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B=H//end  作者: U3
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第二話「それはそうと、誰なの?」

注意:この作品にはR15程度の「暴力表現」や「性的表現」があります。苦手な方はバックする事をオススメします。

朝、それは当たり前のように存在している時間。

一日には朝、昼、夕方、夜、夜中、明け方、など色々ある……が、おかしいのだ。


あぁ、これは、この世界のあるあるだ。


この世界は通称「イベント」という事が起きる。

それは、世界を脅かすような「悪戯者」が現れた時、この世界は時が止まる。


例えば、「こんな楽しい時間、時が止まればいいのに。」が、現実で起きている、という事だ。


だから、それが終わるまでは時間は止まり、

人間や怪物たちは、止まった時間の中で、生活をする。その中「警察」や「ヒーロー」たちが動き、そのイベントを終わらせる……あるいは、解決させる、という事が基本だ。


そう、なんでそんな話をしたかって……


「…まだ夜?」


ワタシは昨日まで教会に住んでいた。

そこに、人間のシスターのエリカ様の元で暮らしていた、が、実はエリカ様は人間のシスターではなく、黒魔術を使う悪い魔女だった、という話である。そこで、悪魔にワタシの命を捧げようと、ワタシを殺そうとした時……この双子に助けられた。


双子?そう、この双子は「双子の快楽殺人鬼」である。


ワタシの事を気に入ったから、なのかは、まだ何も深くは分からないが、双子はワタシを助けて、家まで連れて行き、今は……一緒に寝ている。


そう、両サイドに双子がワタシを挟んで寝ているのだ。


「……せ、狭い…っ」


やっぱり…シングルベッドに三人、流石に無理がある。


ワタシは流石に起き上がろうとしたが、

双子は眠っているのにも関わらず、

ワタシを抱きしめてくる。


その力は強く、

動いたらワタシの身体が壊れそうだった。


ワタシは球体関節人形の身体で作られている。

その中に魔法で命を宿され、今のように生きている。


だから、強い力で引っ張られれば腕や足は取れる。

この抱きしめられる力……ヒビが入りそうなぐらい、ぎゅぅぅぅっと抱きしめられているから、正直、傷一つもない身体に傷が入りそうで怖い。


だから大人しく双子に抱きしめられながら、寝る事にした。


そうすると…

ストレート髪の弟の方……(がく)が目を覚ます。


「……マリア?」


先に目を覚ましていたワタシを見て、

樂は少し不満そうな顔をする。


「な、何?」


突然不満な顔をされて分からなかったワタシは話を聞こうとした瞬間、グッッと樂に引き寄せられた。突然の事にワタシは驚くが、構わず樂は顔を近づける。


「楽兄さんの方が近くて嫌だ」

「えっ」

「ん…マリアいい匂い…。」


樂はワタシの首元に埋もれる。

匂いを嗅いでいるらしい、凄く息を感じるっ……!


「ちょっ、くすぐったいって…っ!」

「ん〜?」

「やめっ…てっ!」


流石にくすぐったくて離れようと思ったが、

さっきよりも、もっと強く抱きしめられた。


ワタシはびっくりしたが、樂はワタシの逃げようとした行動に、更に不満そうにワタシの首元に唇を近付けて、唇をスリスリと擦りつけてくる。


「やっ…んっ…ちょっ…んぅっ…!ほ、ほんとにっ!や、やめっ!」


それが更にくすぐったくって、

モゾモゾ動くと、樂は少し微笑む。


「んふふっ、なぁに?くすぐったいの?」

「さっきそうっ……言ったじゃん!」

「聞いてなーい」

「やぁっ…んぅっ…!」

「マリアって本当に触られたことないんだね…匂いも触り心地も、全部、新品って感じ…。」


そのまま抱きしめていた樂の手は、

ワタシの服の中に手を入れてきた。


ワタシは更にびっくりして、ビクッと動くが、樂はそれが気に入ったのか、更に奥まで手を入れてくる。


いや、てか、新品って言った!?

なんだその、怖い言い方っ!!怖いわっ!


「な、何っ…そ、その言い方っ!?」

「まるで誰にも触られなかった傷一つもない、


綺麗な飴細工だね……」


樂は嬉しそうにワタシのお腹を触り、

そのまま上へ手を伸ばし、ブラジャーに手が着く。


その時、樂は不思議そうな顔をする。


「まっ…まっっって!どこ触ってっ!」

「あ、マリアって下着つけてるの?人形なのに?」

「当たり前でしょっ!人形も、人間や怪物と変わらないの!樂たちだってつけてるんでしょ?」

「え、つけてないよ?」


え、ほんとに!?そもそも樂たちは人間か怪物かすら分からないが……


「えぇっ!?ほんとに!?」


ワタシがそう言うと、

樂は「フフッ」と、悪戯な顔をしながら笑う。


「嘘だけど」

「は、はぁっ!?も、もぉぉっ!!てか手退けて!ワタシはそろそろ起きて、お菓子を食べっ……」

「ボクはマリアを食べたいな〜?」

「ワっ、ワタシはお菓子じゃないっ!」


樂はそのままワタシを更に抱き寄せたと思えば、

ワタシの上に覆いかぶさり、舌なめずりをしたと思えば、ワタシの頬に手を当て、恍惚に笑い、嬉しそうに顔を近付けてくる。


「いただきま〜……


……げっ。」


「コラーーーっ!!樂っ!お兄ちゃんをほっといて何してるのーーーっ!!!!!」


ワタシたちの声に気づいて起きた、くせっ毛の兄の方、(らく)はワタシが樂に襲われそうになっている姿を見て、怒っていた。


た、助かったのか……??


「オレもする!」


いや、助けてくれないんかーーいっ!!??


「ま、待って!本当にっ!あ、ほら、三人で美味しくお菓子を食べっっ……」

「「オレ/ボクはマリアを食べたい」」


「〜っ!!だ、か、らっ!ワタシはお菓子じゃなーーーいっっ!!!」


ワタシは双子にビンタした。


「ごめんね、マリアちゃん…。」

「……ん。」


そこで流石に反省したのか、

双子は大人しくなった。


「いい加減にしてよねっ!ワタシはそんな事に興味は無いし、そういうのは禁止だからっ!ねっ!?」

「えっ!なんでダメなのーっ!?オレはしたい!マリアちゃんの事……好きだもん。」

「ボクもダメだなんて…確かに突然なのは悪かったかもだけど…マリアの事、ボクも好きなのに…。」

「好きとかの話じゃないっ!そもそも、そういうのは好きな人と……んっ?」


今ワタシ、好きな人って言った?


「好きな人とっ!?じゃしていいの!?」

「いいの?いいの?」

「ダ、ダメですっ!これはワタシが決めたからそうなの!うっ!?」


ワタシはふと双子を見ると、双子は目を上目づかいで、うるうるしながら、ワタシに訴えかけてくる。


「なんでなんで?なんでダメなのーっ!?他は!?それ以外も全部ダメなのーっ!?」

「マリア…ボクたちの事、嫌いなの?」


まるで甘いお菓子が食べたくてお願いしてる無邪気な子供のようなうるうるした上目使い……っ!!

こ、こんなのっ!!ズルいっっ!


し、しょうがない……。


「ま、まぁ…手を繋ぐ、ぐらいならいいけど…」

「手!?手ならいいの!?やったーっ!!」

「ほんとほんと?じゃ今、手繋ご?」

「えっ、ちょっ!まっっ…!」


双子はワタシの手をすぐに取り、

恋人繋ぎをしてきた。


そのまま双子はワタシの手を嬉しそうに握り、

ワタシに抱きついてきた。

そして楽はワタシの頭に顔を埋もれて、

樂はワタシの首元に顔を埋もれる。


だ、抱きしめていいっていうのは許可してない!

い、言わないとっ…………


「マリアちゃんってわたあめみたいにふわふわしてて、甘くて…暖かくて…いい匂い…」

「バニラとチョコレートみたいな、とろけちゃいそうなぐらいのいい匂い…」


な、何の話だ??

ワタシは逃げようとしたが、全くもって動けない。


「え、えっと…?」


双子はワタシの事を光のない目で見てきた。

その目はまるで、深くて苦い、が、甘いチョコレートのような……。


あぁ、これは逃げれないのかもしれない…


「やっぱり食べたいなぁ…マリアちゃん。」

「美味しいんだろうなぁ…マリアって。」


「いやっ………


………も、もうぅっ!!本当にっ!!


いい加減にしなさーーーいっっっ!!!」


ワタシはまた、双子にビンタした。




「ほら、お菓子食べるよっ!」

「「はーい/は〜い」」


両頬にビンタされて真っ赤な顔の双子を置いて、ワタシは部屋を見渡した、がお菓子がある感じはしない……そうだよね、この部屋って窓とライトとベッド、一つずつしかないもんね……。


「…って、ここって冷蔵庫とかないよね?お菓子は普段、どうしてるの?」

「ベッドの下に置いてるよ」

「ここ!ここ!」

「そんな思春期の男子みたいな隠し方する?」

「別に隠してないもんっ!たまたまそこしか置けないんだもん!」

「まぁいいけど…えっと…お菓子はっと…………んんっ?」


「なになに?どーしたの?」

「なになに?なんかあったの?」


「……カビ生えてない?これ?」


ワタシはベッドの下にあったお菓子を取り出すと、

そこには真緑にカビ生えたチョコレートだった。

いや、これはグロすぎる。


それを見た双子は不思議そうな顔をして、

顔を合わせて、カビ生えたチョコレートを見ていた。


「でも美味しいよ?」

「でも食べれるよ?」

「ワタシは嫌!!」


いやっ、なんで食べてるのっ!!??

ワタシは本当に嫌だったから、

双子に対して、過度に嫌な反応をした。


そうすると、双子は目を合わせて、

双子は真顔で、ワタシに目を合わせ、

そして、ワタシに話しかけてきた。


「じゃ買いに行く?」

「じゃ貰いに行く?」


え、でも……


「……大丈夫なの?


ふ、二人って、恐れられてるんじゃ……?」


ワタシがそういうと、不思議そうに見つめてくる。

え、変なこと言った??だ、だって二人は…この双子は「快楽殺人鬼」ではないか。


そんな噂ぐらい、本人たちにも伝わっているはず…


と、思ったワタシは、ワタシが買いに行こうと思ったが、双子は驚く発言する。


「「それ、オレ/ボクがだってこと、誰も知らないよ?」」


ん?どういうことだ??

ワタシは混乱した、それを見て双子は反応が良かったのか、クスッと笑っていた。


「……えっ、どういうことっ?」


ワタシがそう言えば、双子は目を合わせて、嬉しそうに言ってきた。


「「マリアちゃん/マリアだって知らなかったでしょ?」」


「…………たっ!!!た、確かに…!」


それはそうだ、確かに納得はする。

「双子の快楽殺人鬼」とは聞いていた、が、

どの双子かなんて、誰も知らないはずだ。


それはそうだ、本当に納得はする。

この双子が快楽殺人鬼なんて、

誰も知らないだろう。


けど、この双子の見た目や服装は言われてみると、名前通りというか、噂通りに感じるが……


……いや、思えばこの世界、いいえ…この街は細かいことは気にしないぐらい愉快だったと気づく。


気づくのはワタシだけ?と思うが、

そこは深く考えないでおこう……


「じゃ、買いに行こ!マリアちゃん!」

「ほら、買いに行こ、マリア。」


一番気にしてないのは、この双子か。


「……う、うん。」


ワタシも深く考えずにいよう…

そう思いながら、三人で森の中にある廃墟のアパートから、街へ向かった。




この街「スイートタウン」は毎日、変わらない。

人間や怪物たちは楽しそうにお菓子を持ちながら踊ったり歌ったり遊んだり、楽しそうに過ごしている。


ワタシは周りの双子への視線が大丈夫か、気にしたが、全く気にする程はなく、普通そうだった。


むしろ、子供などは「双子のおにーちゃんたちだ!」や、大人たちは「お、あの双子ちゃんたちだ!」などと、声をかける人もいた。双子は笑顔でそれに応えるのを見たワタシは、何か知り合いなのだろうか?と思ったが、別に声をかけられるだけで、それ以外は何も無かった。


それが不思議でしょうがないが、

この双子が「快楽殺人鬼」だと言うのは、

本当に分からないものなんだなぁと感じる。


そして、双子は「ここがいい!」と言ったお店に行く。そこは、チョコレート系のお店だ。

この双子、チョコレートが好きなのかな?


あのベッドの下にも沢山チョコレートがあったなぁ…と思い、お店の中に入ると、甘い匂いで心も身体も満たされる。


そして、人間のお姉さんの店員さんが、

ワタシたちを迎えてくれた。


「あら!いらっしゃい!いつもの双子ちゃんじゃない〜」

「「来たよー!/来たよ〜」」

「あら、今日はガールズフレンドも連れてきて!可愛い子ね!」

「「でしょ!」」

「あ、えっと………」


って、ここは何で取引されるのかな…?


実はこの世界では、二つの売り方に分かれる。


一つ目は学校で習って取得したお菓子を作って、

お金で売る、という事。


二つ目は独自で習って覚えたお菓子を作って、

お菓子と交換で売る、という事。


その為、お金持ちはお金で取引をし、

庶民はお菓子で交換する、が定番だ。


エリカ様といた頃は、お金で交換していたが、

あれは庶民から巻き上げたお金で買っていたんだと思うと、恐ろしい気持ちになる。


で、この双子はどうするんだ?

お金を持っているのか?

それとも……いや、持っているお菓子はカビ生えたし、そんな事はしないは…………ずっ!?


「このお菓子たちと交換してー!」

「はーい、いいわよ!」

「えっっ!?ちょっ!まってっっ!それはカビが生えっ…


…んっ?」


店主のお姉さんは嬉しそうにワタシの口を人差し指で塞ぐ。


「ふふ、いいのいいの!」

「で、でも…っ」

「この双子ちゃんは私の息子みたいなものなのよ!だからいいのいいの!」


む、息子?でも、店の奥を見ると、

同じ人間の男性の……多分、作っている人だろう。

その人はワタシを見て、微笑む。


「……そ、そうですか…。」


なるほどね、確かに大人の人間からしたら、

ああいう子供っぽい双子は、可愛いものだろう。


でも双子の見た目は大人だが…

中身は子供っぽいから、可愛いと思うのかな?


ワタシは可愛いとか思わないし普通にまだ怖いけど……


なんて事を差し置いて、双子はまるで子供ように嬉しそうに店中に置かれているチョコレートを一つ一つ仲良く喋りながら選んでいた。


ワタシはそれを見て、ぼーっとしていると、

お姉さんが話しかけてきた。


「ねぇ、貴女の名前は?」

「ワ、ワタシですか?」

「ええ!双子ちゃんと一緒にいるなんて、すっっっっごく珍しいから、つい貴女も娘にしたくて〜!」

「あ、なるほど…」


ワタシも娘にされるのね…?

まぁ、この人なら優しそうだし、

名前ぐらいなら良いか。


「ワ、ワタシはマリアです。」

「マリアちゃんね!可愛い子ね〜!まるでお人形さんみたいに綺麗ね!よろしくね、マリアちゃん!」

「あ、あはは…よろしくお願いします。」


ま、間違ってないけど、

ドキってする発言をされてしまったなぁ。


ワタシがお姉さんと話してると、

双子はガムをプクーっと膨らませたようなムスッとした顔で、ワタシに抱きつく。


いや、ここ店っ!外っ!


「ねぇ!マリアちゃんも選んで!」

「なんでお姉さんと話してるの?」

「いやっ、なんで抱きつくのっ!!」


ワタシは離れようとするが、

双子は更にギュッッと抱きしめてくる。

いやっ!苦しいし恥ずかしいしお姉さんもニコニコこっち見てこないでーーっ!!


「だって、マリアちゃんってすぐに逃げるから…」

「マリアを逃がさないようにって思って……」

「それ関係ないって!!ワ、ワタシも選ぶから待ってて!」

「「はーい/は〜い」」


そうすると双子はスっと離れてくれた。

よしよし、この隙に何のチョコレートにするか選ぼう……じゃないとずっとこうなりそう。


「…ん?このチョコレートたち…綺麗だ。」

「でしょ!うちのチョコレートは絶品よ〜!」

「へぇ…珍しい…野菜が入ってるチョコレートかぁ…」

「ふふっ!珍しいでしょ?本当はフルーツやナッツの方が売れるんだけど…野菜のチョコも美味しいのよ〜!」

「へぇ〜…。」


チョコレートの名前には野菜の名前が揃っていたが、見た目は普通だが綺麗なチョコレートだ。


スゴい、作る過程が気になってしょうがなくなる。

その中で甘くてとろけそうな程のチョコレートの良い匂い…やはり、お店を開くぐらい、お菓子を作る人たちはスゴいんだと感動する。


そういえば、双子は何にしたのだろうか?


「二人は何にしたの?」

「これ!人参のミルクチョコレート!」

「ボクはほうれん草のビターチョコレート。」

「ス、スゴいの選んだなぁ…ワタシはどうしよう……


…あっ。」


これは、美味しそう……!


「お、マリアちゃん、いいの見つけたね!」

「さつまいものチョコレートスイートポテト…お、美味しそうっ……!!」

「それね!うちのナンバーワンメニューなの!良かったら沢山貰ってって!」

「えっ!で、でもっ…」

「いいのいいの!マリアちゃんはもう、うちの娘だからさっ!!」


む、娘……っ!

なんだか、その言葉は……っ

ワタシにとっては心があったかくなる言葉だった。

じんわり…まるで、ホットチョコレートを飲んだかのような、ほっとする嬉しい気持ち…。


「っ!…あ、ありがとう…ございますっ!」

「ふふっ!いいって事よ〜!じゃ、そのチョコレートたちでいいね?袋に入れるから、待っててね〜。」

「「はーい/は〜い」」

「あ、ありがとうございます!」


お姉さんはワタシたちが選んだチョコレートを、

大きな布の袋に入れてくれている。


このお姉さんは優しい人間だなぁ……

……店の奥にいるお兄さん?も優しそう…。


そんな優しい人間がいたなんて、

思ったよりこの世界は優しいのかもしれない。


……この双子は優しいか分からないけど。


って思っていると、

一瞬外に何か光ったような気がする。


そして、

双子は何かを見つけたのか、

外を見ている。


なんだなんだ?と思っていると、お姉さんはワタシにチョコレートの布の袋を渡した。


「あら、新しいお客さんかしら?はい、どうぞ!双子ちゃんも男の子なんだから、女の子に任せないで持ってあげるのよ〜」

「「………」」

「ふ、二人とも?」

「あら、何か見つけたのかしら?って事は……ごめんね、マリアちゃん。多分、双子ちゃんたち……」


双子は揃って先に店を出た。

まるで何かを見つけて追いかける犬のようだ。


ワタシは慌てて大袋のチョコレートを持って追いかける。


「ち、ちょっっ!?すっっ!す、すみませんっ!ありがとうございました!」

「はーい!あっ、マリアちゃん!」

「は、はいっ!?」

「あの双子ちゃんの事、よろしくね!」


さっきまで明るかったお姉さんの表情は、

少し暗そうで、

少し寂しそうで、

少し悲しそうだった。


あの双子のこと、何か知っているのかな?


って、それよりも双子を追いかけないと…っ!!


「…っ!は、はいっ!!」


ワタシは慌てて大袋を持ったまま追いかける。


「……思ってたより、マリアちゃんって子は、双子ちゃんに愛されてるわねぇ。」

「そうだな、俺も遠目から見てもそう思ったよ。」

「ねっ!こんなに珍しいこともあるのねぇ、あの双子ちゃんが可愛い女の子を連れてくるなんてねぇ……また来るかしら?」

「あの双子と一緒にいる限り、また来るだろうなぁ。」

「そうね……マリアちゃん、頑張れっ!」



追いかける足の早い双子を逃げ足の早いワタシが追いかけていると、そこに居たのは……


「あれは、魔女だ!?」


真っ黒いフード付きの服に魔法石の付いている杖、

そして杖の上に乗って飛んで逃げていた。


その手には、小型のカメラを持っていた。


双子はその魔女を追いかけていた。

手には…血のような真っ赤なチェーンソーを一緒に持ちながら。


ワタシも双子を追いかけて、走っていると、

魔女は路地裏に入り、そのまま上へ飛んだ。

それを双子が壁を登って追いかける。

ワタシも合わせて壁を登って追いかけると、

屋根の上に辿り着き、空に浮く魔女。


「くっ!!なんで分かったのっ!?」

「やっぱり盗撮してた!」

「やっぱり悪い魔女だ。」

「くっ…はっ!!!あの双子の後ろに…ドールの女がっ!!」


っ!ワタシが人形って事、気づかれてるっ…!?


「なんで分かっ…きゃっ!!」

「連れ去れば大魔女様が喜ぶ!!上手く双子を避けながら捕まえっ……」


魔女は物凄いスピードでワタシの腕を掴もうと、

突進するぐらいの勢いでワタシの方へ飛んできた。


しかし、双子は飛んでいる魔女の高さに合わせて飛んで、チェーンソーで真っ二つにしようとしていた。


その瞬間、魔女は魔法で防御した、が、双子のチェーンソーはそれを割る。


そして、魔女はそのまま真っ二つに…………


「まって!!二人とも!!」


ワタシは双子を止めた。


それに合わせて、双子もチェーンソーを持つ手を止めて、降りてきて、ワタシの元へ走ってきた。


よかったっ……と思ったが、双子の目を見た時、まるで大きな飴を飲み込もうとして喉を詰まらせたような、感覚がした。


双子の目に、光はない。


「「なんで?」」

「え、えっ…えっとぉ……っ」

「なんで止めたの?マリアちゃん?」

「なんで止めさせたの?マリア?」

「いやっ…そのっ……」

「「ねぇ、なんで?」」


怖い、怖い…怖すぎる。

この双子、悪戯者は殺すしか選択肢はないようだ。


そんなワタシを見て、

隙間を見て逃げようとする魔女を見て、

ワタシは止めた目的を思い出し、

咄嗟に双子にお願いをする。


「二人とも!あの魔女を捕まえて!」

「えっ、はぁっ!?」

「「…………」」


双子は光のない目で、

魔女の方へ振り返り、見つめる。

そして、ワタシのを目を見て、無邪気に、嬉しそうに微笑むと、魔女の方へ走った。


「はぁっ……ひ、ひぃぃっ!?」


「「マリアちゃんがそう言うなら…/マリアがそう言うなら…


……捕まえるね♡」」


「ぎぃっ、ぎゃぁぁぁぁっ!!」


そうして、双子は魔女を捕まえてくれた。

樂が魔女を羽交い締めにし、動けなくなった魔女にワタシは尋問する。


「ねぇ、アナタは魔女なの?」

「………」


流石に答えないか……?

と思っていると、楽がチェーンソーを魔女の首に向ける。まるでギロチンされる寸前の魔女だ。


「答えないよ殺すよー?」

「ひぃっ!ま、魔女ですっ!」

「ありがとう、もういいよ。」

「はーい!やった!マリアちゃんに褒められた!」


別に褒めたつもりは無いが…

ほ、本人がいいならいいか……ん?


「……ボクは?」

「えっ、いや、今その話じゃなくて……」

「じゃ逃がそうかな……」

「あっ!いやっ!あ、ありがとうっ!捕まえてくれて!」

「……んふふっ。」


いやっ、な、なんでそうなるのーっ!?

この双子の考えが本当に理解できない……


……って!そうじゃなくてっ!


「アナタは何が目的なの?


…ワタシに用があったように感じるけど……」


ワタシの言葉に逃げようとする魔女を、

楽はチェーンソーを魔女の首に構える。


そんな魔女の顔は真っ青だった。

今にも逃げ出したいのだろう、

けど、ここはワタシも心を鬼にする。


「っ……大魔女様が…特別な魂と肉体を持ち帰ってこい、と言われてるんです……っ!」

「……特別な魂と肉体?」

「我々、魔女は密かに暮らす者たち…私だって、こんな事したくないっ!!けどっ…大魔女様の命令は……絶対…っ!わ、私はお前の魂と肉体を持ち帰って、大魔女様に認められっっ……!」


顔が真っ青の魔女が、

ワタシの方に手を向けた瞬間…………


「……何、オレたちのマリアちゃんに触ろうとしてるの?」


流石に、双子は限界だったか。

魔女は楽のチェーンソーに首を切られ、そのまま動けなくなり、ボトンっと、頭は屋根から転がり、そのまま路地裏の地面に落ちてった。


無慈悲だが、目的は理解した。


ワタシは……やっぱり、いつになっても狙われる身なのだろう。

それを理解したワタシは双子に話しかけた。


「二人ともそろそろ帰ろっ………きゃっ…!」

「「マリアちゃん/マリア」」

「な、何っ?」


と、思ったら、双子はワタシに抱きついてきた。

び、びっくりした、急にどうしたのだろう?


「マリアちゃん、今、怖い?」

「こ、怖くはないよ、こんな事、慣れてるし……」

「マリア、大丈夫だよ。」

「えっ…?」

「あんな悪戯者は…」

「ぜーーんぶ…」


「「オレが殺すからね/ボクが殺すからな」」


双子の言葉に、身体が固まる。


「えっ…とぉ……?」


何を言っているんだ?この双子は?


「マリアちゃんは心配しなくていいんだよ?」

「マリアにはボクと楽兄さんがいるから。」

「「だから………」」


双子は更に強く抱きしめる。


まるで、

ワタシを逃がしたくないような、

ワタシを逃がさないように。


「「ずぅーーーとっ、ずぅっと、いっしょだよっ♡」」


絶対に離す気のない、

強い力、熱い体温、流れる時間、甘い匂い。


ワタシは次は、この双子の目的を探らないといけないのを感じるが、探ったらダメなような気もする。


なんだろう…この気持ち…頭が痛い。

おかしい、ワタシは人形だから頭痛なんて……


ワタシは、人形??


「……マリアちゃん?」

「……マリア?」

「………………二人とも、帰ろうか。」

「うん!帰ってチョコレート食べよ!」

「うん!早く帰って食べたいな〜」


……ワタシは重たい口を開く。


「そういえば…二人は何者なの?」

「「え?」」

「……それはそうと、ワタシって…誰なの…?」

「「…………」」


双子は目を合わせて、

ワタシの方に向き、

無邪気に微笑む。


「「マリアちゃんはマリアちゃんだよ/マリアはマリアだよ」」


…………嘘だ、この言葉は嘘にしか聞こえない。

また、双子に感情の隙間が見えるのでは?

…と思ったワタシは双子を見る……が、やはり………


「っ……」


……双子の感情に隙間などなかった。


双子はそんなワタシを見て、

何かに気づいたが、

気にせず無邪気な笑顔で微笑みながら、

ワタシをギュッと抱きしめる。


「「オレたちもオレたちだよ!/ボクたちもボクたち」」


「「大丈夫だよ」」


「「早く、オレ/ボクたちの家に帰ろ?」」


あぁ、また頭痛がしてくる。

おかしいな、おかしい、おかしいなぁ。


おかしいのに、双子に身を委ねてしまう。


「…………うん。」


まだ、探ってはいけなかった。


ワタシの言葉を聞いた双子は、

見た事のない顔をしていた。


まるで、大好きなお菓子を、

大切に、どこかに隠す子供のような顔。


まだ双子の事で分からないことがある。

けど、ワタシの事でも分からない事もある。

ワタシはまだ、何も分からない。


そう、今は……何も分からない。


双子はワタシが持っていたチョコレートの大袋を持ち、ワタシの空いた両手を握る。


そして嬉しそうに微笑み、

楽しそうに廃墟のアパートまで帰っていく。


この生活、いつまで続くかな……


ワタシはそんな事をふと思いながら、

双子と一緒に帰っていくのであった…………。




そんなワタシたちを遠目から見ているとある影。

その影は、先程、双子に殺された魔女の身体と頭を布袋に入れて、魔女の首無し死体と共に落ちていたカメラを手に取り、確認すると、そこに映るモノを見て、微笑む。


「これなら、大魔女様に…っ!!」


その影はカメラを鞄の中に入れて杖に乗り、魔女が入った大きな布袋を持ち、そのままワタシたちと反対側の方へ大きな声で笑いながら飛んで行った。


そう、そこからワタシたちは更に巻き込まれていく。


次の影…悪戯者たちは、次へ動き始めた…………



三話に続く。

三話は9/19の金曜日に投稿します。


最後まで見ていただき、ありがとうございました。

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