婚約破棄をされて邪神を召喚した令嬢の末路
「お前か!儀式で我を呼び出した者は!」
「ヒィ、邪神様、どうか願いを聞いて下さいませ!」
我は召喚された。魔方陣の上に立っている。令嬢に呼び出されたのだ。
我は邪神として呼び出されたらしい。
心底腹が立つ。
我は今世ではダークエルフ、しかし、前世は日の本の僧、日『キャン!キャン!』!
「こら、ジム、邪神様に吠えてはいけませんわ」
違うと言うのに・・・・鶏一羽で呼び出されたらしい。
しかし、邪神とは思い当たる節がある。
我が日の本で死んだ後、不肖の弟子が跋扈している。東京大戦果報告会、埼玉破邪顕正会、どちらも今世に来ている。とんでもない奴らだった。
令嬢は聞いてもいないのに身上を語り出した。
「父が再婚してから、義妹に全てを取られました。・・・婚約者まで、この家の総領娘だったのに使用人達は見向きもしませんわ。今は納屋に住んでいます」
「ほお、なら、どうして生きている」
「それは・・・私について下さる使用人が3名ほどいますわ」
知るか。そもそも神は人の幸不幸に関与しない。
結果にしか過ぎない。
「ああ、邪神様、父と義母、義妹、婚約者のスタイリーに復讐をしたいですわ」
「ここはどこだ?」
「はい、グリーン王国でございます」
何だ。ノース王国に簡単に帰れないじゃないか?
「もし、願いを聞いて下さるなら、お礼を差し上げますわ」
「うむ!」
我は文字曼荼羅を書いて令嬢にあげた。
過去世、我は信徒にお礼をとして文字曼荼羅を書いたのだ。
我が教団は金が少ない。仏師を雇えなかった。他の教団が仏像を作る代わりに我の世界観を紙に書いたのだ。
「まあ、これは・・邪神様らしく不気味な魔方陣ですわ!」
令嬢は大喜びだ。
「良いか、この文字曼荼羅に手を合せて『南無妙法蓮華経』と唱えよ」
「はい、ナムミョウホウレンゲキョウですね・・」
令嬢は狂ったように南無妙法蓮華経と唱え始めた。
その間、我は屋敷で世話になった。
「邪神様、お嬢様にあまり変なことを吹き込まないで下さい」
「そうです・・お嬢様、顔が変わりました。怖いです」
令嬢についた若夫婦使用人だ。後は庭師の老人。
「・・・ああ、邪神様、お嬢様、ご飯を食べずに奇妙な詠唱を繰り返ししています。どうにかして下さい」
「知るか!」
我は令嬢の代わりに犬の散歩をした。
「ワン!ワン!ワン!」(邪神め!心優しいご主人を返せ!)
「こら、ジムとやら、小便を我にかけるな!」
とこんな毎日を送っていた。
「邪神だ。ただのダークエルフではないか?」
「まあ、しょぼいわね」
「フン!邪神など僕が叩き斬ってくれる」
「キャア、スタイリー様、頼りになるわ」
あの令嬢の家族か?
我はフライドチキンなる物を頬張りながら観察をした。
しかし、肉美味いな。やべ、破戒坊主か?いや、今生はダークエルフだ。いや、それはどうでも良い。
何故、家族でいがみ合うのか?大自然の摂理を探求しないのか?
一月もたつと。令嬢の祖父なる者が介入した。
「馬鹿者!総領娘はエミールだ!ダンケ、お前は婿養子だろう!」
「「「ヒィ」」」
中々良い裁定をして、エミールは母屋に帰り。
家族達は納屋に押し込まれた。
「「「ヒィ」」」
「そんな・・」
「あの祈りのせい?」
馬鹿な奴らだ。こうなることは分かっていなかったのか?
一方、エミールは・・・
「これも邪神様のおかげ、ナムミョウホウレンゲキョウですわ・・・ウフ、私を虐げた使用人達は全員解雇ですわ!」
薄気味悪くなっていた。あの東京大戦果報告会の奴らの笑みだ。
だから我は一喝した。
「馬鹿者!我のおかげではないわ!祖父殿のおかげだ!それに見ろ。たった三人で令嬢用の食事や湯浴み、世話などできようはずもない!納屋も綺麗だったぞ!」
「「「お嬢様!」」」
あの三人以外にも大勢の使用人達が都合をつけて物資や予算を回していたのだ。
令嬢の体面を保つために必死の努力をしていた。
「はっ!邪神様・・・そう言えば・・・」
「ワン!ワン!」(僕もいるよ)
「うむ。法華経も宮仕えだ。彼らは限られた身分で必死に努力をしたのだ!!」
「グスン、グスン、お爺さま、邪神様ぁ!皆様ぁ!ジム!有難うございます」
「エミール」
「「「「お嬢様!」」」」
「ワン!」(ご主人!)
どうやら目が覚めたようだ。
我はこの一喝で客人待遇を受けるようになったが、問題があった。
納屋に残していた文字曼荼羅を家族が拝み始めたのだ。
「「「南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経」」」
そしておかしなことを言い出した。
「ああ、今日のスープに肉が入っていた。これも信心のおかげだ」
料理人のおかげだろう。
「これで我らも復権するぞ!」
しねーよ。法理で見れば、お前らただの扶養家族だろう。働けよ。でないと未来はないぞ。
「魔を撲滅するわ!」
魔?出てきたらハエたたきでやっつけなさい。
「あの、邪神様、家族はどうすれば良いですか?」
「うむ。何か話しかけられても『そうか、そうか』で答えなさい」
「はい、邪神様」
その後、ノース王国の女神教会から迎えが来た。手紙を出しておいたのだ。
邪教聖女のサリーが先頭だ。
「ダーエル君がお世話になった感じ」
「まあ、邪神様の眷属ですか?」
「うむ・・帰るぞ。ところで・・・」
「はい!」
「元気でな」
「はい、邪神様もお元気で!」
さすがに約束のお礼は?とは言えなかった。
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