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だが、次の瞬間男がとった行動はーー
後退だった。
意表を突いた行動に竜平は一瞬戸惑いの表情を隠せなかった。
これまで攻め続けてきた奴が後退するだと?!
ーー右拳がシャカになったからだろうよ
自分でそう結論づけると、出来た間合いを詰めるため再び前へ踏み込んだ。
しかし次の瞬間、不意に竜平の顔面が男の出した左ジャブで弾かれた。
「つあっ…!」口の中で鉄の味が広がった。
と思った直後、また左ジャブが直撃する。
竜平はたまらずたたらを踏んだ。
それと同時に今度は男が踏み込み、間合いを詰めた。
すると男は左拳を強く握りしめ、半身になった。