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平安異文禄  作者: 凪葉音
5/9

鵺―一夜

オォ、オォ、

「鵺じゃ!鵺じゃ!」

地の底から這い上がってくるような咆哮に、藤原邸で開かれていた宴は、一瞬にしてその空気を失った。

オォ、オォ、オォ、

「鵺に間違いなかろうぞ!」

「誰そ!誰そ陰陽師を呼べ!」

「早う!早う!」

もう宴の空気などそこには無い。

そこにあるのは、妖しに怯え叫ぶ声と、邸から逃げ出す者達の足音であった。

オォ、オォ、

オォ、オォ、

「うわあぁああ!」

「わあぁあああ!」

藤原邸に集まっていた何十人という公達が、それぞれの牛車で逃げ出した。

その中で一人、残った者がいた。

「み、源博雅よ・・・お主は逃げぬのか」

腰が抜け、立てなくなった道長に、博雅は静かに言った。

「明日、晴明にこのことを私めが伝えましょう。あの者なら鵺に怯えることもありませぬ」

「そうじゃ・・・そうじゃ、晴明がおったな、晴明が・・・」

「確かに伝えまするゆえ。私めは、これにて暇をさせて頂きとうございます」

「うむ、うむ。早う晴明に伝えよ」

「必ず」

博雅は、道長に礼をすると、愛刀「月影丸」を腰に挿し、藤原邸を後にした。

月影丸の柄にかけた彼の手は、心なしか震えている。

オォ、オォ、オォ、

鵺に京が恐れおののく夜となった。




所変わって、こちらは晴明邸。

オォ、オォ、

「おや、鵺が啼く夜、ですか」

『でもまぁ、いい気分とは言えないねぇ』

「鵺が啼く夜は、人が死にまする」

オォ、オォ、オォ、

どんなに鵺が啼こうと、こちらの三人は落ち着いていた。

いや、それが当たり前なのだ。

常に小鬼たちは邸を走り回っているし、猫又だっている。

故に、鵺が啼こうとも、あまり驚きはしないのだった。




この後、壮絶な日が来るとも知らず・・・。

まずは簡単な前振りだけです。鵺は、これまでの妖怪達とは違い、かなり長くなる予定でいます。鵺と陰陽師たちの戦い、どうぞお待ちください。


           凪 葉音 拝

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