19 僕
最後に大学に行ってからもう一カ月が経っていた。始めから分かっていた。僕には到底無理だということが。もう休むことに後ろめたさも焦燥感も感じなくなってきた。もう僕には何もない。心にあるのは燃えつきた炭だけだった。
僕はゲームやネットとで日々の時間を潰していた。親はそんな僕の生活にまったく気づいていない。まず僕に興味がない。弟も同じだ。別に僕はもともと一人だから何も困ることはない。
ただ一つ気になることは、最近記憶が飛ぶことだ。本棚にしまっていたはずの本がベッドの上に置かれていて、パラパラめくるとしおりが中ほどに挟まっていた。僕は読み終わった本のしおりはページの一番最初に挟んでおくし、また読み返すことは滅多にないからそれを見て少し訝しげに思った。それに、あれはまだ学校に行っていた頃だったけれど、帰りの電車に乗って一眠りしたら、次に起きた時にはどこか見知らぬところにいたことがあった。辺りを見渡すとそこは本来降りるはずの駅から二つ前の古びた駅の外にあるベンチだった。僕に何が起こったのか未だに分かっていない。
奇妙な出来事だけど、でもそれが以外と有り難かった。毎日どうやって時間を潰そうか悩むほど退屈しきっているから。知らない間に時間が過ぎていくことは僕にとってプラスだった。別に意識がない間悪いことをしている訳でもないみたいだ。ただ本が出ていたり、知らない所にいるだけ。
『今』という瞬間が早く過ぎることだけが僕の願望だ。