕をベリッと引き剥がされてしまった。

 ニヤリと笑う弟のレオン。


「ね?」

 

 そんな得意げに言わなくても。

 いつの間に力が強くなったんだろ?

 でもまあ、襲うだなんてあり得ない。

 だって私は、お姉ちゃんですよ?


 

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