この世界の基礎であり要
女「さて、じゃ順番に話していこっか。」
「あ、よろしくお願いします。」
女「まずこの世界について。この世界では君の常識が通用しない、ということはまず知っておいて。」
「は、はぁ…。例えば…?」
女「そうね、例えば…。君、何か得意なものある?」
「あー…。前から走るのだけは早かったかな?」
女「そ。じゃあ今からちょっと走って見せて。」
「えぇ…。なんで突然…。」
女「いいからいいから。」
女に急かされるように走ってみた。
(あ、あれ!?思ったように走れない…!?)
いつも通り走ったつもりだったが、明らかに走りづらい。
息切れも早い。
これは一体…。
女「どうだった?」
「うわぁ!?来るの早いな!?」
女「まぁ魔法とか…そういうのがあるしね。そうじゃなくて、どうだった?」
「あ、あぁ…。いつもみたいに走れなかったな。今も軽く息が上がってる…。」
女「ま、それを感じてくれたなら良かったよー。説明がしやすい。」
「…で、これは一体何なんだ?何が起きてこうなってるんだ?」
女「それはね、この世界では『武器によってその人の能力が変わる』っていうのが常識なんだよー。」
…は?
今なんて言った?武器?
「武器って、あの剣とか刀とかのやつか?」
女「うんうん、そうそうー。武器を持つことで、『その武器が持つ能力や特性を自分のものにできる』の。」
「…それと身体能力何が関係あるんだよ。」
女「あはは!まぁそう思うよねー。でもね、武器で身体能力や頭の良さも変わる。これが、この世界の常識なの。」
なんだその常識。
ありえなさすぎるだろ。
女「そうねー…。ん、これいらないからあげるわ。」
「ナイフか?これ。」
女「そうよー。ここに来る途中で拾ったからあげる。」
「お、おう、ありがとう…。」
女「どういたしまして♪」
ってか拾い物かい。
と心の中でツッコんでおく。
女「ほらほら、持ってるだけじゃ意味ないから装備してごらん?」
「ど、どうやって…。」
女「それを『自分の武器』として認識すれば、勝手に装備されるはずだよー。」
「ふむふむ…うおぉ!?」
言われたとおりやってみたその時、持っていたナイフは光の粒になって消えた。
「え、消えちゃったけど…?」
女「いーの、それで。じゃ、改めて走ってごらん?」
「お、おうよ…。」
走ってみ…た!?
「は、はや!?」
女「おーおー、こっちでの人並みにやっとなったねー。」
「えっ、ちょ、これ陸上選手代表になれるぞ!?」
女「あははー。でもそんなんじゃまだまだかなー?」
「えぇ…。これでもまだまだなのか…。」
女「だから、これで人並みだってー。」
走り続ければ100mを9秒で走れそうな感じなのに…。
この世界にはウサイン・ボルト並のがいっぱいいるのか?
女「ま、これで武器が能力の基本となっていることがよくわかってくれたんじゃないかな。」
「…君の魔法とやらで小細工してるんじゃ?」
女「もー疑り深いなー!でもどうせそのうちに絶対わかることだしいっか。」
「…そんなもんか。」
妙にまだ納得はしてないが、彼女の言うとおり、そのうち嫌でも思い知らされることなんだろうな…うん。