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「!?」修一と田口がほぼ同時に振り向いた。
するとそこにはレインコートの男が立っていた。
かなりの大男だ。2メートルはあるだろう。その顔はフードの陰で見えず、拳が雨と松岡の返り血で濡れている。体を包む青のレインコートが雨の独特の匂いを放つ。
松岡を見ると、白目を向いて、仰向けに倒れている。トイレの汚れたタイルに頭蓋から血と脳髄を注いでいる。それがゆっくりとタイルとタイルの接合部を伝っていく。
「高校生の分際で煙草なんて吸ってるからこうなる。」突然、レインコートの男が口を開いた。よく響く重低音だった。
こいつが、今日学校で修一が話したレインコート…。雨の日に突然現れる、悪魔のような力を持った男…!
松岡は死んだ。レインコートによる一撃によって頭蓋が破壊された。即死だった。
この時トイレの個室から出た竜平はこの構図を目の当たりにして驚愕した。
「テメェ…!!ぶっ殺すぞ…!!」修一と田口はガンを飛ばして構えた。
しかし、対するレインコートの男はその憎悪の目に全く物おじした様子を見せず、掛かってこいと言わんばかりに挑発してきた。