第二話 テンプレ展開とゆるふわ幼女様
いらっしゃいませ。テンプレを召し上がれ、でございます。
6月29日 パクってない?との指摘がありましたので当該部分を変更いたしました。
元彼女>ストーカーさん です。
多少言い回しなどが変わっております。
ご容赦ください。
目を開けるとそこは真っ白い空間でいつの間にかあの体の冷え切っていく嫌な感じは無くなっていた。
「知らない天井だ………。」
とお決まり過ぎるフレーズを吐いてから、背中が地面?みたいなものに当たっている感覚に気づく。
俺は寝ているのだろうと思い、しばらくボーとしてから手足を動かす、動く。
動いた手で腹を触る、うん大丈夫。
大丈夫?無傷デスト?
おかしい、俺はあの変態女に包丁でどてっぱらをいかれたはずだ。
あの異常な寒さは大量の出血のせいだっただろうし、普通なら出血性ショックとかで確実に死んでるはず。
助かったのなら、どれだけ俺が目を覚ますまでに時間がたったにせよ、まったく痛み一つ無く大丈夫ってことは無いはずだ。
急激に今まで麻痺していた頭が回り始める、冷や汗を大量に生産しながら。
おかしい。そもそもここはどこだ。
真っ白でだだっ広いだけの空間、少なくても病院ではない。
そもそもテンプレネタを思わず口走っちまったけど、なにもない白い空間とかもしかしてっつうかもしかしなくても、いわゆるひとつのテンプレ展開ですか? マサカ!
急いで起き上がり周囲を確認と思った瞬間に俺は視界の隅にいる何かに気づいた、気づいてしまった。
わたあめみたいなゆるふわカールの金髪幼女の土下座に。
………俺ハドウスリャイインデスカ?イッタイ?
ーーーーーーー結論からいうとテンプレ通りだった。まったく笑えねぇ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「つまりあなたは神様で俺はあなたのミスであんな死に方をしたってことですか?」
自然と俺の声がきついものになる。
そりゃそうだ、こんな荒唐無稽な話聞かされて、さらにいくつかありえない奇跡目の前で見せられて、無理やり事実だと信じさせられて、しかも目の前の奴のせいで自分が死んだとか聞かされてキレないやつがいたらそいつはニホンカワウソとかツチノコ以上の希少生物だ、誰か俺の前につれて来い。
だから俺の怒りは正当だ、絶対に正当ではあるのであるが。
『はぃい………そのとぅりでしゅぅ………』
目の前で絶賛土下座中の舌足らずなしゃべり方でぐすぐす泣くゆるふわ金髪幼女(見た目3歳児)に今年24歳の俺が怒りのままにブチ切れるのはさすがに無理だった。
だってこんなかわいらしいモンいじめられませんよ………マヂで。
大きく空気を吸い込みそして吐く。
神様だろうがなんだろうが幼女は幼女である、いじめてはいけない、我慢我慢。
「とりあえず泣き止んでください。神様、そして神様らしく奇跡使ってとっとと俺を蘇らせてください。そうすれば全部無かったことになりますから、ね!」
今までの24年の人生の中で一番素敵でいい笑顔で幼女にお願いする俺。
この絵を知り合いに見られる危険性が無いことだけには心の奥底から感謝したい。
そしてうわ~~~んとまた泣き出す幼女様、勘弁してください。
言い方がきつかったのか?俺の笑顔がきつかったのか?う~~んどっちもつらい。
オレガナキタインデス、マヂデ。
そこで幼女様のかわいらしいお口から絶望的な言葉が俺に告げられた。
コレだ。
『申し訳ありまちぇん、あなたはもう元の世界との縁が切れてしまっていてもどれないんですぅ。ぐしゅぐしゅ、わたちのしぇいで………ごめんなちゃいぁああい!!』
ナンデスト?生キ返レナイ?俺ノ人生オシマイデスカ?
え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~と。
「何だとコラあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
はい、キレちゃいました。
◇◆◇◆◇◆◇◆
………その後一通り俺がブチ切れ、幼女様が泣き喚き、お互いがいろんな意味で疲れ果てた後で幼女様の話を聞くとこういうことだった。
幼女様は俺達の世界の神様の娘みたいなもんで、最近ようやく仕事を少しづつ任せてもらって頑張っていたのだが、なかなか最初から全部うまくいかないのは人間も神様も同じなようで、あの変態ヤンデレ女は就職活動がまったく上手くいかなかったらしく(あんなことする素養があるなら当然だと思う)、それが回りまわって俺が自分に優しくしてくれなかったせい、ってことで俺のお腹に包丁をドン!ってことらしい………。
そして本来その行為は普通なら成功しないはずだったのだが、幼女様のミスで成功してしまったと。
何じゃそれ!意味分からんわ!1000%とばっちりじゃねえか!返せよ俺の就活での努力!!
神様も大変だな!あんな変態ヤンデレ女のフォローの失敗で人間に土下座とか!
逆にこっちが気ぃ使うわ!
ということはあの会社を受けた事が間違いだったのか………?
人事もすげぇ嫌な感じだったし………。
忘れよう、不毛だ。
んでその先はまさにテンプレどおりの言葉を舌足らずなまさに鈴が鳴るようなかわいらしい声で説明してくれた。こんな風に。
『あなたはまちがって死んだ人なので別の世界に転生してほしいんでしゅ。』
『そこはいわゆる人の作った『物語の世界』なら基本どこでもかまいまちぇえん。』
『今回の件のお詫びにわたちにできうるだけのことをさしぇていたたきまちゅ!』
まぁ俺は断じてロリでもペドでもないんだがこの幼女様まじでかわいらしい。
神様っていうより天使様だ、おもわず許してしまいそうだ。
てか上目遣い+うるうるの碧い目+綿アメ金髪幼女様とかどんだけ反則だよおい。
話が脱線してしまった、つまり要約するとこうなった。
『どこか漫画や小説、ゲームの世界に転生してそこで新しい人生を送って欲しい。
さらにその世界に行くときには俺が望む力を幼女様の力の及ぶ限り、サービスしてもらえる』ってことだな。
あまりのテンプレに逆に冷静になってしまったよ、オイラ。
話を聞き終えて俺がまず幼女様もとい神様に頼んだことは、俺の家族へのフォロー。
親父もお袋も、兄貴はちっちゃいころ及び反抗期にはちょっとイロイロあったけど、俺は基本家族が好きだったしこれから親孝行もするつもりだった。
今回のことは俺にとっても天国から地獄だったけど、俺の家族にとっても間違いなくそうだった。
………みんななかなか決まらない俺の就職にやきもきしてたからな………。
だから俺がいなくなった悲しみを埋める分だけのいいことが起こるように神様にお願いした。
神様はまたえぐえぐ泣きながら過不足無く俺の家族が幸せになれるようにフォローしてくれると約束してくれた。
なんか俺の心の優しさに感動したらしい。
まぁ完全な不可抗力とはいえ親より先に死ぬ親不孝したわけだしこれくらいはな。
次に俺が向かう世界、つまり転生先に選んだのは言わずもがなMMORPG《New World》の世界だ。
厳密に言うと限りなく《New World》の世界に酷似した世界らしい。
俺は今まで仮想世界No.1の錬金術師だったが、今度は本物の錬金術師になるのだ!
フハハハハハハハハハハハハ!
………うん分かってはいる、厨二でゴメンよ。
あとお願いしたのはこんな感じだった。
一つ、キャラメイキング。
つまりどの職業に生まれるか、大体どんな顔でどんな姿になるか決めさせてくれってこと。
一つ、今現在俺が持ってる現状の知識の保護。
転生して成長していく過程で忘れたりしたら大変だからな。
一つ、いわゆるダブルジョブ化。
アルケミストとしても勿論改めて極めなおすが、それだけでは面白くないので同時にやったことがなくてやってみたかった戦士職の能力を同時に持てるようにして欲しいってこと。
魔法戦士ってやつだ………まぁ限りなくチートなんだけどこれくらいは許してくれ。
一つ、ゲームには本来存在しない新しいアイテムや概念を俺が考え出して作ることができるゲームへの介入権利。
だけどこれはちゃんと理にかなったものじゃないとダメってルールにしてもらった。
これは行き過ぎると万能になって面白くないし、逆にあんまりゲームと同じだとせっかくあの世界に行くのにもったいない気がしたから。
そして最後に、女へのトラウマを無くして欲しいってことだ!
切実だよ!コノヤロー!
だってあの変態ヤンデレ女のせいで、あっちの世界で彼女の一人もできん人生とかイヤ過ぎるじゃん!
オンナコワイデス。
あと細々したことをいくつか頼むと神様はちっちゃいかわいらしい手で必死にメモを取りながら『間違いなくちゃんとやりましゅ!』と言ってくれた。マヂで癒される。
本当はもっとありえないくらいイロイロ要求されるかと思って冷や冷やしていたらしい。
神様にしろとか、無敵の英雄にしろとかな。
だからなんて謙虚なひとなんだろ~~ってキラキラした目で見られたんだが、俺はいわゆるマゾプレイヤーに属するのであんまりバランスブレイクし過ぎるのがイヤだっただけなんだが。
………まぁ十分すぎるほどチートなんだけどな。
そこでゲーム開始時にはヒューマン男の魔法職に、髪は金髪で、切れ長の目をした2枚目キャラに自分を設定。(そこのチミ笑うな、ネトゲのアバターはみんなこんなもんだ)
それから俺は神様と握手して(ふにふにのかわいらしい手だった!)何も無かったはずの空間に突如現れた木製に見えるドアを開いて新しい人生への第一歩を歩みだした。
………まぁその後ある程度経ってから分かったことだが幼女様は神様らしく頑張ろう!俺のために色々サービスしよう!とイロイロやらかしてくれた。それはもう盛大に。
まぁ結果としては面白い人生になったからよかったんだけどな。
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