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2025/07/04[先生とわたしと星]

 今日は人工衛星が見られるかもしれない、そうわたしは先生に連れられて標高の高い澄んだ森に来ていた。

いわゆるキャンプである。

 確かに空気が澄んでいる気もするし、心なしか体の調子もいいような気がした。

しかし、見上げれば曇天。

とても夜までに晴れるとは思えない。

人工衛星は雲の上を飛んでいるのだから当然見えない、それでも先生は楽しそうにお湯を沸かしてインスタントコーヒーを作ってくつろいでいる。

 だんだん日が暮れて、手元のランプとスマホの明かりでしか手元が見えなくなった頃、先生が呟いた。

「やっぱり見えなかったね」

 特になんの意思もなさそうに呟く。

シルバーのフレームがライトに当たって鈍く光った。

先生が眼鏡を外した。

 人間なんてちっぽけだねとわたしに笑う。

その顔はいつもより幼く見えた。

「先生、なんでこんな山奥まできたんです? 今日はずっと曇りで、人工衛星は見えないだろうってニュースで言っていたのに」

 顎に手を当てて、先生は考えていた。

わたしはポーションと砂糖を入れたカフェオレを一口飲む。夏だけど山だからか涼しくて、温かいコーヒーがとても美味しい。

先生の考える、が、考えるフリに変わったのを察してわたしは言う。

「先生?」

「まあ、特に意味なんてなかったんだよね。ただ、今日は少しドライブしたかっただけで」

 簡易的な折りたたみ椅子の近くには先生のプリウスが停められている。

「どうして……」

「どうして素直にドライブに誘わないのかって顔してるね」

 先生は一口コーヒーを飲み下し、外していた眼鏡を掛けた。いつもの理知的な先生の顔が微かに赤く見える。

「まあ、そんなもんなんだよ。少し年上ってのは」

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