幼馴染み
イニシエ王国国王直属警察兵団
イニシエ王国における警察のことであり、市民からは略して王兵と呼ばれている。
「事情聴取及び凶悪犯逮捕のご協力、感謝するであります! 」
敬礼の後に退散する王兵の女性とそれを眺める俺。
決して気があるとかそういうのでなく、単にぼーっとしてるのだというのもあるし、どこぞの誰かを見ているよりかはよっぽど目の保養になるというものもある。
ちなみにその誰かさんは、今まさに俺の右側で、何か言いたそうにうずうずしている。
「カグヤくううううううん!僕の活躍、見てくれたかなあああああああ?」
それが、どうだったかなという顔だろうか。
どっちかといえば、凄いだろうと自慢したげではないだろうか。
本日二度目にして二度目のうんざりした気分を味あわされているカグヤ。
「見てない」
地獄の扉を適当にあしらう。
まともに相手をすれば、引き込まれてしまう。
「いやいやいや見てたよね?みーてーたーよーね?わかるよ僕。だあああって君のこと見てたんだからっさああああああああ!」
「見てない。結界の白い線数えてた」
「……あのさカグヤくん。たまには素直に、見てました凄いですねって誉めてくれたっていいんじゃないかな?」
「嫌だね。お前にお褒めの言葉はまだ早すぎる。いろいろバラされたく無かったら、大人しく我慢してろ」
カグヤの言葉に、お喋りなユウリの口がピタリと止んだ。
初戦の相手をめちゃめちゃ弄んだ挙げ句、情報戦に利用していたという俺の予想は当たっていたようだ。
「やっぱり、君が魔王の儀に居なくて本当によかった」
ユウリはニヤついた顔を見せて、俺に言った。
その面を見て、なんとなくその言葉の真意を理解する。
が、一応天地がひっくり返るほどの奇跡を捨てずに、一応ユウリに聞いてみることにした。
「……それ、褒めてるの?」
「いいや。バカにしてるの」
「あっそう」
やっぱりそう言うわけだった。
ユウリが素直に褒めるわけがなかったのだ。
聞いて損したという風に、カグヤはまた女性のいた方を向く。
そうしてまた、なんでもない時を数分過ごした後だった。
「学校サボって娯楽散策……いいご身分じゃない。カグヤ・ゼロムーンくん」
背後から話しかけてくる何者かに、カグヤは一瞬狼狽える。
その声が聞き馴染みすぎて、振り替えるまでもなく誰だかわかったからだ。
しかし一応、そっと振り向いてみる。
そこには、なんだかご立腹な幼馴染みの姿があった。
その原因に心当たりのある俺は、その場から逃げるという選択肢をとらざるをえなかった。
「こ……公職お疲れ様でぇす……」
そう言いながら離脱を試みる。
普段ならば暴力のような怪力によって無理やり捕えられかねないが、幸い、ここには人の目がある。
業務中にそんな横暴はできまい。
が、それは過信である。
例え市民から絶対の信頼を寄せられている王兵であったとしても、彼女にそれは関係なし。
どうせカグヤを捕えるにはそうするしかないと知っているので、やむを得ずの暴力は仕方なしで割りきれるのだ。
ので、逃げ出そうとするカグヤの手首を掴んみ、幼馴染みはカグヤの離脱を拒絶し捕獲した。
「ひっどいカグヤくん。隣馴染みの私にまさかの他人のフリするなんて。悲しくて、悲しくて、流れる涙を止められなくて、そのまま心が枯れちゃいそう」
「何が枯れるだ。そんなのでこの腕の痛みが容認されてたまるか!」
「その痛み、自業自得以外のなんなのよ。三日間も逃げ回って……いったいどれだけ私を心配させたと思ってるの?」
「し……しるか!ていうか俺、三日前に一人にさせてくれって言ったじゃないか!」
「だったらせめていつも通り過ごしなさいよ!あなたが学校にいかずにこんなところに引きこもってるせいで、私の親まであなたのこと心配しちゃってるんだから!」
「……それは本当にごめんなさい」
「勝手に心配してほしくないなら、せめて心配されない生活しなさいな。それに、そんなに辛い悩みなら、ちょっとくらい私に分けなさいよ。私たちの仲じゃない」
「でも……」
幼馴染みとの会話を続ける最中、蚊帳の外なユウリは、じっと幼馴染みを見つめていた。
それに気がついたカグヤは、そのあまりに不気味な彼へ一言声をかけようとした……その時だった。
「そ……その美しすぎる銀髪!整いすぎた顔!肩に家紋が刺繍された特別製の王兵の制服!ま……まさか!まさかまさかのまさかのまさか!ああああの……ココココココ……コーリア・フォルストン様なんですかぁ!?」
「どうしたお前」
困惑するカグヤ。
「そうだけど」
と、普通に答えるコーリア。
その返事を聞いた途端、ちらつかせていたユウリの狂喜が乱舞する。
「うわあああああああ本物だああああああああああああ!うっひょおおおおおおおおおおどうしようどうしようそのご尊顔を生でこの目に納めちゃったあっはあああああああああ!よし!俺!一生この目洗わない!血とか入ってもそのままにするぞおおおお!」
「うわ気持ち悪」
「どうやら、あんたのお友達は私のファンみたいね」
「ふぁん?」
「ほら、私って最年少で王兵入りしたスーパー有名人じゃない。だからファンもいっぱいいるの」
「え……えぇ?」
カグヤ・ゼロムーンは困惑していた。
誰かのファンになったことがないというのはそうなのだが、しかしファンというだけで、あの性格が悪いだけのユウリをここまで……キャラ崩壊したキモいバケモノに変えてしまうものなのだろうか……と。
やはり困惑してしまう。
「そういえばフォルストン様とカグヤはどういったご関係なんです?」
突然、爆弾みたいな質問を投下するユウリ。
「うーんと、家が隣の幼馴染みかな」
それにコーリアは、やはり普通に答えてしまう。
「なんだそれ!羨ましすぎるだろおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ちょ……ちょっと落ち着け!なんかお前変だぞ!」
「なああああああにが落ち着けだ!コーリア・フォルストン様とお家が隣というだけですら嫉妬で狂いそうなのに、そのうえ幼馴染みでしただとおおおおおおおおおおお!?羨ましいぞ貴様ああああああああ羨ましいいいいいいいい羨ま羨ま羨ま羨まああああああああああああ!……ちょっと待て。待て待て待て待て待て待て待て!なんでお前コーリア・フォルストン様とおてて繋いでんだこの不届きなクズが!僕が彼女のファンであると知りながら、それでも未だ、見せつけるように続けるその余裕!仲良しアピールですかそうですか地獄に落ちろクソ野郎!ああむしゃくしゃイライラ募ってきちゃうよカグヤくん。どうしてくれるのかなカグヤくん!ぶん殴っても収まる気しないよカグヤくん!ああカグヤくんカグヤくんカグヤくんカグヤくんカス野郎のカグヤくん!かあああああああああぐうううううううやああああああああくうううううううんんんんんんん!」
「うわあ厄介度五割増し!」
目の前にいるのは知ってる誰かであるにも関わらず、知らない誰かと会話している気分を味わわされている。
不快である。
「……ええっと、お名前は?」
「ユウリ!ユウリ・ミスディンです!」
「そう、じゃあユウリ・ミスディンくん。私は彼に用があるから、何処かへ行ってくれないかな。今すぐ行ってくれるなら、特別にサインあげる」
「はい!行きます!どこへでも行きます!行きまああああす!」
「よく言えました。サインはもう服に書いといたから。ほら、さっさと行きなさい」
「ひゃあああああああっほおおおおおおう最強に特別なフォルストン様のサイン入りだああああああああああああ!家宝!家宝にしよう!かあさあああああああああああああん!今からお家かえるねえええええええええええ!」
気がついたら見えなくなっていたユウリ。
それを見送った後、カグヤはコーリアに聞いてみる。
「……お前のファンってまさかみんなあんな感じなのか?」
「悪い?」
「民度悪」
露見した脅威にさらされる未来を想像し、勝手に落ち込んだ。
高評価、応援、作者のモチベに繋がりますのでよろしくお願いします。
今回の後半分は近い内に出します。




