挫折
ガラスのコップを見つめている。
黒く染まった心を写す、鏡のようだと俺は言った。
だが、今こうして過ごしているのは、そんなロマンチストになるためではない。
今日という日を構成する24時間を、無駄に浪費するためだ。
啜られていくコーヒーのように、抵抗もせず減り続ける有限の海。
こんな無駄なことをする日が、今日まで三日も続いている。
こんな日々を過ごしてしまっているのは、魔王の儀に選ばれなかったからだ。
魔王の儀とは、かつて世界を支配していた邪神が最後にもたらした大儀式。
たった一つの願いと世界の支配者魔王の座をかけ、選ばれた1000人が最後の一人になるまで争う。
世界中が注目するこの戦いに、俺は選ばれなかったのだ。
生まれたときから最強だった。
そんな俺が、今はじめて強い挫折を味わっている。
しかもそれが、努力でどうにかなる問題ではないとなれば、こうなってしまうのは必然とも言えるだろう。
なぜ俺は選ばれなかったのだ。
儀式に選ばれる人間はランダムと言う説がある。
しかし、そうとは言いきれない。
最初に開催された時から今まで、強者と呼ばれる人物は軒並み選ばれているからだ。
故に、強者であれば無条件で選ばれ、残りをランダムに選ぶはずなのだ。
なのに……なのに!
なぜ……なぜ!
俺は最強だ!他の追随を許さぬほど絶対的に最強なのだ!
なのに……なんで選ばれなかったのだ!
……あれだ。
きっと、あれだ。
俺がいると無双してしまうので、儀式を面白くするためにあえて落選させたのだろう。
そうだ、それなら納得……できるか!
っと、落ち着くんだ俺。
何はともあれ選ばれなかったのは事実。
どうしようもないことは一刻も早く切り捨て、今までかまけていた将来というものを考えるのだ俺!
……いやこれ……無理……。
「おや……おやおや……おやおやおや? 誰かと思えば、カグヤ君じゃないですかぁ!学校サボってこーんなところで油売ってるなんて、何かあったんですかぁ?」
嫌なやつに見つかった。
彼の名前はユウリ・ミスディン。
魔法学校の同級生で性格が悪い。
一応、友人だ。
「あっれぇ。どうしちゃったのかなぁ?どうしちゃったのかなぁ?ああもしかして……魔王の儀に選ばれませんでしたってオチですかぁあああああああ?」
クラスメイトBだ。
「あれあれ残念でしたねぇ、残念でしたねぇ。魔王になって何するこうするとか言ってたのにこの様なんて、運がないんじゃないですかぁ? まあ、僕は選ばれちゃったんですけどねぇえええええええ!」
知らない人だ。
「ねぇねぇ黙ってないでこっち見てよ。ほらほら見てよ見て見て僕の魔王具見なよほらほら!」
「あのなユウリ。ここ、喫茶店なんだけど」
「? だからなんだい?」
「静かにしろっていってんだマナー違反。そもそもお前、何しにここに来たんだよ」
「別に、何しにって訳でもないさ。ただここに君がいたのが見えて、何してるのかなって気になっただけ。それじゃあ君も教えてくれよ。なんでこんなところにいるのかな?」
「……別にいいだろ。なんでも」
「等価交換って知ってるかい?」
「あいにく、下劣なストーカー発言と等価値になるほど大層な理由じゃないんだ。わかったら、さっさとどっか行け。嫌ならせめて客になれ。俺は帰る」
「もう帰るのかい?まだ12時を過ぎたばかりじゃないか」
「帰る!」
そのときだった。
大きな爆発音が、建物を揺らした。
極楽街で爆発音……恐らく人為的なものだろう。
魔王の儀の最中にそんなことをするのは、よっぽどの命知らずか。
あるいは……魔王具使い。
続くように音は何度も鳴り響き、その度にだんだんと大きくなっていく。
まるで誰かを追いかけているかのようだ。
「……凡カスめ」
追いかけられている誰かは、真っ直ぐ走って逃げている。
このまま行けば、店の前を通っていくだろう。
そうなってしまえば、流れ弾でこの店が物理的に潰れかねない。
机の上に飲み物一杯分の代金を置いたあと、店の外へ飛び出した。
置いてかれた誰かも、後を追いかけるように飛び出した。
大幅な書き換えを行っておりますが、大きな展開は変えないように頑張ってます。
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