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ニューワールド  作者: 池宮樹
ある男の回想 前世から幼年期まで
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第四話 しょせん世の中、金

うちの主人公、自重する気0です。どうしようもありません。

む~まだ眠いよ~、ん~このおっぱいは………母上のだ!母上は俺のもの~♪


ん? 何か? 添い寝はジャスティスだろ? ブラザー。


だって俺まだ7歳だもん!


初ミッションに成功したジオだ。今日の俺は昨日までとは一味違うぜ!



そんなこんなで『オツカイ』の翌日である今日、俺はさっそく『俺の野望の為のステップ2』の為にワトリアの道具屋のブエロのおっさんのところを訪ねた。

こういうことは勢いが大事だ。


ブエロのおっさんもとい『道具屋ブエロ』は普通の《New World》ヒューマンプレイヤーにとって最初に必ずお世話になるといっていいNPCである。


《New World》の世界では、《クエスト》というNPCから頼まれた依頼を達成して報酬としてお金かアイテムをもらうシステムが存在する。


『道具屋ブエロ』から受けるこのクエストは、通称『おつかいクエスト』というもので、ワトリアだけではなく各種族ごとにスタートポイント最寄の街や村に設定されており、スタートポイントの責任者から教えられてプレイヤーが初めてクエストを受け、その過程でアバターの操作方法や街にどんな施設があるかなどを学ぶためのクエストであり、クエスト用のチュートリアルといえる。


ちなみに報酬は『初心者用ポーション』10個。

同じ効果のポーションは、買えば一個50ゴールドするので初心者にとっては非常にうれしい。

まさに必須のクエストといえる。

(ちなみにこれの転売は不可能だ。《New World》の運営はそれほど甘くない)



歩きなれたワトリアの街並をとことこと歩き道具屋『風の始まり亭』に到着した。



店のドアは開いている。


俺は精一杯大きな声で中にいるだろう人物に声をかけた。



「こんにちわ~ブエロのおじさんいますか~」



俺の声にカウンターに座った大柄なごついヒゲ親父がこちらを向いた。

声の主が俺だと気づいたようだ。


おっさんのだみ声が店に響く。


「おう、ジオの坊主。どうしたおつかいか?」


俺はこのおっさんとはわりと長い付き合いだ.

勿論こっちの世界に来てから。


なぜならうちの父上は錬金術師だから作ったポーションをこのおっさんに卸してっていう商売上の関係があり、この店と俺の家とは生まれる前からの付き合いがあるのだ。

当然俺のことも良く知っている。


もっというとさらに昔から父上とは知り合いらしい。

ゲームでは語られない裏設定が多すぎるぜ、こっちに来てから。


「ちょっとお願いがあるんだ~、お店の奥でお話できないかな~」と必殺の上目遣いでおっさんを店の奥に誘う。


「お、おぅ。おい!お前わりいけど店に出てくれ!ジオ坊が俺に男同士の話があるんだとよ!」


おっさんがそういっておばさんを呼んだ。助かった。

子供のいないおばさんは俺のことをかわいがってくれていて一度捕まると長いのだ。

これから大事な話って時に気合が抜けるのはいただけない。


よし第一関門突破だ。


「ジオ坊こっちだ。」


店の奥に入れてもらったのはそういえば初めてだ。

いつもは俺の家か店内で話すからな。


小さな部屋に案内されて中に入るとそこはポーションの調合室だった。

このおっさん調合士だったのか? イヤもしかして元メイジなのか? あんなにごついのに? う~ん人は見かけによらんなぁ。

さらに明かされる裏設定? に驚きながら俺はおっさんから勧められた椅子に座ってから話を切り出した。



―――この場所(調合室)は俺にとっても死ぬほど都合がイイしな。




ここでぶっちゃけると俺の『俺の野望の為のステップ』とは要するにゲームスタート、つまり神聖帝国暦550年の俺の15歳の旅立ちの時までに可能な限り強くなることやお金を貯めておくことなど、できうる限りの準備を整えてしまっておくことだ。



う~~~~~ん、チートにも程があるぜ。元の世界の仲間のみんなゴメンナサイ。



そして強くなることに関しては今でもレベルが上げられることを確認したからこの件に関してはクリア。

あとは暇を見つけては弱めのモンスターを倒してレベルアップしていけばいい。

ホントまじでチートだわ、ウケケ。


そして金に関しては、このおっさんとの今回の話し合いの結果が大きく関わってくる。


失敗は許されねぇ………。


俺は表情に何とか緊張を見せないようにしながらおっさんに切り出した。



「おじさん、このポーション見てくれる?」



そう言って俺はおっさんにかばんの中に入っていたポーションのビンを渡した。



「これは………親父さんのポーションか?これがどうした?」

ポーションの出来を確かめつつ、そういうおっさん。



―――――かかった。



心の中で今年でトータル31になる俺が邪悪にほくそ笑みながら、俺は外見上7歳のかわいい金髪幼児の笑顔でおっさんに事実を告げる。


「えへへ~いい出来でしょ~。それね~僕が作ったんだよ!」


「何? 嘘つくんじゃねぇぞ、ジオ坊。お前がいくら天才少年っていわれてるからって………」


そういって驚きながらもさすがにありえないと否定するおっさん。

そらそうだわ、一番簡単なポーションとはいえまさに教科書そのものというべき最高級の出来だしな、我ながら。

こんなもんがホントに普通の7歳児に作れたらそいつは絶対に異常だ、そう!俺みたいにな!



さて勝負はここから!攻撃開始だ!


怒ったようなすねたような顔してまんまるほっぺをぷ~~と膨らませ、


「ふ~~ん、そんなこというなら今から作るから見ててよ!」と宣言してやる。


そういって俺はカバンから材料を取り出す。

もちろんこの材料はうちの庭にある薬草園のものを使った。

まぁ練習用になら少し持って行ってもいいぞと父上の言質はちゃんととってあるので合法だがな!


そういって俺はおっさんの前でポーションを手際よく調合し始める。

とはいってもこのポーション、レシピは簡単で材料も高いものは必要ない。

(何度も言うようだが、だからと言って普通の7歳児に作れるもんじゃないけどな。念の為)


そもそもプレイヤーがこれを作ることはほとんど無いといっていいだろう。

なぜなら効果は十分なのだが、これを作る為の材料集めに時間を使うくらいならばその時間を使ってモンスターを狩り、経験値とお金を貯めつつ、店に売っているポーションを買うほうがどう考えても合理的だからだ。


実際、俺も昔はそうだった。

レシピは持っていたが2、3回ためしに作っただけで、その後作ったことは無かった。

まぁアルケミスト職のプレイヤーにとっては、ポーションのレシピはコレクターズアイテムとして欠かせないので、レシピだけは俺の周りはみんなもってたけどな。

(もちろん俺は全種類コンプリートでした)


そのコレクター根性がこの世界では超プラスに働いたのだ!

つまり俺が前の世界で覚えていたポーションのレシピや装備を作るのに必要な基本素材のレシピなどが、全て頭の中にスキルとして存在していた。

そしてこのポーションを作ろうとしたとき、魔法を初めて使った時と同じように手馴れたことを思い出すようにそれが出来たのだ!


………まぁ初めから完璧なものを作ると父上がどんなに親バカでもさすがに怪しまれる(全然大丈夫なような気もするがな!)と思ったので何度かわざと失敗したがな!


まぁちなみにさらに上位のポーション、つまり上位グレードのポーションは今は作れない。

試してみたが魔法の時やこのポーションのときのような感覚は無かった。

まだレベルが足りないからだろう。


昔よく作った(そして売った、そしてぼろ儲けした)他のポーションのレシピは空で覚えてるが、さすがに今は材料費が無いし、もし失敗したら材料費がパァ。

さらにそんな上位プレイヤー用のポーション今(ゲーム開始前って意味だ)売れるかどうかわからんし、リスクが大きすぎるので保留だ。



―――結論、市場調査が出来るようになるまでは薄利多売で儲ける。



とそんなこんなを考えているうちにポーションが出来上がった。

我ながら完璧な出来のものが一度に5個。


振り向いてみるとブエロのおっさんが目をまん丸にして驚いてやがる、ウケケ!ざまぁみろ!


そんなおっさんに向かって俺は自信満々の得意顔で言ってやる。


「どう?おじさんちゃんと出来たでしょ!」笑顔は忘れない、笑顔は大事。


就活の教訓だ。


「あぁ………悪かったなジオ坊、疑ったりして………」


夢でも見たかのような顔をしながらもおっさんが俺に謝ってきた。

そこに畳み掛ける俺!


「それでね、ポーション作りの練習にもっといっぱい作りたいんだけどこんなにポーションがあっても僕使わないんだ~♪だ、か、ら、おじさんお願い!これを一本あたり30Gで買って欲しいんだ!」



そうこれが俺の『俺の野望の為のステップ2』なのだ!



このポーションは冒険者や衛兵が存在するだけ売れる。

それは既に半年間のリサーチで確認済みだ。

(それ以外にもおっさんが父上にもっと納品数を増やしてくれると助かるんですがって言ってたのを聞いたこともあったしな!)

そもそもこのポーション、普通の初心者プレイヤーなら一回の冒険に出るのに10個は持って行くのが常識である。


ぶっちゃけた話、需要と供給のバランスが取れていないらしい。

(勿論ゲーム内では品切れなど起こさないのだが、いわゆるこれも裏設定なのだろう)


おっさんも商人ならこんないい話を断るはずが無い。


(販売価格50G-俺へ支払う金30G-ビン代負担10G=おっさんの利益10G)


濡れ手に粟で一本10Gの利益が出るのだ!

しかもあればあるだけ売れる!

しかも出来は最高品質だ!

(実はこっちに来て知ったんだけどポーションにも出来不出来があるそうなのだ。その中でも父上や俺が作るものは最高級品だといっていいのですよ!)



ちなみにうちのようなかなり裕福な家のメイドさんの一月のお給料が大体1000Gらしい。

(この事実からおおよそ1G=100円程度の感覚が正しいらしいことが分かった。

さらにいうとGは金貨であり、普通の生活では基本C(銅貨)を、もしくはS(銀貨)使う為、金貨を使うことは実はあまり無いらしい)

さらに父上が同じものを35Gで納品しているのもちゃんとリサーチ済みだ!



さぁさぁどうするおっさん!この申し出をうけてくれるかにゃああああああァ!!



妄想してた俺が現実に帰ってくるとおっさんは、ふ~と息を吹いて俺に話しかけてきた。



「ジオ坊、俺が買わなきゃどうするつもりだ?そもそもなんでそんなに金が欲しい?」



さぁきた正念場だ。

利益誘導や搦め手で押すのはここまで。

俺は慎重に答える。



「ん~おじさんが買ってくれないなら父上に渡しておこづかいって形でおじさんにひきとってもらうかなぁ………。

それでね、お金が欲しいのは~僕ね!将来冒険者になって父上みたいな立派な錬金術師になるんだ!それでその為に貯金するの!」


うん、一切嘘は言っていない。

おっさんは俺の子供らしくない発言と子供らしい夢にまた混乱しながらも、俺の目をじっと見つめて何かを探るように見ていたが、やがて諦めたようにため息を大きくついてから頷いてくれた。



よっしっ!商談成立だ!



結局とりあえず値段はそのままで月間10本づつ納品してくれって話で話はまとまった。

だが一つ残念なのが、お金はうちの執事のじぃに渡して管理してもらうことになってしまった。

残念だが子供には大金だし仕方ない。



ちゃんといくら儲けたかは手帳につけて俺の手元とおっさんの手元に残しておこう。

じぃもおっさんも大好きだし信用しているが、こういう事はちゃんとやっとかないと揉め事の元になるからな。


勿論両親には内緒にしてねってちゃんとお願いしておいた。

おっさんには父上や母上に何かの記念の時に何かプレゼントするのに使うから秘密にしておきたいんだ~と言って約束させた。

おっさんがやたら熱いテンションで「おう!男同士の約束だな!」って言ってたのが暑苦しかったが、今回の交渉の結果は俺にとって大変満足の行くものだった。



こうして俺は『俺の野望の為のステップ2』をクリアした!







なお、この後俺のポーションはそのあまりの出来の良さに注文が殺到し、初めの約束はいつの間にか忘れられ、多い時に月200本ほど納品する程になったのだった。




まさに狙い通りである。笑いが止まりませんヨ?

お読みいただきありがとうございます。


ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘など幅広くお待ちしております。


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