第八話 「マカロンの魔女」
注意:この作品にはR15程度の「暴力表現」や「性的表現」があります。苦手な方はバックする事をオススメします。
終わりが近づく夜。
まだ上からはバタバタと足音や壊れる音が聞こえる。地下室なのにこんなに上から音がするのは、
かなり騒がしいのだろう...でも、その音の正体はすぐに気づいた。
双子…楽と樂が助けに来てくれた……
……と、ワタシは信じていた。
そうすると、慌てて喋る魔女と、
ヒペリに使える魔女の会話が微かに聞こえた。
「大変です!あの双子がっ!!」
「...双子ですか、やはりこちらへ来ますよね...
計画通りに進みましょう。」
「ですね……じゃ…………こうして…………あぁして…………」
「その場合…………が…………してくれると思うので………………その時に………………」
計画通り?一体なんの計画なのだろうか?
あと会話の内容がっ……しっかり聞こえないっ……!なんの話をしてるのか、気になって頑張って耳を傾けるが、大事な所がやっぱり聞こえない。
どうしたら……っと、思っていると、
またドーーーーーンッッッと、大きな音が聞こえる。
まるで「硬くも脆い、クッキーを割る」ように響く音。
この音の正体は双子なのか?
それとも大魔女、ヒペリなのか……?
そう考えている中、また大きく慌てている魔女の声だけは、ハッキリ聞こえた。
「ど、どどどっ……どうしますかっ!?」
「あの双子も捕まえます、
あの人形の……隣の牢屋にね。」
そんなっ…双子までっ!?そ、そんな事っ...!
ワタシは魔女たちに「そんな事っ、やめてっ!!」と届かない声で叫ぶ。
もちろん、魔女たちには、聞こえていない。
双子まで捕まったらどうなるか…っ!?
ワタシは双子の事が心配だった。
どうか……無事でいて……っ
「待ってっ!......んっ?」
扉が...開いてる?
「では、これから計画通りに行動しましょう、まずは来てくれた双子を歓迎しに……っん?」
「っ!!!人形が逃げました!!」
「な……っ!!??」
ワタシは魔女たちの感情の隙間を見ながら逃げた。
もしかして……この魔女たちも……?
いやっ、今は走り続けないと…っ!
扉は何故か開いていた、から、その瞬間、
ワタシはすぐに「逃げる」事を行動した。
…「逃げる」事など、ワタシには慣れてる。
むしろ扉が開いていたのは好都合だ。
地に足が着いているなら尚更、都合がいい。
よかったっ…これなら……
……双子...楽と樂に会えば、助かるかもしれない。
ワタシはすぐに走って屋敷の中を逃げた。
屋敷の中はたくさんの魔女でいっぱいだった。
ワタシはその隙間をぬって逃げ続けた。
「早く人形を捕まえなさい!」
「早く魔法を使うのよ!」
「やばいっ!双子も来るわよ!!」
魔女たちの声が、
後ろからも横からも前からもどこからも聞こえる。
皆、ワタシを捕まえようと魔法を使うが、
今は隙間が見えるっ!全部避けて、走り続けた。
屋敷は思ったよりも広く、あちこちに魔女はいた。
魔女たちは皆、杖を構えて魔法を放つが、
多分……大魔女の命令でだろう、身体に当たらないようにしている。
多分、ワタシを転ばせたいのだろうが、
今のワタシにはその隙間すら見える。
絶対に転ぶはずがない。
てか…こんなに騒ぎになっているのだから……
大魔女にもバレてるだろう、
また捕まる前に双子に会わなきゃっ...!
双子は今、どこにいるのだろうっ...?
そう思った瞬間、
ワタシは一瞬、意識が隙間が見えなくなっていた。
「っ!!」
「今度こそ、捕まえるわよ!!!」
その時、魔女たちが力を合わせて魔法をワタシに放とうとした時だった...
「「マリアちゃん!/マリア!」」
血のような真っ赤なチェーンソーは、放たれた魔法を切り裂き、ワタシを抱き抱えて、魔女がいない部屋の中へ入って、扉をソファーなどで開かないように置いた。そうすると、扉の外はドンッドンッドンッ、と叩く音で騒がしいが、部屋の扉は開かないようになった。
「...っ楽!樂!」
そう、助けてくれたのは、双子の楽と樂だった。
ワタシは安心して双子にギュッに抱きしめた。
そうすると、双子は驚くが、
すぐに優しい顔でワタシを引き寄せて、
ギュッッと抱きしめ返してくれた。
「もう大丈夫だよ、マリアちゃん。」
「もう怖くないよ、マリア。」
「うんっ...」
ワタシは抱きしめ合っている双子の体温を感じた。
あぁ...安心する......っ
匂いも体温も声も、全部、安心する。
良かった…楽と樂が来てくれて……。
ワタシは双子に埋もれるように身体を寄せると、
双子はワタシの頭や背中を「よしよし」と言いながら撫でてくれた。
「……なんで私、いつもこうなんだろう。」
命を狙われ続ける理由が分からない。
だって、今回のに関しては...ヒペリという大魔女は、「嫉妬をした」という理由でワタシを捕まえようとしている。
それを双子に話すと、双子は静かに黙った。
「……楽?樂?」
双子の表情が見えない...?
なんだか、重たい空気になったような気がする。
そういえば……と思ったワタシは双子の隠れてる方の目を見ようと、髪の毛を触ろうとした時、
双子が突然、ワタシの手を握ってきた。
と、思えば……
そのワタシの手を引っ張り、双子の方へ引き寄せられた。
そして、双子は顔をワタシの方へ近づき、
両方から首にキスをされる。
ち、ちょっとくすぐったい……
ワタシは一瞬離れようとしたが、
引き寄せられた力は強く、離れる事ができなかった。
そうすると……楽から口を開いた。
「...マリアちゃんは、オレたちとずっと一緒に居たい?」
「えっ?」
なっ、何を突然...?
ワタシが戸惑っていると、樂も口を開いた。
「...マリアは、ボクたちの事を信じてる?」
……双子の事を?
「うん、信じてるよ?だって、あの時もそう言っ...」
「これからもずっと、マリアちゃんは……信じてくれるの?」
「……楽?樂?」
「ボクたちはマリアの事…ずっと、永遠に守りたいって思ってる。」
「「だから……」」
ワタシは双子に引き寄せられて密着された身体から感じて、聞こえた……双子の強い心臓の音が。
「「マリアちゃんは…/マリアは…」」
「「...絶対にこれからも、必ず守るよ。」」
「例え、マリアちゃんが...」
「死のうが、生きようが...」
「「ずっと、オレ/ボクのモノだよ」」
「「どんな時でも、永遠に愛してる。」」
更に強く感じて聞こえてくる、双子の心臓の音。
ワタシもそれぐらい、
自分自身からも心臓の音が聞こえてくる。
双子からの思いもよらなかった言葉に、
ワタシは動揺、そして…別の感情が隠せなかった。
この心臓の音……双子にも聞こえるのだろうか...?
ワタシは双子の言葉に呑まれそうだった。
まるで、双子がワタシをその言葉で包み込み、
どこも逃げ出さないように、逃げられないように、
離さないように、離れないように…するかのように。
ワタシは、やっぱり……
(この双子の事を……楽と樂をもっと、理解しないといけないのかもしれない。)
双子の言葉は...
最初は凄く怖かったのに、何故か今は安心する。
まるで「熱い体温でチョコレートのように心も身体も溶かされていく」感覚だった。
それがまるで「双子の形になっていく」感覚でもあった。
それと同時に、「ワタシになっていく」感覚もある。
この感覚はなんなのだろうか...?
でも、逃げられないようにされてる分、
逆に、逃げてはいけないような気がする。
……そうすると、一瞬、頭の中に声が響く。
(マリア…………ちゃん…………!)
なんだろう、この声っ…?
一瞬、聞こえた声は、優しくて、あったかくて……心地よくて、安心する……まるで「金木犀のベッドに沈む」ような感覚……っ
ワタシは…………に向き合わないといけないの?
あぁっ...うぅっ...!!
「っ!?マリアちゃん!?」
「どうしたの?マリア?」
「っ!!……頭痛いっ……」
最近は…すぐに痛くなる...
動けない……苦しい……どうしてなのだろう...っ?
ワタシは力が抜けて、その場にしゃがみ、動けなくなる。
「だ、大丈夫っ!?」
「頭痛薬...魔女の屋敷なんだし無いかな...?」
「うぅっ......苦しいっ...」
「っ!!!!マリアちゃんっ!?」
ワタシは楽に身体を託すと、
楽は優しく抱きしめてくれた。
樂は部屋の中の近くの棚を探る。
ワタシは...こんな所で苦しんでる場合じゃないのに...っ
てか、早く逃げなきゃいけないのに、
どうしていつも、こうなるのだろう...??
双子に……申し訳ないなぁ……っ…
「...ごめんね、二人とも...っ」
「大丈夫だよ、マリアちゃん、絶対にオレたちが守るから...ねっ?」
「う、うんっ……」
「うーん、魔女にしか分からなそうな薬しかない...ダメだ、一旦…マリアを家に帰そう。」
「それが早いね、マリア、オレに近寄って?」
「う、うんっ...」
そうすると、
楽はワタシを抱き寄せて、お姫様抱っこをする。
そうして、チェーンソーは樂に渡していた。
「一旦帰ってから、あの大魔女を殺そう。」
「あるいはオレがマリアちゃんを見てるから、樂が殺してくる?」
「...それもありだけど、あの大魔女に使える魔女が厄介。」
「それはそうだよね...二人でなら殺せるけど...」
「とりあえず、マリアを家にっ......んっ?」
部屋の外が静かになったのを感じた。
怪しむ双子は、樂を先に部屋から出させた。
ワタシは楽にお姫様抱っこされたまま、ギュッと掴まる。
樂は部屋の外を確認すると、不思議そうな顔で出てくる。
「魔女たちが居ない...」
「えっ!?なんで!?」
「分からない...でも、怪しい。」
「……とりあえず、ここから出よう。」
樂がまた先に部屋から出て、
その後に続いて楽とワタシも部屋を出た。
確かに屋敷の廊下には魔女たちは一切いなかった。
そうすると、双子は顔を合わせ、何かを思ったのか、険しい顔でワタシを抱っこしたまま、走った。
ワタシは(なんだろう...?)と思っていると、
双子はすぐに玄関に向かうが、扉は……おそらく、双子が切ったのだろう、チェーンソーでズタズタになって、外とは普通に繋がっていた……が………
……外にも魔女はいなかった。
「……やっぱりか。」
「…………しょうがない…マリアちゃん?」
「う、うん?」
「オレたちから絶対に離れないでね。」
双子はワタシに強くて優しくてまっすぐな目で...
そう言い、見つめてきた。
ワタシはその眼力に圧倒されて、頷く事しか出来なかった。
「う、うん…っ」
「ふふっ、ありがとう、マリア。」
「とりあえず...向かおうか……アイツの所に。」
「だね……」
双子はさっきまで走っていたのに、
今は歩いて屋敷の中を歩く。
本当に一切出てこなくなった魔女たち。
その不気味な雰囲気に、
ワタシはただただ怯える事しか出来なかった。
これからどうなるのか...
それはワタシには分からなかった。
けど、この双子には「何か」分かるみたいで、
樂はチェーンソーを持ち、楽はワタシを絶対に離さないように抱き持っていた。
ワタシはそれに大人しくするだけ…本当に何が起きるのだろうか?
そうすると、ワタシと双子はさっきの奥の部屋とは違う、更に奥の部屋に着く。
樂が開けると、そこに居たのは......
「あら、そっちから来てくれたの?お人形さんと、双子さん?」
「っ!大魔女っ!」
「「やっぱりか……」」
楽はワタシを更に引き寄せて、
樂はチェーンソーを構える。
そう、そこに居たのは、
さっき魔女に話をされた...
……大魔女のヒペリ・リスだ。
この部屋はかなり広く、
下には儀式をする為の呪文や魔法陣が描かれていた。
そして、ヒペリの周りには...
「っ!!!???」
さっきたくさん居た魔女たちの死体だった。
「あ?この子たち?ふふっ、私の美しさを保つ為の材料にするの!だってお前達を捕まえれなかった使えない魔女だったんたの!当たり前でしょ?」
なんて非道な事を...っ!?
ワタシは怯えると、楽は強くワタシを抱き締める。
樂はチェーンソーを構え、絶対にヒペリから目を離さなかった。
ヒペリはそんなワタシたちを見て、
自身が持っているカバンからマカロンを取り出し、
パクッと一口で食べると、ニヤッッと笑い出す。
「そしてその次の材料は...お前だ、マリア・ヴェルヴェーヌ!
私の為に、死ぬがいい!!あははっ!!あはははははっ!!!」
そうすると、大魔女...ヒペリは光線の魔法を放つ。
双子はそれを避けながら、樂がヒペリにチェーンソーを向ける、が……
「っ!防御魔法っ……!!」
「あははっ!私の魔法、それは「生贄」よ!魔女たちの命をぜーーーぇんぶっ!マカロンして、それを食べて最強の「生贄の魔法」を手に入れたのよ!!!
攻撃魔法も防御魔法も、
最高力の魔力でひねり潰してあげるっ!!!」
マカロンのような見た目をした防御魔法を使われ、チェーンソーの刃が通らない事に、樂は気づく。
樂はそれでもチェーンソーで防御魔法の隙間をぬって切ろうとした、が、すぐに次の防御魔法を使われる。
「くっ…キリがないっ……」
「樂っ!戻ってきて!」
樂はそのまま楽の元へ戻り、その場で作戦会議をした。
「楽兄さん...どうする?」
「……あの大魔女が持ってるマカロンってどんぐらいあった?」
「……楽兄さんが思ってるような数だよ。」
「なるほどね……」
双子は頭を悩ませていた。
お得意のチェーンソーの刃が通らないのなら、
どうやってヒペリを抑え込むか……
……その時、樂は何かに気づく。
「楽兄さん……あの大魔女に使える魔女がいない。」
「…本当だね。」
「って事は……」
「時間通り、進んでるね……っ」
「ならっ…とりあえず……隙を突くしかないっ!!」
樂はジャンプをしてチェーンソーをヒペリに上から構い、向けて切ろうとするが、ヒペリはすぐにマカロンを食べて、頭の近くに防御魔法を使う。
その瞬間、楽は気づく。
「っ!!樂!マカロンにはクリームの隙間がある!そこだっ!!」
「っ……ここかっ!!」
「なっ!!??」
クリームと共に切られるヒペリのピンクの髪の毛。
まるで「綺麗に絞られたイチゴクリーム」のようにクリームと髪の毛が床にボドッと、落ちる。
ヒペリは切られた髪の毛に驚き、顔が青くなり、動けなくなる。
その一瞬、樂が地面に降りて、チェーンソーを腹部に構える。
ヒペリはチェーンソーが来るのをすぐに理解し、
焦って咄嗟にマカロンを食べて、防御魔法を使う。
だが、樂はマカロンの隙間、ヒペリの腹部に狙うようにチェーンソーの刃を入れた。
が、すぐにヒペリはまたマカロンを食べて、防御魔法を使って守った。
樂は刃が通らないのを瞬時に理解すると、すぐに次の距離、高さ、目も追いつかないようなスピードでチェーンソーを振り回す。
この時、ワタシは気づいた。
樂はヒペリに「生贄の魔法」をたくさん使わせている。
つまり、ヒペリの「命のマカロン」を消費させて……それを食べ切れば、マカロンは無くなる。
樂はそれを狙ってチェーンソーをずっと振り回す……絶対に隙を与えないように。
そして、ヒペリも攻撃しようとするが……
「攻撃する?なら、隙はあるよね。」
「ひぃぃぃっ…ぎぃゃあぁぁぁっっっ!!!!!」
攻撃の隙間にヒペリの片腕が切り落とされる。
残った腕で杖を持ち、マカロンを食べながら戦うが、消耗戦だ。ヒペリは徐々に身体を切られていく。
全身、野菜を輪切りするように切られていく。
ついにはヒペリは……上半身片腕しか残っていない。
動けなくなったヒペリは、マカロンを食べようとした、が……
……カバンの中にマカロンはもうなかった。
「うそっっ!?もうないっっ!!??」
「え、ないの?じゃあ…………」
その瞬間、ヒペリの首は……
「っっっ!!!!!」
まるで「マカロンのクリームの間を切る」ように、ボトッ……と切られて床に落ちた。
「……うそ……うそよ……うそだぁ…っ!」
ヒペリは屋敷の中…
そして外まで聞こえるぐらいの大きな声で叫んだ。
樂はヒペリの顔にチェーンソーを向ける。
……その表情は「快楽殺人鬼」の顔だった。
「あれじゃ、すぐに樂に殺されるね。」
「そんな……っ」
この場合、ワタシはどうしたらいいんだろうか?
ワタシにできる事、ないのかな…?
…………あれっ、ヒペリって、もしかして…っ?
「ん?マリアちゃん?」
「楽、降ろして。」
「っ!?マリアっ!?」
「ダっ、ダメだよっ!?降ろしたら、マリアちゃんを守れなくなるっ!」
「マリアお願い、そこにいて……っ!」
「……っ楽と樂は、ワタシの事を信じてくれないの?」
「「っっっ!!!」」
ワタシは双子をしっかり、この目で見つめる。
双子には見えない……が、ヒペリには見える。
「えいっ!」
「あっ!!!待ってっっ!!マリアちゃんーっ!!」
「マリアっ!!」
ワタシは走ってヒペリの近くまで走った。
うん、ここまでの距離なら…何かあっても逃げれる。
……でも、今は……………
「……っ…ヒペリ!!」
「…………まさか、お前からやってくるなんて…!私に何を言う気?何をする気?その憎たらしい目で…
…私を見つめて、どうしたいのっ!?」
………………向き合わないといけないっ…!
「……アナタは…本当は………「悲しい」の?」
「…………へっ?」
ヒペリの中にある……この、嫉妬という感情……
の中にある更に深い感情……それは……
「アナタは、悲しくて……こんな事をしていたの?」
その瞬間……ヒペリは突然、涙を流す。
「……なんでっ……そんな事をっ……?」
「……アナタから、悲しみを感じる……
……嫉妬って、怒りとか憎しみとかのイメージだったけど、アナタからは「純粋な悲しみ」が見えるの。」
「何を言っっ……!!」
「アナタは、あの悪魔を怒ってない、憎んでもない……ただ「愛していた」でしょ?」
「っっっ!!!!」
涙が溢れるように止まらないヒペリ。
「……ワタシのせいでこうなったのなら、ごめんなさい。」
「っ!違うの!何故っ……貴女が謝るのっ……?」
更に止まらない涙を流すヒペリ。
ワタシはヒペリに近づき、目の前に膝を着いて座った。
「……人は必ず過ちを犯す。」
「っ……」
「アナタもワタシも、同じ事を考えていると思う。」
「そんな事っ……」
「それは「彼は悪くない」という事。」
「っっ!!!!!」
「アナタは命を犠牲にしないと生き残れなかった、その魔法じゃないと、生きる事ができなかった……
……それでも、生きる理由が「彼」なら、この過去も今も「認めてほしい、愛されたい」と願うのは、アナタの純粋で綺麗で美しい感情だと、感じるの。
だから、ワタシは…………祈ります。」
ヒペリの前で手を握り、神様に祈りを捧げる。
「どうか、彼女……
ヒペリが望む「大切な人に愛されたい」という事が叶いますように…そして「ヒペリの美しい罪」をお許しください……。」
その瞬間、ヒペリは泣き叫ぶ。
この「マジックタウン」にも響く「少女の悲しみ」の泣き声が……
……と思った瞬間。
「っ!!マリアっ!!」
目の前には、ヒペリに使える魔女がいた。
……ダメだっ、逃げる隙が分からないっ!!
ワタシは逃げようとした時……
魔女はワタシを樂の方へ魔法で投げ飛ばした。
樂はすぐにワタシを受け止めて、ギュッと抱き締める。
それを見た、魔女は…ワタシたちに言う。
「時間は流れていく……
お前たちっ!!やりなさいっっ!!!」
外からも中からも魔女たちの声が聞こえた、と思った瞬間、屋敷の中が一瞬で炎に包まれる。
樂はすぐに楽の元へ戻り、
遠くから魔女を見つめる。
魔女はヒペリの頭を踏み、逃がさないようにする。
ヒペリはその瞬間……魔女たち全員から「裏切られた」事に気づく。
「お前らっっ……!!!!」
「全部、貴女のせいですよ、ヒペリ。」
「私はただっ!!!!」
「貴女の「身勝手で周りの見えない」おままごとに付き合ってられません。」
「やだっ……いやだぁぁっっ!!!私はまだっ……彼に……「ファレノ」にちゃんと想いを伝えれてないのっ!!!!助けっ……」
「相手が悪魔なら、地獄で伝えてきたら、どうなの?このっ!!!「醜い魔女」がっ!!!」
ヒペリの感情の底から出る泣き叫ぶ声が炎や煙の中から、聞こえてくる。
そして、魔女はワタシたちを見て、
目が笑ってない満悦な笑みの嬉しそうな顔で言う。
「ありがとう」
その瞬間、ワタシと双子は魔法で浮かされ、窓から外に追い出された。
外にいた魔女たちが「大丈夫ですか!?」と声を掛ける。
しかし……屋敷は…………
「……朝日だ。」
…………朝日が昇ると同時に、綺麗に燃えていた。
夜は、終わったんだ。
この夜は、ヒペリが「終わらせたくない時間」だったんだ。
そうすると、双子はワタシを後ろから抱き締める。
「「マリアちゃん/マリア」」
いつもより低い声で、双子はワタシの名前を呼ぶ。
「……楽?樂?」
不安になるような声で、心配になったワタシは、
双子の方へ、後ろに向くと、双子はワタシの事を…………
「「大丈夫だよ」」
「「だから、ねぇ…?」」
「「オレ/ボクを信じて、愛して、守らせて。」」
まるで「今にも泣くのを我慢する、幼い子供」のような目で見ていた。
ワタシはその目が逸らせず、動けなくなる。
双子は何を思って、そう言っているのか?
双子の感情は分からない、この目じゃ見えない。
双子が思うワタシへの想いは…今は分からない。
けど、それでも……
……楽と樂から離れちゃいけない、と思った。
ワタシは双子の腕の裾を掴む。
そうすると、双子は優しく微笑み、
全身で包み込むようにワタシを抱きしめる。
ワタシの身体は双子に埋もれて、
フワッと…双子の香りがする。
安心する、落ち着く……優しくてあったかい。
けど…………寂しさもある。
後ろからは屋敷の燃える音。
パチパチと燃える音は、まるで「魔女たちが嬉しそうに拍手している」かのような、喜びと怒りの音。
魔女たちは燃える屋敷を見て、何も言わなかった。
けど、燃え尽きるまで、じーーーーっと……最後まで見つめていた。
…………そうして、朝が来た。
太陽は優しくワタシたちをあったかく見守る。
その太陽の光は、まるで「ヒペリの罪が許された」ような、優しくてあったかい光……
ヒペリは彼に会えたのだろうか?
彼……確か、名前は…………
「マリアちゃん、家に帰ろっか?」
「マリア……帰って、一緒にお菓子食べよ?」
「…………うん。」
ワタシは双子と帰る事にした。
魔女たちは燃え尽きて灰になった屋敷を見て、どう思っているのか………それはワタシはあえて、その感情は見ないようにした。
その時、マジックタウンの入口から「警察」と「ヒーロー」がやってきた。
「げっ…ほんと警察って「事後」じゃないと動かないよねぇーっ!」
「だからイベントは終わらない……だから悪戯者は…全員殺す。」
「あっ、ヒーローも一緒なんだね。」
「ね、しかも何人も……なんの用事なんだろー?」
「ヒーローは「事前」に動くはずなのにね……」
「へ、へぇ……」
双子はやけにその事情が詳しかった。
チョコレートのお姉さんとお兄さんに教えてもらったのかな……??
双子はワタシを間に挟むように移動して一緒に歩く。
……その時「とある一人のヒーロー」は、
ワタシの事を見ていたように感じた。
き、気のせいかなぁ?
「「マリアちゃん?/マリア?」」
「あっ、なんでもないよ。」
ワタシは双子の顔を見ながら歩いて、長いようで短くいたマジックタウンを出た。
……そんなワタシの背中を見つめる「一人のヒーロー」は、ポツリと言う。
「……マリア。」
そうして、このイベント…「マカロンの魔女」の時間は終わった。
その後は、
いつも通りの時間が流れる平和な日常だった。
植物は育つようになり、お菓子も作れて、
閉まっていたお店は全部開き、
「スイートタウン」はお菓子を食べて人間と怪物で賑やかで愉快で平和な街になった。
うん……やっぱりこの街は、こうでなくちゃっ!
そして、ワタシたち…三人はこれから一緒に新しいお菓子を買いに行くのだ。
楽も樂もいつも通り、
楽しそうに会話をしながら支度していた。
うんうん、この仲良い雰囲気もこうでなきゃっ!
ワタシはそれが嬉しくて微笑んでいると、
双子はそんなワタシを見て、一緒に微笑む。
「何ー?マリアちゃんっ!」
「マリア、嬉しそう……」
「ん〜?なんでもないよ。」
「ほんと?ほんと?じゃなんで笑ってるのー!?えへへっ!笑ってる姿もマリアちゃん可愛いねーっ!」
「……ずっと笑ってくれてたらいいのに。」
一瞬、双子の表情が暗くなった。
え、ワタシ何かしたかなっ……??
流石に焦ったワタシは双子に話しかけようとした……が、すぐに双子は明るい表情に戻る。
「……楽?樂?」
「なーーんってねっ!よしっ!お姉さんのお店でチョコレート買おーっ!」
「今日はなんの野菜のチョコレートがあるかな?ねっ、行こ…マリア?」
「あっ……うんっ!」
ワタシは双子の事をまだ、よく知らない。
それでも、ワタシは双子と一緒にいる。
うん……やっぱり、この時間が続けばいいな……っ
悪戯者がいない、双子と一緒にいる幸せな時間。
なんて、思っているけど……この世界がある限り、悪戯者は必ずいる。
そうして、また追われる身になるのだろう……
それでも双子はワタシを守ってくれる。
なんて、いつまでも、このわがままを考えては思っている。
初めてのモノ……
初めての「愛」を双子から感じれるようになった。
この人生、何が起きるか分からないけど……
……それでも、ワタシは生きている。
双子は…いつまでワタシの傍にいてくれるのだろうか?いつかは離れてしまう運命なのだろうか?
ううん、こんな事、考えたくない……っ
ワタシは双子に手を握られ、
一緒にゆっくり太陽で明るい森の中を歩く。
楽も樂も太陽みたいに明るくて…笑ってて、嬉しそうだ………ふふっ、ワタシも嬉しいなぁ……。
そうして、最初の時間は終わった。
しかし……次の時間が…「イベント」が、すぐに迫っているのを、ワタシたちは、まだ、知らなかった……………
九話に続く。
九話は10/10の金曜日に投稿します。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。




