部外者 後編
そんなかっこいい名乗りを決めた瞬間、ユウリミスディンは爆散した。
「なにが善良ですか気持ち悪い。人をコケにするような人間が、善良なはずないでしょう」
ポーゼンは呆れていた。
自分の能力を見たあとで、あそこまで油断するとは……。
そう思うのには理由があった。
それは、乱入してくるタイミングがあまりにも良すぎたこと。
まるで知人への攻撃を防ぐために、結界を起動させたようだった。
となれば、彼はボーゼンの能力を見ているはずだ。
なら警戒しないはずがない。
なぜなら自分の能力は爆破であり、例え魔王具使いでも被弾すればダメージは避けられない。
はず……なのだが、あのユウリミスディンと名乗った男は警戒どころか名乗れと言われて律儀に名乗り隙を晒した。
彼はボーゼンをバカと呼んだが、どう考えてもバカなのはお前の方だろ。
そうしてボーゼンは呆れてしまったのだ。
「いいや善良さ。少なくとも君よりはね」
「なっ……なぜ!?」
なぜ生きている。そういうよりも先にユウリは語る。
「ほら見なよ。爆破に巻き込まれて、何人も怪我してる。幸い軽少なようだけど、それならつまり君の裁きとは無関係の人間ってことになるね。そこの丸焦げと比べたら、そんなの明らかだし。 まてよ? 彼らが無関係で、君の爆破で怪我しちゃったってということは……鬼ごっこに夢中で他人巻き込んじゃったってこと!? ばあああああかじゃああああああん!」
再び隙を晒したユウリを爆破する。
「おいおい、都合が悪いからってそりゃ無しだよ。それともなんだい、僕は悪くありませんって言いたいわけ?おかしいよねそれ。だって君が主張した正義という名の正当性は、君が自分で否定しちゃったんだからさ。それともどうするの?もう開き直って、彼ら全員悪者でしたって言いきっちゃう?それもいいね、独裁正義の完成だ」
生きているのに気づかれるやいなや、また爆破されるユウリ。
しかしやはり、またどこからか声がする。
そしてそちらに目をやれば、やはり彼は生きていた。
「いいね独裁正義マン。そうやって気に入らないもの全部壊して、理想の正義を作りなよ。そうしてできた善と悪を平気な顔して掲げられたなら、君は立派な化物だ」
「もう黙りなさい!私を愚弄するな!私は、私は正しい!正しいのです!それに巻き込んだのは私ではない。そうなるように逃げたのは、あのワールインではないですか!そうですそうなんですそうですよ!私は決して悪ではないのです!」
「……ここまでくると、煽り甲斐もなくなってくる。もういいや」
「なにを言ったところで?!」
突如、ボーゼンの頬に走る、激痛。
同時に伝わる、まるで素手で殴られたような衝撃。
それらに思わずよろけてしまう。
何が起こったか、理解できない。
顔を上げ、ユウリを視界の中に戻そうと必死に探す。
その姿を、先ほどとは反対側の遠くに捉える。
今の攻撃はなんなのだ。
そう考える間が訪れる前に、もう一撃、頬に同じ痛みと衝撃が走る。
この程度で倒れはしないと、踏ん張るボーゼン。
そこにまた、一撃。
背中に走る、蹴り飛ばされたような衝撃に、思わず倒れる。
理解が追い付かない。
這いつくばいながらも、再びあの魔王具使いを視界に捉えるために正面を向く。
しかし今度は間近にて、見下すように見下ろして、冷めた声で彼は言った。
「お似合いだよ。その格好」
思わず爆破させる。
だがその距離は近すぎて、自分自身を焼いてしまう。
転がり叫び醜態を晒すボーゼン。
その姿に、ユウリは再びため息をこぼす。
「君さあ、やる気あるのかな。このままじゃ僕に負けちゃうよ? そんなに強い能力もらっておいて、恥ずかしくないの?」
「うる……さいっ!私は……私は……正義です!清く正しくなんかない、それでも私は正義なんですよ!そうなると決めたからには、そう名乗り続ける他に無し!……そうですよ……この状況、丁度いいのでした。魔王具使い一人倒せぬようでは、ただの強者も名乗れない。私に箔をつけるため、私は……貴方を壊します!」
「威勢だけならもう黙れ。そうじゃないなら、どうするつもりかな?」
「この儀に向けて、予習は人よりしてきたつもりです。ですが、だからと言って理解できるかと言えばそうではない。そもそも、現在判明している能力が789種しかない時点で、すでに知識の網は破綻している。本当に求められているのは、相手を知識の網で捉えることでは決してなく、相手の能力をある程度予測し対策を立てること。そのための情報は、すでに持っています」
ポーゼンは話し続ける。
「私の能力はご存じ爆破。しかしそれは、視界に写る範囲限定……それも、適用されるのは爆破の瞬間。おかげで不可避の攻撃と化しているのですが、それではなぜ貴方は無傷なのでしょう。いくら魔王具使いと言えど、何度も爆破をもろに食らって無傷というのは、あまりに不自然極まりない。ダメージを無効化する能力……の可能性もありますが、そんな強力な能力が今の今までバレてませんはありえない。ここで仮定を変えてみます。ダメージが通っていないのではなく、そもそも当たっていないとか。……そうでした、そういえばありましたねそんな能力。君の世界に潜む影。≪自分の位置を誤認させる能力≫!そうと分かれば、対策は簡単。あなたのいるその位置以外を、徹底的に爆破すればいい!」
結界の中で起こる、絶え間ない爆破の連続。
見えない敵を追い込むために、見える次第を爆破する。
だがそれでも彼は死なない。
絶対安全な場所で、今だ彼を見下ろしていた。
それは空中、ボーゼンもさすがにそれに気がつく。
空を落ちる彼を見上げた頃、ユウリは既に攻撃を仕掛ける準備を終えていた。
「冷めた気持ちが暖かく考察ありがとう。けど、肝心なことを忘れてる。能力の詳細は能力者の自己申告や対戦した人体験談から成り立っている。確実じゃないんだ。だから、予習した789種の能力の情報が全て正しいとは限らない。つまりそれって、どういうことなんだろうね?」
「……まさか!」
「例えば、誤認させられるのは自分自身だけじゃない、とか。どうやって誤認させるかは自由自在とか。うまく使えば、こういうことができちゃうんだ。ほらほら、本物当てなきゃ死んじゃうぞおおおお!」
空から降る、火炎の雨。
一発一発に込められた魔力量からして、上級魔法であることは間違いない。
本物を判断する時間はない。
考えている間に落ちてくるからだ。
ならばとれる対策は一つ。
「殺られてたまるものですかあああああああ!」
宙に浮かぶ魔法を目にはいる限りの全て爆破する。
それでも今だ湧き続ける、本物混じりの偽物の群衆。
キリがないがどうにかできる。
その程度だとたかをくくったのが命運を分けた。
この瞬間、油断も隙も出来てしまった。
刈りたくてたまらないこの時を待ち続けていた彼は、エサに夢中で食いつく獲物の背後に現れた。
気がつかぬ間に、守ることすら間に合わぬ刹那に、ユウリの最大最高の一撃がボーゼンを殺す。
炎の上級魔法。
灼熱を内包した一撃。
燃え尽きるはずの彼の代わりを成すように、彼の魔王具が燃え尽きる。
無事に倒れるボーゼン。
ユウリの勝利を告げるように、結界が消滅した。
高評価、応援、作者のモチベに繋がりますのでよろしくお願いします。




