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男の名は片山撤平。元プロボクシングヘビー級の選手だった。
その中では彼は弱い方だった。
いつもパンチは大振りで、細かく打ってくる選手には手も足も出なかった。
だが、一発当たれば試合の流れを一気にひっくり返す破壊力を彼は持っていた。
だから彼はスピードは捨て、パワーだけでの勝負に挑んでいた。
いつも。いつも。その全てが黒星で終わったとしても。
そして彼はある日、あまりにも勝ちたいが為に、あるモノに手を出してしまった。
ドーピングだ。
その後日、試合は始まった。
観客は余りの驚きに言葉も出なかった。
レフェリーも我を忘れ、その様を呆然と見ていた。
何と彼は相手を1ラウンド1分足らずでKOし、それもジャブだけで勝ってしまったのだ。
ドーピングによる肉体改造の結果、化け物染みたパワーを手にし、並以上のスピードも手に入れたのだった。
しかし、その試合の直後、彼のドーピング行為が摘発された。