終章
さわ、さわ、
風が庭に舞う。
ふわり、ふわり、ふわり、
蝶の体が庭を舞い踊る。
その体に、傷跡は一つも無い。
揚羽蝶を指先に留め、微笑む姿は美しいとしか形容の仕方がなかった。
「蝶に傷が残らなくて本当に良かったな・・・」
博雅は杯を傾けながら言う。
「ええ、元気になって・・・本当に助かりました、博雅」
「お、俺か?」
晴明の言葉に、博雅はおかしな声を上げた。
「はい。私達が大文字山へ行っている間、蝶の世話をしっかりとしてくれたようで」
晴明は優しく微笑んだ。
博雅は照れたように一気に酒をあおった。
トノサが二本の尻尾を交互に揺らめかせながら、のんびりと欠伸をした。
そしてゆったりと眠りにつく。
蝶の指先から揚羽蝶が飛び立つ。
ひらり、ひらり、
揚羽蝶の羽の色が青い空に映える。
晴明は、その動きをゆっくりと追い、透き通るような青空へと視線を向けた。
「これから・・・京はどう動くのでしょうね・・・」
その問いに答える者は、誰もいなかったが、晴明は気に留めず酒を飲み干した。
羅生門の河原で火の爆ぜる音がする。
その前に座るのは、蘆屋道満。
「京の最期は・・・どうだろうな」
くく、と道満は喉で笑って呟く。
「まあ、その頃になったら・・・」
道満は空を見た。
白く淡い筋が様々の形を描くのを見て、道満はにやりと笑った。
ざぁ、と水を汲んでくると、道満は焚き火に一気にかけた。
じゅう、と情けない音を立て、火が消える。
「さて、酒をもらいに行くとでもするか」
道満は朱雀大路を歩き始めた。
それぞれが、京の行く先を、見つめて、そして。
笑った。
拙い文章でしたが、読んでくださった方々、本当にありがとうございます。まだまだ力不足の私ですが、これから精進していきたいと思います。
この物語を読んでくださった方々に感謝を込めて。
凪 葉音 拝