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MURDER OF  作者: 和菓子
19/30

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 再び両者じわりじわりとにじり寄る。

 男はもう右拳は使えない。

 竜平にとってこれはチャンスだ。

 ポケットに手を触れてカッターナイフの存在を確かめる。

 いつでも抜ける。

 いつでも刺せる。

 懐に入ることができたらの話だが。

 男は左一本でも十分に強すぎる。

 竜平の警戒は最初と何ら変わりはしない。

 油断が即、死に直結する…。


 間合いが詰まってきた。

 踏み込んで手を出せば当たる距離だ。

 竜平はここで大きく深呼吸した。

 酸素の枯渇した肺に空気を送り込む。


 今度は俺が主導権を握る番だ。


 息を吐いた直後、竜平はそう意気込んで、男の懐に踏み込んだ。

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