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21 僕

 いよいよ本格的に寒くなり始める頃、珍しく父にリビングに来るよう命じられた。僕は一応スウェット姿から外へ行く用の服装へ変えた。また嫌な予感がしたから、他のズボンに入れっぱなしになっていた起爆装置のスイッチも引っぱり出して左ポケットに入れた。

 部屋を出て廊下をまっすぐ進む。僕の部屋は二回の一番奥にある。階段に向かう途中で弟の部屋の前を通った。物音は何もしない。まだ学校かもしれないと始めは思ったけれど、すぐに違うことが分かった。廊下にある窓に目を遣ると今は夜だったから。頭が取り柄の弟はおそらく懸命に勉強をしているはずだ。周りの期待を背負って。

 階段をゆっくりと降りていく。耳をすましても、何も聞こえない。テレビの音が聞こえることが親が家にいる合図なのに、今は静寂と何か緊張感が張り詰めている。僕は左手をポケットに入れた。

 リビングに入るとテーブルには父と母が座っていた。それぞれの目の前には湯飲みが置かれていたが、明らかにくつろいでいるようには見えない。

 母に促されて僕はイスに座る。その様子を見終えると同時に父と母がまくし立てる。大学のことを。僕がもうしばらく行っていないこと、学校側から行く意志はあるのかという連絡が来たということ、原因は何なのかなど僕の返答をまたずにどんどん話が進んでいく。


 泣き叫ぶ声や怒号が不協和音を奏でる。それらは本当に混ざり合わなかった。狭いコンサートホールで二人の歌い手がそれぞれ好き勝手に歌っている。たった一人の聴衆のため、懇切丁寧に。でも歌詞の意味はまったく分からない。

 僕はもうすでにポケットのボタンを押してしまっていたから。

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