好き、ただそれだけ
好き、今確かにそう言われた。もちろん、その好きは友情ではない別のものだと私の脳は理解した。
「ありがとう」
ひどいと自分を責めながらも、思いっきり引きつった笑顔をしてそのノーという返事を誤魔化しながら送った。
気付いていた、気付いていた。君の気持ちには。なのに、気づかない振りをしていたんだ。もう、それは許されないのだね。
かけるくんの、えっと少し戸惑ったような傷付いたような顔から目を伏して窓を覗く。
「あ、もう夕方だ。 見てよ、綺麗」
向こうの空は、ほんのりピンク色だ。
かける君も、ただ好きという気持ちを素直にぶつけてきただけに思えた。だからこそ、私は誤魔化すことができる。
ずるい、ずるいよ。
わかってる、わかってるよ。だけど、私はかける君のことをそういう目で見たことが無い。
正直言って、私には付き合っている人がいる。もう、低すぎる。付き合っている人がいるのに、男と二人きりであっているのだ。
別に、心が浮いた訳では無い。だけれど、これから先もそうだとは言いきれない。
カンカンカンカン…。電車が、かけ走った。
私の頭は、罪の意識に苛まれた。
思い出した、この間のことを。二人きりで、電車に乗って出かけた。あれは、デートだったのか?。
かける君のことは、今の今まで相棒でしかなかった。付き合う?そんなの、考えられない。あり得ない。