夕焼けに照らされた君と野次馬
これは私の実話と空想を混ぜたフィクションです。
カンカンカン…。
振り下ろされる遮断機、赤く左右に点滅するランプ。電車が横切る時の風に靡いて、本屋の袋が揺れた。寒い寒いと手に息を吹きかけると、白い息がでて冬なんだと実感する。
ようやく遮断機が上がり、渡ると一人の男の子の姿が見えた。私と同い年みたいだけど、その顔はまだどこか幼さが抜けてなくて、思わず見つめてしまった。踏切を渡った後も、その子はずっとそこにいて楽しそうに次来る電車を待っている。また、遮断機の音がうるさく鳴った。
それと同じ時だった、その子の様子が変わったのは。急にその子の手足がガタガタと震え出して、私が走ろうと思った時には、その子は頭から地面へと体を強く打ち付けていた。
周りがやがやと騒がしくなった。
慌てて救急車を呼ぶサラリーマン、興味津々に近くまで見に来るおばさん達。
その中で私は、ただ目を見開いてその場に立ち尽くすことしかできなかった。醜い野次馬が、続々と群れを成す。その中に居た私は、その人たちと同じだったのだろうか。夕日が男の子と、醜い野次馬たちを照らした。
家に帰って、お風呂から出てもあの子の顔が頭に浮かぶ。テレビでバラエティ番組が流れても、隣にいる妹の笑い声さえ聞こえないようだった。
「どうなったんだろ、あの後」
ぼそぼそと呟いた声ならぬ声は、幸いにも妹に聞こえることなくテレビの住人の声に掻き消された。
結局何かしたと言うこともなく、いつも通り歯磨きを済ませ寝室のベットに寝っ転がる。目を閉じると、暗い闇にあの踏切での事故が映像となって何度も何度も再生された。