きっとそこに、俺の居場所はない
火曜の朝に更新するのが難しいため、いつもと時間が違いますが更新します
「なにかできたとすればお前の方だ。お前が最初から魔宮の森に入っていればこいつらは死なずにすんだ」
その言葉に、頭がまっしろになった。
「ドラから話を聞いたときは心が躍ったよ。優れた将は声で弱卒を奮い立たせ、時に強者を脅えさせる。その声を武器にする?望んだ物だけを斬る声?グランディスタの人間、いや、神々の想像にもない埒外の武器だ。抜かずとも斬れ、触れずとも斬れる自在の剣は古今東西の勇者が持ちえなかった理想の剣だろう。神々が下賜する神器ならともかく凡百の名剣では束になってもお前の声に叶わない。そんな武器を持った男がどんな戦いをするのだろうかと心が震えた・・・・・・・・・ところが、違った。お前は戦士じゃない。お前の声は逃げるための道具でしかない」
「逃げちゃいけないのかよ」
「おまえのそれは、だめだな」
ヴェラーラが続ける。
「戦えるだけの力を持ちながらお前は戦いから逃げた。結果として弱い奴が死んだ。それだけの事だ」
「俺が魔宮の森に行けばよかったって?ダーナたちと魔神を倒しに?できるわけないだろ!?俺は弱いんだよ、なんで魔神退治なんてしなきゃいけないんだ!!!!」
「今は倒しに来てるじゃないか、弱いお前が」
「仕方なかったからだ!」
「戦えないなら死ね」
信じられない言葉を聞いた。愕然としてまじまじとヴェラーラを見る。
「強い弱いの問題じゃない。逃げるのは嫌なんだろう?そのくせ戦うのが嫌いで、戦えないなら死ぬしかないじゃないか」
「・・・おい」
「お前はここで死んだ連中の事をどうして気にするんだ?戦士じゃないお前には何の責任も無い。どれだけの人間が死のうが気にしなくて良いはずだ」
「お前・・・それが神様の言う事かよ!?みんな懸命に生きてんだ!!死んだ奴を気にするな?目の前で死んでるのに!?できるわけないだろそんな事!!」
信じられないような眼でヴェラーラが俺を見る。
「日本って国は平和なんだな」
「・・・は?」
「お前の国だろう?戦わなくても生きていける。奪わなくても食べていける。望まなくても明日がある。きっとそこに、俺の居場所はない」
「・・・・・・何を言いたいのかわかんないけど、神様なら日本にもいる」
「俺は戦いの神だ。お前の国に戦士はいないだろう?俺を心から崇め、信仰するものがいるとは思えない。矢が尽き剣が折れた戦士が、俺に助けを求める声が聞こえるとは思えない。俺が愛する戦士がいるとは思えない。だが、日本以外の国には俺の居場所があるかもしれない。あるいは、過去の日本には」
何を言いたいのだろうか。
ヴェラーラが敵意なく俺を見つめる。
「お前の国でお前が育んだ倫理の中では、戦いも争いも忌避すべきものなんだろう。だがそうじゃない時代もあったはずだ。戦わなければ死ぬ時代が」
それは・・・多分、あったろう。明治維新や世界大戦を紐解くまでもなく、戦国時代と呼ばれた頃が確かにある。
信長、秀吉、家康、そう言った連中に攻められたら?いや、そもそも桶狭間の信長だって生き残る為に戦った例だろう。
十字軍のいたヨーロッパならもっと顕著だ。
死なない為に戦う、そんな時代は確かにあった。
「グランディスタは戦わなければ生きて行けない世界だ。奪わなければ生きて行けない者もいる。望まなければ明日はこない。そういった時代にいてもお前が戦わないと言うなら、お前は殺されても文句は言えない。誰かを殺されても、何かを奪われても、戦わなかったお前は拾った命を大切にして生きていくしかない。それが戦士ではないものの生き方だ」
「なんだよそれ。逃げろって事か?ただ逃げて、逃げ続けてどうするんだ」
ヴェラーラは笑った。
戦の神が冷たくほほ笑む。
「さあな。お前の方がわかるだろ?」
それは軽蔑の声。
「俺にはわからん。傷つくのが嫌だとか、傷つけるのが嫌だとかな・・・・・・ただまあ、お前たちの世界よりはマシなんじゃないか?マナの薄い地球では多次元からの介入なんてほとんどないだろう?魔神みたいな化け物と戦うより、同じ人間と殺し合う方が俺にはもっときつく思える」
「・・・・・・神様なら、いっそ凄い力で全部解決してくれよ。人間同士の争いなら人間が決着をつけなきゃいけないのかもしれないが、魔神なら神様が倒してくれても良いじゃないか・・・!!」
「無理だな。お前にわかりやすく言えば神々にもルールがある。ルールに従えば本来ダンブランは滅びていたはずなんだ。今回は運よく、たまたま稀人のお前がいたから声をかけてやれたんだぞ?」
「俺に加護をくれないお前がどうして声をかけてきたのか理解に苦しむよ」
「俺がお前を嫌いなのは、お前が俺を同じくらい嫌っているからだ。声をかけたのは・・・他の連中がうるさかったからな」
俺は頭を左右に振った。ヴェラーラの考えてる事が理解できない。
いや、理解はできているのかもしれないが、到底納得できなかった。
「・・・ダーナたちは魔宮にいるのか?まだ生きてるのか?」
「わからないな。マナ溜まりの近くは俺たちにも見えづらいんだ。だいたい死んだが急げば何人かは生きているかもしれない・・・それでも上位魔神が出てきたら厳しいだろう。魔神将が出てきたらお前がいても勝てない。『声』が効かないからな」
それは初めて聞いた事だった。俺の切り札が効かない??
「声が効かない・・・??」
「お前の『声』は魔術みたいなものだからな。下位魔神なら即死させることができても上位魔神には抵抗される可能性がある。神将はさらに上位に位置する神の眷属だ。十中八九、効果は無いと思った方が良い」
純粋に剣と魔法で戦わないといけない、という事か。
「魔神将は魔宮にいるのか?」
「まだいない。だが時間の問題だ・・・・・・だから、急げと言ったんだがな」
そう言いながらヴェラーラは首をめぐらせて闇の中を見据えた。
その視線の先、星明りに照らされぬ暗がりから劈くような絶叫が響き渡る。
耳を塞ぎたくなるようなおぞましい声の中、魔宮の森で、俺とフェイの戦いが始まろうとしていた。
すみません、先週からストックが完全に尽きた状態で、声優業の合間に書いて更新するのが限界に来てしまいました。
水曜は更新できそうにないので次話は木曜日か金曜日になります。
宜しくお願い致します。




