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だが、右腕からは大粒の雨が皮膚を叩いてくる以外何の感触も伝わってこない。
いくら経ってもフックが来ない。
何故だーー?
その答えはほんの一瞬後明らかとなった。
目の前に何かが迫っているのに気づく。
何だ、あれは?
竜平は凝視したが、直後には距離が間近になり、その必要もなくなった。
今、目の前に迫り来るもの…濡れたビニールの丸太…の様に一瞬思ったが、それは単なる幻覚だった。
男の左膝だ。
男は左フックと見せかけて膝蹴りを繰り出していたのだ。
フェイントだ。
当然、竜平は想定外だ。
田口の顔面を破壊した膝蹴りが成す術もなく竜平の顔面に直撃した。