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テロハント:特殊犯罪制圧部隊【10時30分or22時30分投稿!!】  作者: 鬼子
FILE_1:電子工学の街

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REPORT_1:軍学校

 大規模な同時多発テロから八年......

 

 【2044年】

 日本は新たな政策を打ち出した。

 それが......()()()()()()だった。


 八年前のクリスマス、日本は想定していなかった大打撃を受けることになる。

 作戦に投入された兵士は皆殉職し、帰らぬものとなった。

 

 国家はこの事実を重く受け止め、新たな政策を打ち出したが......それはすでに遅かった。

 少子高齢化......長年続いた出来事があだとなり、人員の補給ができなかったのだ。

 日本には年配ばかりだ。今から銃を持って走らせるなど到底酷な話だった。

 だが、そんな心配をよそに、足りなくなった人員をあざ笑うかのように、犯罪は増えるばかりだった。


 強盗、強姦、殺人......法は存在するが、裁き、対処しきれない数。それに全員を裂けないほど疲弊した警察と自衛隊......自警団が何度か作られては、犯罪組織に根絶やしにされる......を繰り返す一方で、住民は街中を簡単には出歩けなくなっていた。


 そんな中、白羽の矢が立ったのは......若い学生。

 よくある話だ......中学生から大学生までの、幅広い男女だった。

 あるものは物理学に精通し、あるものは電子工学に精通する。

 アスリートにも引けを取らない身体能力と、体力を有している。

 そんな人間を一か所に集め、日本国内でのみ扱える兵士として送り出す政策......それがテロ対策部隊だ。

 非人道的......という声が最初は上がっていたが、増えるばかりの犯罪に制御しきれなくなった国民は、いつからか賛成の意見を掲げるようになっていた。

 そうして日本......四十七都道府県すべてに、兵士を育成する学校が一つずつ作られた。


 物語はそこから二年後......


【2046年 栃木県 宇都宮市】


 大規模なテロから十年......

 

 それは宇都宮市の中でも、少し離れた山中に存在する。


 それは異様な広さを誇り、電子工学に精通している。

 世界中から集められた科学者と、一人の学生が知能を振るう。

 校庭に配置された兵器は犯罪を抑圧し、罪人を恐怖に陥れる。


 中学から大学まで一貫の国立の学校。

 特殊電子専門学校。

 物語は......この学校に入学した生徒から始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 廊下をコツコツと音を鳴らしながらリズムよく歩く。

 髪は綺麗な黒髪で、太陽の光で艶やかしく輝く。

 気品差を持つポニーテールで、髪留めはピンク......。

 胸はそこまで大きくはないが、服の上からでもしっかりとふくらみを視認できる。

 平均的な体系だが、歩き方は重心がしっかりとしていて力強さがある。

 綺麗な瞳は濁りなく世界を見通す、濡れた睫毛は綺麗に光り輝く。


 特殊電子専門学校一年

 山田 円


 銃器の扱い:経験なし

 兵器の扱い:経験なし

 殺人:経験なし

 身内、または親族の死亡:経験あり


 コツコツとローファーを鳴らしながら円が向かったのは、ある一室だ。


 長い廊下を歩く。


「狐に化かされたのかな?」


 円はそう話しながら視線を巡らせる。

 廊下に異常はない。

 角には変な端末があるが、校内のいたるところに設置されているのを発見しているため、さほど重要ではない。

 この場合は判断材料から抜いていい。


 呼び込み君のような形をした変な機械はおそらくだが......音をキャッチするものだろう。

 校内になぜ、そしてなぜ防犯カメラではなく音に関係するものを置くのかは不明だが・・・そこまで考え、円は思考を放棄した。


「歩いていれば見つかるでしょ」


 円はそう言いながら歩みを進め、窓から見える景色を眺めながらため息を漏らした。

 そう......円は集中していないと視野が極端に狭くなる。


「私が目指している部屋......どこにあるんだろう」


 直後、廊下の角から金属が動くような音がする。

 動作音、機械の音なのは間違えるはずがなかった。


「......なに」


 円は姿勢を低くして、腹に右手を置く。

 正確には腹部とスカートの間に挟んであるハンドガンを引き抜けるポジションを取っている。


 動作音は不気味に響き、足音のような音が一定のリズムで廊下を伝う。



 円は目の前の現実に向き合うため脳をフル回転させる。

 人間か?

 栃木県なら人間と機械工のハイブリットなんてものもおかしくはない.......なんといっても機械産業日本一だ。

 殺せるか?

 そもそも......なんで校内にそんな者がいるんだ?


 まだ姿が見えない何かに意識を向け、次の一手を考える。


 ガンッ ウィー


 動作音と共に姿を現したのは銀色の脚だった。


「足......は機械」


 円は小さく呟き、ハンドガンに手をかける。

 瞬間、陰になっている場所から青い二つの光が円を睨んだ。


「発見」


 それは突如話だし、全身を見せる。


 鋼鉄の体に、百七十センチはあるであろう動体。

 しなやかで柔らかい体に、鋭い爪と牙......

 これは......勝てない!!


 円はハンドガンから手を離し、踵を返す。

 正体は虎......


 それも、栃木県が作り出した軍用兵器、最新AIを搭載した攻防をともにこなす電子虎(ティグリス)だった。


「ひとまず......逃げ......」


 円は脚部に力を入れ、廊下を走り出す。

 

 廊下は滑る......機械でもそう簡単には追いつかないはず。

 だから......振り切れる......


「とでも思ってるのかい?」


 その声が廊下に響き、円は自身の左をみた。


「......へ?」


 その視界には先ほどまで後ろにいた電子虎(ティグリス)が並走していたのだ。

 気の抜けた声と共に、足が止まる。


「お嬢ちゃん、俺様の姿を見るなり走り出すたぁ.....ちと酷いんじゃねぇか?」


「ごめんなさい、あなたを見慣れないもので」


 低い男の声で話す電子虎(ティグリス)をしっかりと視界に収めたまま、円はゆっくり距離を取る。

 噛まれたら......爪の斬撃は......致命傷じゃすまない。


 距離は十メートル。

 この距離なら外さない。


 円はハンドガンを抜き取り、電子虎(ティグリス)に銃口を向ける。


 その光景を見た電子虎(ティグリス)は感動と共に忠告をした。


「この場所、状況で銃を抜けるのは素晴らしいが、間違っても引き金は引くんじゃねぇぞ......」


 低い声の忠告は、恐怖を掻き立て、足をすくませる。

 

「俺の体は......」


 パァン


 電子虎(ティグリス)の話を遮るように放たれた銃声と弾丸は見事に命中。

 そして弾が跳ね返り窓ガラスを突き破った。


「......うんん、俺の体は鋼鉄だ、並みの弾丸じゃ跳ね返す......そして跳弾してガラスを......これは俺様はまたおやつ抜きかな」


 そう言いながら電子虎(ティグリス)は窓ガラスに空いた穴を見てうなだれる。

 まるで人間のようにため息を漏らし、鋼鉄の尻尾が垂れさがっている。


「おやつ抜きになったら、お嬢ちゃん......アンタのせいだからな。俺様は悪くないって、しっかりと証言してくれよ」


 電子虎(ティグリス)はそう言って踵を返した。


「......私を殺すんじゃないの?」


「そんな命令は受けてない、ただ部屋に案内しろって言われただけだ。ついてこい」


 そう言って動作音を響かせながら電子虎(ティグリス)は歩き出す。


 円はその後ろ姿を見て申し訳ないと思い、銃をスカートに差し込み、後を追った。


「なぁお嬢ちゃん」


「......何?」


「女ってのは、人の話を聞かない生き物なのか?」


「そんなことはないけど......すくなくとも貴方の姿を見たら話は聞かないかも」


 そう話すと、電子虎(ティグリス)は尻尾をまたに挟むかの如くわかりやすく落ち込んでいた。

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