第十三話 「大丈夫だよ」
注意:この作品にはR15程度の「暴力表現」や「性的表現」があります。苦手な方はバックする事をオススメします。
ネモと一緒に生活を始めて一日目。
あの後、
ネモに連れ去られた後は、そのまま添い寝をした。
起きたらネモは隣に居なくて、
でも、部屋の中はネモの部屋で…不思議な感覚と、ネモが居ない事に驚き、すぐにワタシは部屋から出ると、ネモはキッチンのリビングでコーヒーをマグカップに入れていた。
あぁ、よかった…生きてたし、起きてた。
ワタシはネモに声をかけた。
「ネモ、おはよう。」
「おはようございます、マリアさん。」
あれっ、ネモ…特に変わった様子はない。
昨日はあんなに苦しそうにしてたのに……
と、思っていると……
……ネモは申し訳なさそうな顔をする。
「すみません、マリアさん…こんな事に巻き込んでしまって。」
「えっ?な、なんでっ?」
「いえ…僕のせいで、マリアさんを巻き込んで……その、僕……実は少し前になるんですが……あ、せっかくなので、朝ごはんのお菓子を食べながらお話しませんか?」
「あ、はいっ!」
ネモは朝食にシンプルなクッキーを五枚、
チョコチップのクッキーを五枚、用意し、
ネモにはコーヒー、ワタシにはミルクが出された。
「あ、マリアさんはミルクを出しちゃったんですが……大丈夫でした?」
「あ、大丈夫です!」
もしかして、コーヒー飲めないって思われたかな?
ワ、ワタシもコーヒー飲めるけど…
でもまぁ…ここは、あえてネモが出してくれたミルクを飲もう。
そうすると、ネモは口を開き、話をしてくれた。
「これは、僕が…幼い頃からの話です。
僕は数年前から「愛」が理解できませんでした。
それは幼い頃からで、
今も変わらず、分からないです。
その結果「精神的に愛が分からないのなら、病院を受けると良いですよ」と、仲間であり、知り合いの警察のお偉いさんに言われて…そこから「病院に通う」事になり……
……「ヒーロー」として「愛される存在」と、
「愛が分からない」として「患者」としての、
感情と共に両方存在していて、
その中での自分自身に対しての葛藤や苦しみ、
そして、苦しみの終わりがない未来に、
僕はいつまでこんな感情なのだろう。
と、向き合っている中……
魔女が「イベント」を起こした際、現場に向かうと、そこに「マリアさん」を見つけた時……
「一目惚れ」でした。」
「……ひっ、一目惚れっ?」
「はい、一目惚れです。」
ネモはニコッと微笑みながら、クッキーを食べる。
え、そうだったんだっ……!!
でも確かに、あの時…視線は感じた。
気のせいかと思ってたけど、まさか、それがネモだったなんて……知らなかったし、知るわけもない。
それでも、ネモからの想いは嬉しい…と、感じる、が、驚きも隠せない。
ワタシが驚くと、
ネモはクスっと笑って、話を続けてくれた。
「僕は一目マリアさんを見た時、そこから追い続けた時から思いました…「穢れのない笑顔で、優しく微笑む、まるで女神のような存在」だと、心の底から感じた僕は、全ての感情が、喜怒哀楽も、穴の空いた愛も、全てが集まった感情、それが「愛」でした。
結果、初めての「愛」が止められず、
元々の精神が悪かったのもあり、正常な判断ができず、その場の感情を出した結果…「イベント」が起きてしまいました。」
「つまり、ネモは「悪い気持ち」で「イベント」を起こした訳じゃないんだね。」
「ふふっ、マリアさんは優しいですね…ありがとうございます。」
この言葉を聞いて、ワタシはネモは悪い事をしたから、ってよりも、感情に沿った動きだと感じた。
ネモって思ったより感情的なんだ……と感じる。
ワタシも感情的な方だけど、ネモは大人しいイメージだったから、そこから、ああなるんだから「愛」と言うのはすごいなぁ……と感じる。
ワタシも最近、愛を知ったが、それは双子が優しく迎れてくれたからであり、ネモはその経験はなかった……ようにも感じる。
だから「魔法の暴走」にも繋がったんだと思った。
そして、次はネモの魔法の説明をしてくれた。
「僕の魔法は「感情の花が咲く」というモノで、
それは「人の心の声(感情)が花として咲く」と言うモノでもあり、それは「花が伝える言葉」から「マリアさんの心の声(感情)」も、読み取っては、それがとにかく、愛おしくてしょうがなかったです…ふふっ」
「そ、そうだったのっ!?」
花が伝える言葉……「花言葉」というやつかな?
花が咲くだけで心の声……
ま、または相手の感情が分かるなんてっ……!!
す、凄いなぁ…っ!!素敵な魔法だなぁ…。
花言葉かぁ…本で見たっけ……?
……あっ、そういえばっ…!!
「ネモと図書館で最初に出会った時の本って…花言葉の本だったような……?」
「ふふっ、あの時は…その場にあった本を取ろうとしたら………いいえ、マリアさんが図書館に入った時から、その本を取ろうとしたから、僕も知ろうと思って、マリアさんの事も、この魔法の事も……愛も、知れたら……と思って、声もかけたんですよ。」
「えっ、そうなの?」
「はいっ!あとは…双子さんには、今は申し訳ないですが……あの時、矢を放ったのも僕です。」
んっ!?あの時の矢っ……って事!!??
流石にびっくりする、あれってネモだったの!?
「えぇっっ!!??」
「でも、双子さんがいけないんです……純白のマリアさんにあんな風に触れるなんて…マリアさんはそのまま、綺麗なままでいいんですよ。」
「な、なるほど……」
そ、そうですかぁ…と思うと、ネモの近くの植木鉢に植物が咲いた。
ネモはそれを見てクスッと笑う。
「あれ…ツクシが咲きましたね。
って事は「意外」と「驚き」って事は、びっくりしました?」
「そ、そりゃっ!びっくりしますよ!って……こういう感じで理解してるんだ…凄い……」
なんだが、魔法使いと一緒に居るみたいだ……。
あ、いや、でも…ネモって魔法が使えるんだから、魔法使いになるのか?ヒーローで魔法使いで弓も使えるって……す、凄いっ……!!
と、思っていると植木鉢の花が変わり「ピンクのカスミソウ」が咲いた。
あぁ…こうやって「感情が見える」のか…ちょっと恥ずかしいかも……。
と、思っていると、次は「アザミ」が咲いた。
「はい、仲間の感情もそういう風に見ていたので、わりと…疲れてる子が多かったので、大変そうでしたけど…
僕はその分、仲間には気づかれなかったので、良かったのですが……
今更になって、自分自身の感情も花が咲く事が分かってしまったので、気をつけないとですね……。」
アザミの花言葉って確か…「触れないで」とかあったような……あんまり仲間には触れてほしくなかったんだろうなぁ、と思った。
「実はたまに病院の事で相談はするのですが…仲間は皆、口を揃えて「人には波がある、そんなの当たり前だよ」と、口にするんです。ですから、こんな事も当たり前なのかと思っていたら、そうじゃない事にも気づけて……
ですが、仲間たちは僕の事を見ないまま、気づかないまま……でも、結果は、こうなってしまったのは僕のせいです。
僕が……こんな事をしなければ、仲間にも危害は出なかった…………感情というのは、難しいですね…。」
ネモは申し訳なさそうに、悲しそうな顔をする。
こう見ると、ネモは…仲間や人思いの優しい子なんだと思った。
けど、昨日のあれは…なんだったのだろう?
と、言われると、
恐らく…「感情の爆発」なんだと思った。
ワタシもある時はあるけど…人には必ず感情が存在していて、その中で生きてく中で処理をしていく。
例えば「美味しいお菓子を食べた」時は「嬉しい」となるけど…「不味いお菓子を食べた」時は「悲しい」気持ちになる。
もしかしたら、ネモはその感情の「安定」が苦手なのかもしれない。
「喜怒哀楽」はしっかりしている。
けど「人からの愛」が理解できないと、
例えば…「人から想いを込められて作られたお菓子」を食べても、その「想い」が分からない可能性があって……
「想い」と言うのは「愛」に繋がり、
「愛」から「想い」になる。
でも…
この流れをネモはしてこなかった可能性がある。
喜怒哀楽と言うのは人間の基本にあるものであり、
それ故の「愛」という感情も存在していて、
ネモは「愛が存在しない」環境だった可能性がある……
ワタシは幸い、双子がいてくれたおかげで、
「初めての愛」を安全に理解した。
それでも…ワタシはまだ、
深くは理解はできていない。
しかし、ネモは環境が悪かった。
仲間から理解されない、病院に通いながらも、
「理解」まではいかなかった。
結果…その「愛」は「ワタシ」だったんだろう、と思う。
そこで起きた「感情」は抑える事なく「溢れた」……
……つまり「感情の爆発」をしたんだ、と思った。
精神が悪いのなら尚更そうなると思った。
精神が悪いと、人は正常な判断は出来なくなる。
つまり、気づいた時には……という事だったんだろう。
ワタシはまだ、そういう経験はしてないけど……
なんとなくまだ、ワタシは精神が強かった、のだと思った。
何事にも逃げ続けてきた人生……
……今は向き合わないと。
「ねぇ、ネモ?」
「はい!」
「あの…その、敬語やめてみていい、かな?」
「えっ…と?」
「えっと!お互いにフレンドリーになって話してみない?」
と、提案してみる…が。
「ぼ、僕は幼い頃から敬語だったので…そういうのが分からないのですが…えっと…?」
「あ、あぁ…なるほど!じ、じゃ…最初は手を握ってみない?」
「えっ…手を握る……ですか?」
「うん!握ってみよ?」
と、ワタシがネモの手をギュッと、握ると、
植木鉢の花がまた変わった。
今咲いているのは、「イベリス」という花だった。
と、その花を見た後に、ネモの顔を見ると……
「ネっ、ネモっ……んっ…!?」
「んっ……んふふっ、ダメですよ、マリアさん♡可愛すぎますっ♡」
ネモが突然、優しいキスをしてきた。
びっくりして動けなくなって、咄嗟に手を更に握ると、ネモは嬉しそうにもう一度、次は深いキスをしてきた。
な、なな、なんかふわふわする感覚っ!!
「んっ…んぅ……ネ、ネモっ……っ!」
「んっ♡…ふふっ……なんですか?」
「ネ、ネモって…本当に女の子、なの?」
「はい、僕は女ですよ?あ、もしかして…マリアさんは、女性は苦手ですか?」
「あ、いえ!そういう訳じゃなくて…!なんか、女の子とキスするの、不思議な感覚で……。」
と、ワタシが言うとネモは不思議そうな顔をする。
「え、不思議なんですか?」
「は、はい……」
「でも、同じ生物ですよ?」
「で、でも……」
「ふふっ、僕が好きなのは"マリアさん自身"です、性別は関係ありませんよ。」
……それもそっか。
「うん…ふふっ、そうだね。」
「あ、マリアさん、クッキー足りますか?まだ棚にあるので良かったら……」
「あ、大丈夫だよ!」
「そうですか?分かりました!」
そうして、朝は楽しく過ごせた。
その後、ワタシは部屋を探索してると、
ネモが秘密の部屋を見せてくれた。
そこに入ると…………
「わ、わぁっ!!本がいっぱいっ!」
たくさんの本棚が壁いっぱいに置いてあり、
そこには本!本!本!と、本のパラダイスだった。
大興奮のワタシを見て、ネモはクスッと笑う。
「ふふっ、良かったです。
僕も本を読むのが好きで……たまたま集めてました。」
「す、凄いっ!すごーいっ!!」
「ふふふっ、嬉しいですか?」
「はい!これ、全部読んでいいんですかっ!?」
「はい、せっかくなので……ティータイムしながら一緒に読みますか?」
「はいっ!読みます!」
と、元気よくワタシが言うと、
ネモは凄く嬉しそうに大きく笑った。
「ふふっ、んふふふっ…じゃ、さっきのコーヒー入れてきますね?マリアさんもコーヒー飲めるんですよね?」
「えっ!?なんでそれをっ…さ、咲いてないのになんで…」
「あぁ、いえ…朝ごはんの時に、マリアさんの後ろの窓の近くの大きな植木鉢にコーヒーの木と共にウツギが咲いてたので…
…たしか花言葉が「秘密」や「古風」だったと思うので、昔から飲めるよ!って意味かと……ふふっ。」
後ろっ?はっっ!!
たしかに窓に大きな植木鉢があるっ!!
「あ、あっ!見えない所にっ!さ、咲いてたっ!」
って、よく見るとこの家、たくさんの植木鉢や花瓶が置かれてる……でも、どれも全く季節や場所の違う花や木や植物が咲いていた。
これもネモの魔法だと思うと、面白い……
と、思っていると、
ネモはコーヒーを入れて、本の部屋に持ってきた。
「じゃ、早速読みませんか?
ここは面白い本でいっぱいですよ〜!」
「あっ、はいっ!是非読みますっ!」
そうして、ネモと本を読む会が始まった。
……数時間が経った。
ワタシは数十冊読んで、まだまだこの部屋には数え切れないほどの本がまだある、と思うと嬉しく思い、ワクワクする中、ふとソファーを見る。
そうすると、ネモは寝ていた。
ネモ…ヒーローのお仕事で疲れてたんだろうなぁ。
ふと、ネモの目元を見ると、目にはクマがあり、
あまり寝てないような様子だった。
それに加えて、足や腕や手には傷も多かった。
戦ってたのかな…たくさんの悪戯者と。
でも、ネモのヒーローの姿……確か、手袋とかしてたし、服も王子風の全身、布を身にまとっていたような気がする。
だからこの傷が見えなかったのかぁ…
…と思い、ネモの頭を撫でる。
ネモの髪の毛はストレートでサラサラしていた。
そういえば、ネモには猫耳がある、尻尾もある。
あまり気にしてなかったが、これって本物?
と、思い、耳に触れると、暖かく体温を感じた。
わぁ…ふわふわしてる、尻尾も心做しかワタシの腰にピターーーっと巻き付くように、くっついている。
尻尾も触るとふわふわしていて、
まるで本物のようだった。
ネモって人間と怪物のハーフなのかな?
この世界じゃわりと珍しいかも。
それに、ネモみたいな完全な人間顔のハーフは中々いない。
こんな部分だけのハーフはそこまで見かけた事はないから、これもきっと過去と関係してるような気がする。
猫耳って事は、人間と化け猫のハーフ?かな?
それで魔法使いで、周りからは王子様と言われて……なんだが凄いな。
ネモって、「不思議な人」だけど、
思ったより、「周りとは違うが、同じ人」なんだと思った。
それは人間としても、怪物とても、
この世界で生きる者としても、同じだと思った。
なのに、この違い……なんとなく、自分と重ねた。
ワタシは「人形」だ。
人間でも怪物でもない「違う者」だった。
ネモは「ハーフ」で、ワタシは「人形」……
……分かりやすく「人間」と「怪物」で分かれてない、間の存在。
だからなのかな…
ネモの事はほっといておけなかった。
そういえば、
ワタシはいつからこの身体なんだっけ?
生まれた頃から?ううん…もっと先な気がする。
かなり記憶が抜けているから、なんとも言えないけど……でも、向き合えば、思い出せるような気がする。
記憶がないのか?消えてるのか?抜けているのか?
そこまでは、今は分からないけど…できる事はしよう。
と、思っていると……
「あっ、ネモ……」
「…ふふっ…すみません、寝てました……っ」
ネモは重たそうに身体を起き上がる。
苦しそうだなぁ…どうしたらネモは元気になるかな?少しでも楽にさせたいし、ネモの「愛」に応えたい。
……って事は?
「ねぇねぇ、ネモ?」
「は、はい?どうしました?」
「……ワ、ワタシに甘えてみてっ!」
「………………えっ!!??」
ネモはドンッッッとソファーから落ちる。
だ、大丈夫かっ!?と思っていると、
本部屋の中の植木鉢たちの花が全部…
…「様々な色のチューリップ」が咲いた。
赤に白にピンクに黄に紫……す、凄いカラフルっ…
と、思っていると、
ネモはワタシにギュッと抱きしめる。
そうすると、ネモの尻尾は、ワタシの腕に巻き付く。耳もヘタ〜っと、下に下がって、ネモの首元からゴロゴロ言い出す。
あ、思ったよりも猫だ……
ワタシはネモの頭を撫でると、
ネモは嬉しそうにワタシにスリスリしてきた。
「んん…マリアさん……っ」
「ネモ?」
「えへへ…もっと撫でてください……安心します…っ」
「っ!うん、分かった!」
ワタシは更に撫でると、ネモは嬉しそうにゴロゴロ鳴りながらスリスリしてくる。
本当に猫みたい……
でも、ハーフなのだからそりゃそうか…。
そうすると、ネモは腰とお尻を上げたと思ったら、
尻尾を横にずらしながら、ワタシに全身でスリスリする。
なんかこれ、猫の本で見たような……
と思っていると、ネモは嬉しそうに声を出す。
「んなぁ〜んっ…んふふっ…んなぁぁ〜〜っん……」
「え、鳴き始めたっ…!?」
ネモはワタシの頭のなでなでに夢中で、気づいてなさそうだった。
あとこれ、気づいたけど…「猫の求愛行動」だ。
本でなんとなく見た「発情期の猫」にもなる…。
ネモ、本当にワタシの事好きなんだ…可愛いかも。
ワタシは猫のような姿になったネモに、
頭を撫で続けた。
そうすると、ネモはワタシをギュッと抱き寄せて、そのままソファーへクルッと回って押し倒した。
あっ、これヤバイかも。
「えへへっ…マリアさんっ…♡」
「あっ、ネモっ、それ以上はっ…!!」
「僕、抑えきれませんっ…♡早くマリアさんとっ…♡」
「ネモっ!それはダメっ!よしよししてあげるから、やめよ?」
「……なんでですか?」
急にネモの目に光が無くなる。
こ、怖いって!で、でも、これは双子にも言っている。
「ワタシはそういうのをしたい訳じゃないの、ごめんね。」
「……分かりました、マリアさんがそう言うなら…
でもっ、そのっ、キスはしていいですか?」
「えっ、あっ……」
「さっきはしてくれましたもんね♡」
「あっ!待って!ネモっ!」
「嫌です♡♡」
ネモはワタシに覆い被さって、
その後……数時間ずっとキスされ続けた…………
気づけば夕方だった。
お昼のお菓子食べずにキスして終わった……っ!?
と、思っていると、ネモは嬉しそうにワタシにゴロゴロ言いながらスリスリしてくる。
満足したのかな?と思っていると、
ネモはワタシにもう一度、唇にキスをする。
またっ……って思っていると、
ネモは少し悲しげな表情をしていた。
「…マリアさんは、やっぱり双子さんの事が好きですか?」
「えっ?」
「……僕は、誰かの事を好きになれません。幼い頃から、誰かを好きになった事がなかったので……」
そうなんだ……と思っていると、ネモは話を続ける。
「だから、マリアさんは特別なんです。
けど、それ以上に依存してしまう可能性がある、と、思っています。
マリアさんは素敵な人です、だからこそ、幸せになってほしい……それが、僕じゃなくても。」
ネモはまた、ワタシにキスをする。
「んぅっ…ネモ?」
「………マリアさんは、僕と一緒に居たいですか?
それとも、双子さんと一緒に居たいですか?」
…まさかそんな選択をされるとは。
でも、それはすぐに決まった。
「ふふっ、そうだなぁ……ワタシは皆と仲良く一緒に居たいな。双子とも、ネモとも……一緒に居たい。だって、その方が楽しいよっ!」
「……僕とも一緒に居てくれるんですか?」
「うん!……大丈夫だよ、ネモ。
ワタシはネモから、離れたりしないから。」
信じてほしい、と思っていると、
ネモの一番近くの植木鉢に「赤いストック」が咲く。
それを見たネモは、
少し涙ぐみながら、嬉しそうにする。
「……ありがとうございます、マリアさん。」
ネモはワタシの手の甲にキスをする。
「僕は、幸せ者です。」
「こんな僕でも、マリアさんは「大丈夫」だと言ってくれました。」
「寂しい夜はもう、来る事はないんですね。」
ネモは暖かい表情で、嬉しそうに微笑む。
しかし、少し寂しげな目をしていた。
「…ネモ?」
「…………僕は今…「イベントを起こした悪戯者」です、もうきっと、仲間や人々は受け入れてくれないかもしれません…警察に自首、すべきですね。」
警察にっ…?でも、ネモは悪い事はしていない。
だって、ネモはただ「感情」がっ……!
「…でもっ、ネモは……っ!」
「僕は悪者です、だって、この世界にそぐわない存在ですから。」
そんな……事…っ
「……それはワタシもだよ、ネモ。」
ワタシはネモの手を握る。
「ネモ、ワタシね……見てほしい。」
ワタシは服を脱ぐと、人形の身体をネモに見せる。
ネモはその「身体」を見て、黙り込む。
「ワタシね、人形の身体なの…気づいた時から。」
「…………」
「この身体のせいで、いつも命を狙われてた…それでも、あったかく迎えてくれたのは、双子の楽と樂だったの。」
そうすると、ネモはワタシの身体に触れる。
「……綺麗ですね。」
「えっ?」
「マリアさんの身体、凄く綺麗です。」
「……楽と樂もよくそう言うよ。」
「でも、この身体…人間に似てますね。」
「え……っ?」
人間に、似ている?
「いえ、人形のわりには…質感というのが、人間に似ていたので。体温もありますし…あ、マリアさんって、過去の記憶は……?」
「ないよ、気づいた時には…なかった。」
「…………きっと、僕じゃ救えなかったんだろうな。」
「ネ、ネモっ?」
「いえ、なんでもありません。」
そう言うと、ネモはワタシの頬を撫でる。
「マリアさんはきっと、ひとりで頑張ったんですね。それをヒーローとして救えなかった、助けれなかったのは、とても悔しいですが……今、マリアさんが無事で良かったです。」
ネモはその頬を撫でる手を、下に撫で下ろす。
首元にスリッと、撫で、そのまま手は下に降りて、
ワタシの球関節の肩を優しく撫でる。
「……僕は、どちらにせよ、マリアさんを助ける事はできなかった、ですが…これからはマリアさんを幸せにできます。」
「それがどんなに幸せか、
今もこれからも噛み締めたいですね……」
「マリアさん…」
ネモはワタシにまた、
唇に触れるようなキスをする。
「正直、双子さんが羨ましいです、が、双子さんのような存在になれない事も理解してます。」
「…楽と樂?」
「はい、僕はずっと……
マリアさんに出会った時から、マリアさんの事を見ていた時……双子さんはマリアさんの事をよく見てました。
その分、何かを抱える目をしてました。
実際、近くに咲いた花は…「ヤブラン」という花で、花言葉は「隠された心」……でしたので、何かは隠しているような気がしてます。」
そっか…お姉さんも言ってたけど、
やっぱり双子はワタシに何かを隠してるんだなぁ…
そして、何かを背負っている…か。
双子は…楽と樂は何故、それを言わないのか?
ワタシには分からないけど…けど、それほど大切なのかもしれない。
「そっか…楽と樂は……」
「はい、ですが、その近くに別の花も咲いてました。それが「ワスレナグサ」で、花言葉は「真実の愛」です、きっと……マリアさんさんの事を愛しているんですね。」
「そ、そっかぁっ……!」
ワスレナグサ……聞いた事ないけど、
双子はそう思ってくれてるんだ……嬉しいなぁ。
「…………………………「私を忘れないで」という花言葉もありますが。」
「んっ?何?」
「いいえ、なんでもありません。」
よく聞こえなかったけど、多分大丈夫かな?
と、思っているとネモはニコッと笑って、立ち上がった。
「ふふっ、そろそろ夕飯のお菓子を食べますか?」
「あっ!うんっ!食べるっ!」
「じゃ、この前食べれなかった……あのお店のラングドシャを食べましょうか?」
前食べれなかったラングドシャ……って!?
「えっ!!あの高級店の……っ!?」
「はい、ストックしてあるので……良ければ。」
「あっ、えっ……じ、じゃ……食べますっ!」
「ふふっ、美味しいのできっとマリアさんも気に入ると思います。」
「た、楽しみデス……」
「ふふふっ…」
ネモは嬉しそうにワタシと一緒に部屋を出て、
リビングに向かい、お皿いっぱいのラングドシャを食べた。
味……は高級すぎて覚えてないっ!!
でも美味しかったなぁ…と思い、その後はネモと雑談をして、そろそろ寝る時間になったから、ネモと寝る事にした。
「すみません、狭いですか?」
「……いつもよりは狭くないかな。」
「ふふっ…そうですね、いつもはシングルベッドに三人ですもんね……」
「慣れちゃったワタシもワタシだけどね……」
と、言うとネモはクスクスっと笑う。
「ふふっ…ふふふっ…なら今は広々く寝てください。でも、僕がギュッて抱きしめるから…狭いかもですけど。」
「いいよ、ネモならそんなに身体大きくないしっ!」
「ありがとうございます、マリアさん。」
ネモはワタシをギュッと優しく抱きしめる。
わぁっ…ネモの匂い……安心するかも。
ふわっとした優しくて甘い匂い…
さっきのラングドシャの匂いがする、いい匂い…。
ネモ、寝たかな?と思って見ると……
「わっ!ネモっ!」
「ふふっ、マリアさんが寝るまで起きてますよ。」
「あっ、いやっ、ワタシ、寝るの遅いからっ…」
「ふふふっ、僕です。一緒に眠くなるまで、お話しますか?」
「あっ…うんっ!」
そうして、
ネモとワタシは夜通し、ずっとお話をした。
……あったかくて、優しくて、悲しいお話だった。
そして、朝は聞けなかった、
ネモの深い昔話を聞いて、お互いに眠りについた。
けど、それはまた…次の話で。
十四話へ続く。
十四話は10/27の月曜日に投稿します。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。




