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部外者 前編

「ひいいいいいいいいい!だっ、誰か……お助けぇええええええええ!」


学ランの男、ワールインは逃げていた。

逃げなければならなかった。

逃げながら、数多のことを考える。

そして、自身が犯してきた罪を罪と初めて理解した。

彼は強かった。

少なくとも、魔王の儀が始まる前までは、あの追いかけてきている悪魔より強かった。

それは、魔王の儀が始まってからも変わらない、そんな幻想を現実だと思い込んでいた。

だから俺はまだ強者なのだと、信じ込んでいた。

だが弱者と強者は入れ替わり、ワールインは既に弱者の側だった。

それに気づかされた時、それは既に手遅れだった。


「悲鳴を上げて逃げないでください。それじゃあまるで、僕が悪者みたいじゃないですか」


悪魔は冷酷だ。

心ない薄ら笑いが、その印象を強めている。

そしてわかる。

その姿は、さっきまでのワールイン自身と重なって見えた。

だからわかる。

わかってしまう。

それがいかに傲慢で、身勝手で、最悪であるか、ワールインはついに理解したのだ。

目の前の男を悪魔と形容している自分も、既に悪魔になっていたのだ。

罪人という意識が頭に響く。

思考が制裁の裁きを求め始める。


……が、しかし。

殺されるとなれば話は別!

それも、あの雑魚にだけは絶対に殺されたくない!

そんな改心したのか疑うような思いが身体を動かし続けていた。

逃げきらなければ、はるか後方で死にかけている子分共の犠牲すら無駄になる!

クズはクズのままだった。

そしてそんなクズを追い込まんとする荒んだ鬼もまた、他人を巻き込むことを躊躇わないカスだった。


突如爆破した極楽街の屋根の破片が、ワールインの正面に積み上がる。


「ひいいいいいいいいいいいい!」


「鬼ごっこは終わりにしましょう、ワールイン。大人しく、私の裁きを受けてください」


「そ……そんな権利……お前にあるわけ……!」


「弱者を支配するのは強者だけの特権。それを教えてくれたのは君だというのに、忘れるなんて酷いじゃないですか。それとも今さら、間違っていましたなんて都合のいいこと言い出そうって訳じゃありませんよね?」


「……そっ!?」


意を消して言い出した一文字目。

二文字目へと繋げようとしてる間に、ワールインの視界が白く染まる。

かと思えば、瓦礫で埋もれたはずの向こう側へと体が吹き飛ぶ。

瓦礫の穴から見えた黒煙で、自分は爆破されたのだと知る。

そして視界に写る精一杯の自分の体を眺め、その惨状に悲鳴を上げる。

遅れた痛みに今さらにひたすら叫ぶ。


「弱者が強者に口答えしないでください。君はイエスとだけ言って、頷いていればそれでいいのです」


穴をくぐり、ワールインの方へ近づいていく悪魔。

一歩、一歩、一歩、一歩。

その音が、ワールインを苦しませる。


「あああっ……ああああっ……あああああ!」


もはや言葉にすらならない鳴き声で、ひたすらに命を乞う。

もう逃げられる意思は、ない。


「さて、悪を滅する裁きの時間です」


悪魔は狙いをすますように悪を覗き込んだ……瞬間だった。

突如降ってきた飛び蹴りが悪魔を襲う。

訳もわからぬまま、倒れる悪魔。

見上げた先で立ち塞がっていたのは、カグヤ・ゼロムーン。

悪魔は彼の名は知らない。

が、なんとなくムカついた。

だが、それで攻撃するのは正義に欠ける。

まずは問いかけよう。

そう、悪魔は考えた。


「……なぜですか……なぜ裁きの邪魔をしたのです!」


カグヤは答える。


「この先に、世話になってる店があるからだ」


「……は?」


悪魔……ボーゼン・アークレスは理解できなかった。

命を無駄に散らせたくなかった……理解ができる。

やりすぎだと制止をかけたかった……理解ができる。

そうやって、理解ができる理由を探し、彼の納得のできる理由と当てはまるものを探していく。

しかし理解できなかった。

やはり、理解できぬのだ。


「じゃあこっちからも、興味本位で質問いいかな。なんだよ裁きって……ただの人殺しに名前なんてつけるなよ」


「何を言ってるのでしょう。私の行為には、死刑と同等の意味があります。悪という世界の癌を切除するという大いなる意味がね」


「なら国に任せろって。だいたい、一個人にそんなことする権利はない」


「ありますよ。だって私は強者なんですから。強者には弱者を虐げる権利がある。言い換えれば、強者は弱者を支配できる。つまり私という強者には、弱者に紛れた悪共を裁く権利があるといえます」


「……絵に描いたような凡カスだな」


「……私も、また質問させていただきます。凡カスとは……なんでしょうか?」


「お前みたいな能力持ってるだけの平凡なカス野郎のことだ」


ボーゼンの力が動く。

瞬きする間にカグヤは爆発した。


「まさか……裁きを邪魔するだけに飽き足らず、魔王具も持たない分際でこの私を平凡と……さらにカスとまで愚弄していたとは……それは罪!罪ですよ罪!あなたはそこに転がっている悪と同じ、最悪の悪者です!」


黒煙の中で燃える影。

歪みをみせている正義のフィルターを通して、影を糾弾する。


「ほらな。やっぱり凡カスだ」


「な!?」


煙が晴れ現れたのは、火傷も傷も一つもなしに、ただにやけた面したカグヤだった。


「個人の裁量で正義がなんだって適当言いやがって。お前がそこに転がってるのとどういう関係かは知らないが、お前もコイツも同じ真っ黒ってことだけはよくわかる」


「貴様!冒涜もいい加減にしないと罰当てますよ!正義の罰を!」


「当ててみろよ凡カス。そしたらその愚かさに免じて、力の一端ってやつを見せびらかしてやるよ」


「冒涜をやめろおおおおおおおおお!」


再びの爆発。

しかし今度は、少しのか刷りもしなかった。

無論、ボーゼンがビビったわけでは決してない。

青い色した障壁が、カグヤとボーゼンとの間を隔絶したのだ。

それこそが結界。

魔王具使いが二人以上揃ったときのみ発動する、戦いの余波から市民を守る安全装置のようなもの。

ということは、ここに二人目の魔王具使いがきたことを意味する。


「魔王具もないのにでしゃばらないでよカグヤくん。それに、君に倒されてしまったら、僕のポイントにならないじゃないか」


結界の内側にいた男は、ボーゼンとカグヤの間に入るように姿を表す。

声を聞いた瞬間、そういえば居たなと思い出すカグヤ。


「君も裁きの邪魔するのですか……!無礼なやつめ、名を名乗れ!」


「それ、まず君が名乗るべきじゃ……って、まあいいか。僕の名前はユウリ・ミスディン。君みたいな勘違いバカとは違う、正真正銘の善良な魔王具使いさんさ」


余裕そうに浮かべるユウリのニヤリとした顔に、ポーゼンはイラッとした。

後半まだかけてません。ここと次回の間に入ります。前に書いてたやつは吹き飛びました。想定外の書き直し事態です。うぎゃああああああああああ、


高評価、応援、作者のモチベに繋がりますのでよろしくお願いします。

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