13 女性
青い、どこまでも吸い込まれてしまいそうな濃く深みのあるそれがわたしの目の前に広がっている。さっきまでは真っ暗な地獄の底にいたはずなのに。どうやら抜け出せたみたいだった。それにしても頭が重い。軽い頭痛もする。ズキズキと頭の中で響く。
少し頭が軽くなったところで、ようやく目の前に広がっているのがわたし達の上にいつもある、あの果てしなく広がる空であることに気付いた。何かとてつもなく眩しい物体があったからわかったことだけれど。今はあのかわいらしい雲の親子はいなかった。わたしの視界に広がる空はどちらかというと海という表現の方がぴったりだった。
わたしはまた仰向けに倒れていた。でも今度は幾分硬いものの上に身体を預けていた。組んでいた手を下ろして、その正体を確かめる。左手でふさふさしたものを感じ取る。それを指でつまみ、少し引っ張ってみたがビクともしない。力を強めて再度挑戦してみる。すると今度はわたしの力の方がまさって何かを引っ張り上げた。それを見ると緑色の短冊状の葉が指の間に絡みついていた。どうやら葉っぱのベッドの上でわたしは眠っていたみたいだ。
のしかかられている葉っぱからすればいい迷惑かもしれないけど、そこはとても気持ちが良かった。さっきまでの闇の中がまるで嘘のように。いや、もしかすると本当に嘘だったのかもしれない。わたしは夢を見ていた、ただそれだけなのかも。
たまにそよぐ風はわたしに清々しさを与えてくれた。またわたしをくすぐって、まるで笑わせようとしているようだった。自然とわたしの頬が緩んでしまう。ただ少しの不満と言ったら、日差しが強いこと。肌がしだいにひりひりしてきた。
わたしは引きちぎってしまった葉をそっと仲間達のいる場所へ返した。せっかく頑張って伸びていたのに、それを止めてしまったことにひどく罪悪感を感じた。今わたしの下敷きになっている葉たちにも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。でもわたしは身体をどけることはしなかった。できなかった。太陽がわたしをいじめても。それほどまでに目の前の青い海は美しかった。