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08 スタンド・バイ・リズ


「申し遅れたが、私はグレース王女様直属近衛隊隊長、ハリソンだ」


「ハリソン・フォード!?」


「いや、フォードではなくハリソン・クライスラーだが……」


「メーカー違いかぁ」


「……?どういう意味だ?」


「あ、スミマセン。大した意味はないんです。曰く、云い難き郷愁の念に駆られまして」


「……お前、それ何にでも使える便利な説明だと思ってるなら大間違いだからな?」


 近衛隊長とリズの頓珍漢な自己紹介タイムに、急にブラッドが割り込んできた。


「横から口を出してすんません、隊長。

 ただ……隊長はこいつを王宮に連れて行くつもりのようですけど、こいつの親や王女様には何て説明するつもりなんですか?

 あんまり預言者だとか能力者だとか騒いで、後でこいつが困るようなことにならないようにして欲しいんですけど」


「ブラピぃ…」


 思わぬ援護射撃に感動するリズを前に、ハリソンが咳払いをする。


「王女様の命がまだ狙われているかもしれないことや、リズの能力については、できれば王女様にもリズのご両親にも伏せておきたいと思っている。


 リズを王宮に連れて行く口実を見つけること自体は、そう難しいことじゃないんだ。


 実はグレース様ご自身が、命の恩人であるリズに会って、直接礼を言いたいと望んでおられてな。

 それに、帰国したら同世代の庶民と積極的に交流して、市井の暮らし向きや王家への要望を聞いてみたいとも常々仰っていたんだ。


 リズが怪しいものではないことを確かめてからでなくてはと王女様を押し留めていたのだが、『調査の結果、身元が保証された』と具申して、リズを王女様の客人として招き、王宮に逗留させることにしてはどうかと考えている。


 『警護対象である王女様を助けてもらった恩が我々にもあるから』という名目で、リズの身柄は近衛隊預かりという体裁にしてな」


 成る程、とリズは納得した。


 貴族の誰かや使用人に化けて王女の側に控えろなどと言われたら、まったく何の訓練も受けていないリズには無理だっただろう。

 でもこの方法なら、庶民のリズのままでグレース王女やハリソン隊長の側にいても不自然ではないし、事情を説明された両親は「王女様とお近づきになれる!」と逆に大喜びしそうだ。

 むしろ、あらかじめ太めの釘を刺しておかないと、即日スタ場に「グレース王女様御用達」のでっかい看板を掲げかねない。


 リズが両親の暴走をどう抑えようかと考え込んでいると、横のブラッドが思い詰めた声を出した。


「あの、俺も一緒に王宮に行ってもいいですか」


「ブラピ?」


「リズの本当の役目は、近衛隊と一緒に王女様を守ることなんですよね?

 それって場合によっちゃ暗殺犯と鉢合わせしたりするかもしれないってことじゃないですか。

 近衛隊の皆さんが王女様を守るなら、誰がリズを守るんです?

 リズを知ってて、助けてやれる誰かが側にいないと」


 真剣な顔で言い募るブラッドに、思わずリズは泣きそうになる。


「………ぴぃ」


「俺の袖で涙拭くな。あとノー『ブラ』で呼ぶのやめろ」


 やいやいしている二人をモーガンが手で制した。


「なあ、ブラッド」


「……勝手なこと言い出してスミマセン、モーガンさん。でも……」


「そうだぞ。俺の言いたかったこと全部言っちまいやがって」


「え?」


 モーガンがハリソンに向き直った。


「こいつの言う通りです。

 ここまで聞いて、リズだけ危険かもしれない王宮に行かせるなんて、俺たちにはできないですよ。

 近衛隊のお邪魔にならんよう、俺がしっかり目を光らせておきますから、俺たちにリズの護衛をさせてくれませんか。

 それに、気心の知れた庶民同士の方が、例の狙撃事件のときのようにリズの意図を汲んで動きやすいってこともあるでしょうし」


 ハリソンはしばらく考えていたが、やがてゆっくり頷いた。


「リズ、君は良い友人に恵まれているんだな。

 いいだろう。リズが狙撃犯を見つけ、そこの二人はそれを捕まえたということで、纏めて王女様の客人として扱われるよう手配しよう。

 王宮でもその外でも、君たちの真の任務を知るのは我々近衛隊だけだ。

 みんな信頼の厚い私の部下だし、口も固いからそこは安心してほしい」


 リズは心の底から安堵した。いくら腹を括ったと言っても、庶民の自分が単身王宮に乗り込むなんて不安しかなかったのだ。

 これは二人に足を向けて寝られないなぁと後ろのモーガンとブラッドに心の中で手を合わせる。


「で、報酬の話なのだが……」


 ハリソンの言葉にリズは首を振る。


「お役に立てるかどうかもわからないのに、今の段階でご褒美に何かくださいなんて話できません」


「そうはいかない。みんな正規の仕事があるところを休んで来てもらうわけだからな。

 何事もなかったとしても、王宮に来てもらう手間賃として、経費とは別に近衛隊員の俸給と同じ額を日割りにして支給しよう。

 スタ場と警備隊から君たちが抜けたことで発生する損料もこちらで負担する。

 そしてこの先、君たちが王女様の命を救うようなことがあれば、追加の謝礼について改めて話し合いをさせてもらえるかな?」


 にこりとするハリソンに、リズが弾んだ声を出す。


「色々ご配慮ありがとうございます!そうしていただけると助かります!

 あと、モーガンさんとブラピに、私から個人的な御礼として、『スタ場コーヒー&揚げ菓子無料券』半年分を渡したいんですけど、隊長さんのポケットマネーからお願いできますか?」


「あ、ああ、いいだろう……」


 リズの勢いにたじたじになったハリソンの口から、「意外とガッチリしてるな……」と呟きが漏れたが、リズはそれには聞こえなかったふりをしておいた。


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― 新着の感想 ―
ハリソン・クライスラー なんと素敵なネーミングでしょうか! メーカー違いwww なんで「揚げ菓子」と思ってたんですが、ドーナツw 毎回面白い小説供給を、ありがとうございます。 この後も楽しみです…
スタンドバイミー('ワ' そうかエリザベスはテイラーだな! アパ鍵モンローちゃうがなマクレーンでした ぴ!
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