2025/08/20[結衣とiPhone]③
「今あるものをランクアップさせるっていうのはさ、わらしべ長者と同じなんだけど、物々交換ではなかなか難しいんだよね、なんでかわかる?」
店長さんがのんびりと話してくれる。
今あるもの、わたしのiPhone7。
ランクアップさせたいもの、iPhoneのXとか、11とか……。
それを物々交換するには……、うん。
「わたしに手放せるものがないからですか?」
「そうなの?」
どこかで、時計の音がなっている。カチカチという音と、ポーンという音。
「まあなんていうか、iPhone11とか、12、13を持ってる人が、直接iPhone7が欲しいってなることは珍しいよね。だってそれよりいいものがあるわけだから。ということは、結衣さんはiPhone以外の、iPhone11くらいに見合うものを手に入れないといけない。でもそれだと買ったほうが早いかもしれないよ?」
……、たしかに。
iPhone7からデータ移行したいから、このiPhoneは交換に出せない。かといって、他に高価なものというと……。
わたしは、店長さんの顔をちらりとみた。
白い肌、優しそうな瞳。
「わたしには無理そうですね……」
「いまは、ね。個人的には夏休みだからこどもらしい方法で頑張ってみたらどうかな? お手伝いとか、遠方の祖父母にお願いしてみるとかね」
お手伝い。
お金をためたり、お母さんやお父さんのご機嫌を取る……。
「うん、はい! がんばってみます!」
わたしは長々と話を聞いてくれた店長さんにお礼を言って店を出た。