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男がゆっくりと立ち上がった。同時に修一だった「モノ」が力無く横に倒れ込んだ。田口の蹴りで少々腫れが出ていたが、一瞬垣間見えた顔はほぼ無傷だった。どうやら先程の音は男が修一を殴打していたものだったようだったらしい。
その事が竜平と田口2人を身震いさせた。マウントされながら顔面を殴打して修一の命を一瞬で奪い去った……。手打ちで顔面を抉り取る拳は一体、本来の力はどれ程の物なのか…?2人は息を呑んだ。
男がゆっくりと近づいて来た。構えも取らず堂々と歩いてきた。
「煙草を、吸っているから、こうなる。」途切れ途切れのその言葉から狂気を感じられた。
男が床に零れた修一の脳髄を踏みしめると、中から白濁色の訳の解らぬヨーグルトが勢い良く滑り出た。
「あひゃ、あひゃひゃ、ゃひぁひひゃぁひぁゃゃひ。」すると、狂った田口が不気味に笑い始めた。そして、一頻り笑うと突然前のめりに屈み、胃液を吐き出した。
「おぅえぅえ、げぇるぉえぇげぼ」ビチャビチャと吐寫物が床を叩いた。先程買ったコンビニのサンドイッチの屑も共に出てきた。
次の瞬間、屈んだ田口の顔面に男の渾身の膝蹴りが入った。