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7、オイルマスターの戦い方

閲覧感謝です!


 渋る受付嬢達を俺は半ば強引に表へと連れ出した。


「何するつもり?」


「ちょっと見せたいものがあるんです。これならどうかと思って」


 俺はバッグからギガントラビットを取り出してこれ見よがしに見せつける。


「え、、、」


「やっぱデカいなー。場所を外に変えて正解だった」


「えぇーーーーーーっ!!!」


 驚いてる驚いてる。この顔が見たかったんだ。俺が初めてコイツを見た時よりいいリアクションしてるぞ。


「これなら認めて貰えます?」


「ギ、ギ、ギカントラビット……なんでこんな奴が!?」


「え…」


 なんか周りの様子がちょっと変だ。驚いてるってよりは引いてる?


「なんでこんな所にギカントラビットがいるんだ!!」

「ギカントラビットって確か脅威度は一体でAランク越えだったよな…」

「しかもこのデカさだ。俺の知るギカントラビットはもっと小さかったぞ!」

「おい、このギカントラビットをよく見ろ。何か変じゃないか?」


 何だ、何か変なのか。もしかして俺なんかやっちゃった?……


「あっ!!」

「本当だ!このギカントラビット角が2本あるぞ!!」

「普通は一本だよな。だけどコイツは2本もある。何でだ!?」

「まさか特殊個体か!?」


 特殊個体?そういえばあの時、パラレルモンスターを倒したってなんか表示されてたっけ。

 やっぱりコイツレアモンスターだったのか。


「特殊個体モンスターは通常の脅威度より一つ上と考えられてる」

「ってことはコイツの脅威度は……」

「Sランクだな」


「「「えええぇーーーーー!?!?」」」


 まさかのモンスターの登場に完全に呆気に取られてしまっている周囲や受付嬢達。


「どうしてこんなオッサンが……Sランクモンスターなんかを……」


「面と向かってこんな奴ってちょっと傷つくぞ……」


「本当にコレもアナタが倒したんですか?」


「だからそうだって言ってるじゃないですか」


「だったらどうやって倒したって言うのよ!?」


「え、ですから、得意な油を使って」


「それが信じられないって言ってるのよ!!」


 信じられないって言われても信じて貰わなきゃ困る。俺にはそれしか取り柄がないんだから。


「おいオッサン!さっきからふざけたことばっか抜かしてんじゃねぇぞ!!」

「お前みたいなオッサンの戯言誰も信じるわけがねぇだろうが!!」

「そんなに強いって言うなら俺達が相手になってやるよ!」


 この既視感。思い出した。コイツら冒険者っていうよりただのゴロツキとチンピラの集まりだ!これって異世界あるあるだよな。

 それならこっちも都合がいい。チンピラらしく利用させてもらおうか。


「なら来いよ」


 俺は強気に奴らを挑発する。


「あぁ?オッサン本気か?」

「俺達に敵うとでもおもってんのかー!」

「一人で俺達三人に勝てるわけないだろうが!やっちまえ!!」


 確かに数はあっちの方が多い。だけどこれよりもっと多い数相手に一人で戦ったんだ。もはやこの程度でビビるわけが無い。それにあの経験のおかげか不思議とコイツらの事が怖く思えない。


 日本にいた頃はこういう人とは関わらないようにって生きてたのに、今からじゃこっちから喧嘩が売れるんだもんな。


 異世界って不思議だ。


「来れるもんなら来てみやがれ」


 三人が一斉に俺目掛けて飛びかかってくる。


「えいっ」


 俺は冷静に奴らが歩く道に油を噴射する。


「バカか。当たってねぇぞ!」

「当たった所で意味はないけどな!」

「このままやっちまえ!!」


「「「あっ」」」


 息を合わせたように全員が油に足を取られすっ転んでしまう。


「どうした?やっちまうんじゃないのか?」


 俺は彼らを上から見下ろし更に挑発する。


「くそッ……」

「この程度で勝った気になるなよ」

「そうだ!俺達がお前なんかに、うわっ!」


 立ちあがろうと必死に足掻くが油に足を取られてばかりで上手く立ち上がる事が出来ない。


「足が滑って、立ち上がれない…!」

「オッサンらしいしょうもないマネしやがって、うわぁ!」

「……舐めてんじゃ、ねぇぞ!!」


 一人が仲間を使って何とか立ち上がる。


「やっちまえリーダー!」

「俺達の分まで頼んだぞ!」


「ああ。任せとけ」


 仲間の期待を背負って戦う事を決めた男は地面に落ちた武器を拾おうとする。


「あれ?……なんだ。どうなってんだ…!」


「リーダーどうした?」


「武器が、全然掴めねぇ…」


「なっ、何やってんだ!ちゃんと握れよ!!」


「やってるよ!だけど、油で滑って、力が、あ、あっ、あーーー」


 油まみれになった剣は油まみれの手によってさらにヌメヌメに。まるでウナギのようにヌルヌルと手から逃げていく。


「さてと、そろそろ終わらせますか」


 チンピラの対処法はだいたい決まってる。相手が自分達より強いって思い知らせてやればいいんだ。


「これで分かったろ。油ってのは武器になるって」


「くそったれが……」


「負けを認めてくれるならこれ以上は何もしない。どうする?」


「そんなの決まってる。認める訳ねぇだろうが!!」


「だよな。そうだと思ってた…だからこっちも鬼になる事にするよ」


「あぁ?バカにすんなっ!これ以上お前に何が出来るって言ってんだ!」


「いいか?油ってのはな無限の可能性を秘めてんだよ」


「はぁ!?」


 俺は油の温度を心で念じ180℃まで一気に上げる。


 〈噴射する油の温度が180℃に設定されました〉


「身をもって思い知ったろ?油は簡単にお前達の動きを止める事もできる。そして油一つあれば簡単にお前達を苦しめることも、」


 リーダーと呼ばれる男の手に熱された少量の油を吹きかける。


「ぐぁぁっ!!」


「その気になれば殺すことだって出来る」


「リーダー!」

「テメェ何しやがった!」


「見てたろ?油をかけただけだよ。ただし熱した油をな」


「手が、手がぁぁ……」


 熱された油を吹きかけられた事で男の手は真っ赤に爛れてしまっている。


「これで分かったか。油ってのは最強なんだよ。二度と忘れないよう肝に銘じとけ」


「お前ぇ……」


「あんまりおっさんと油を舐めてるとな、衣つけてサクサクに揚げちまうぞ!」


 奴らの耳元で精一杯ドスの効いた声で奴らを威嚇し、発火点まで温度を上げた火のついた油を吹き出した事で完全に戦意を消失させる。


「「「ひいっ!!」」」


 男達は油で足を滑らせながら一目散に逃げていく。


「急いで冷やしておけ。適切に処置をすれば傷跡もそこまで残らない筈だ!」


 って聞いてないか……。


「何はともあれ、これで俺の実力認めていただけますよね?」


「そ、それは…」


「勿論認めますとも。私の権限でね」


 まさかの結果に完全に戸惑っている受付嬢を制するように声が聞こえる。


「誰?」


「ギルドマスター!!」


 金髪ロングでメガネ姿の長身女性。パッと見た所男にも見えるし女と言われれば女にも見える中性的な顔立ちだ。

 だけどギルドマスターってことは冒険者ギルドの1番偉い人ってことだよな。

 申し訳無いけどそんな風にはちょっと見えない。ギルドマスターってもっと力持ちとか強面なイメージがあったから。


「あの、」


「えらく派手にやってくれましたね」


 怒ってるよ…。

 そりゃそうだよな。ギルドの前でこんな騒動起こしたんだ。

 だけどちゃんと説明すれば分かって貰える筈だ。


「いや、あの、これには訳がありまして」


「でしょうね。見たら分かります。大方貴方の能力を信じられないウチの受付嬢やゴロツキ達が貴方に絡んだ。そんなところでしょうね」


 凄い。全部当たってる。何て察しの良さだ。


「それにしても驚きですよ。まさか油にあんな使い方があるなんて。馬鹿と鋏は使いようなんてよく言いますけどまさにこの事ですね。どんな物でも考え方一つで強力な武器に変えてしまうんですから」


「それ。日本と同じ言葉がこの世界にもあるんですね」


「ニホン?」


「いや、それと同じ言葉を他の場所で聞いたことがあって…」


「それはそうでしょう。この言葉はこの街で古から伝わる格言なんです。言葉は人を伝って国境を超えるもの。ですから知っていても不思議はありません」


「そうですか…」


 日本の言葉が古くから伝わってるって偶然か?


「それにこのギカントラビットにも大変驚きました。しかも2本角の特殊個体。私もこの世界そこそこ長く生きてますけどこんなのは初めて見ましたよ」


「やっぱ珍しいんですねコイツ」


「ええ。言葉の通り特殊個体は通常の個体が変異したものです。当然変異した分、通常よりも凶暴ですから簡単に倒せるもんじゃない。だから貴重なんです。この素材も、それを倒せる人材もね」


 ギルドマスターは腰を抜かしている受付嬢の元に近づく。


「……マスター。あの、これはですね、」


「エミリア。私何度も言ってますよね。人を見た目や能力だけで判断するなと。お忘れですか?」


「いえ、覚えてます……」


 口調こそ優しいが、言い方は優しくない。笑顔で怒ってる人ほど怖いものはない。


「でしたら何でこんな事になったんでしょうか?貴方がちゃんと対応をしていたらこんな騒ぎにはきっとなってなかった」


「はい……」


「本当に反省してます?」


「大変申し訳ございませんでしたーー!!」


「謝る相手間違ってますよ」


「は、ハイィ!!」


 彼女は慌てて俺の元に駆け寄ったや否や直ぐに土下座して謝罪する。


「ユウジロウ様!今回は大変申し訳ございませんでした!!」


「あのちょっと、」


 さっきまで俺にタメ口を使っていた人とは思えない豹変ぷりだ。

 だけど土下座って異世界でも共通なんだなー。ってそんなこと言ってる場合か。俺は別にこんな事を望んでるわけじゃない。


「ギルドマスターとして私からも謝罪させていただきます」


 いきなり上司まで頭下げるとか、これじゃ俺は厄介なクレーマーだ。見てよ。周りのこの空気。完全に俺の見る目ヤバい奴を見る目だよ!


「あの分かりましたから早く頭上げてください!こっちは別にそこまで怒っていませんから!ちょっと俺もやり過ぎましたし、ですから、ね?」


「それはそうですね。確かに貴方もちょっとやり過ぎた」


「え?」


 あれ、なんか急に空気が変わったんですけど……。


「こちらの対応にに非があったとはいえ貴方にも多少の責任はある。それは果たしてもらわないといけませんね」


「あの、どういうことでしょうか?…」


「一度私の部屋まできて貰えます?色々と話さなきゃならない事がありそうなので」


「あーー、えっと、ハイ…」


 本当に強い人が怒っている時ってのはドスの効いた声は必要無いらしい。

 俺、生きて帰れるかなぁ……。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


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