62、最・恐・襲・来
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突然辺りの光が遮られ周囲が陰に包まれる。
その瞬間言葉にもできない嫌悪感、そして恐怖その全てが鳥肌となって俺の体を震わせる。
「なっ、、」
違和感を感じて振り返った時には遅かった。
真っ黒に燃えさかる炎の渦が大勢の冒険者達を包んでいたのだ。
「ッ!!」
バンドルフはすぐさま大斧で地面を削り取り一本の境界線を作る。
「これ以上前に来るんじゃねぇぞ!!」
「え?」
数少ない生き残った冒険者達が戸惑っていると、どこからか漆黒の火球が飛んでくる。
漆黒の火球は結界の様な役割を果たした境界線を越える事は出来ず弾き飛ばされた。
「これは……」
「バンドルフさん一体何が起こってるんです!?」
「邪魔だ。直ぐに消えろ!」
兄貴のように優しく時には厳しく冒険者達に接していたバンドルフが態度を一変させる。
俺やローゼスも最初は意味が分からなかったがそれを直ぐに理解する事となる。
俺の手をぎゅっと握ったまま離さないユグ。そしてアカは空を見上げ何かを知らせるように吠え続けているのだ。
目線を上にして見えたのは広がる空の景色ではなく、空を覆い隠すほど大きな真っ黒な腹。
更に目線を移すと見えてくるのは巨大な羽根に先が見えない長さの尻尾。
「あれってまさか……」
「ウソだろ……」
やがて大きな体は動き出しその正体を表した。
獲物を狙い定める鋭い目つきに何もかもを喰らい尽くせるような大きな口。
頭には捻じ曲がった二本の角が伸びている。
こんな生物を俺は初めて見る。
その筈なのにその正体を俺は知っていて気づいた時にはその名を口にしていた。
「ドラゴン」
「ギャオオオオオオ!!!!」
鼓膜が破れそうになるほど大きな雄叫びが響き渡る。
「……あれドラゴンですわよね!?」
「じゃなきゃなんなんだ!リザードかワイバーンか、どっちも違うだろうが!」
「でもどうしてドラゴンが?気配察知には全く引っかからなかったのに」
「引っかからなかったんじゃなくて引っかけられなかったんだ。しかもスタンピードも全部ドラゴンのせいだって言うなら全てが納得できちまう」
「まさか最近異常発生してる特殊個体の原因もドラゴンの仕業ですの!?」
「かもな。ドラゴン相手に今までの常識は無意味だってことだ」
バンドルフの言う通り確証は無い。だがこの状態そう考えるのが自然だろう。日本にいた頃漫画やアニメで鍛えた俺の勘が「ドラゴンの仕業だ」そう言ってる。
恐らく今回のスタンピードもドラゴンの影響で間違い無いだろう。モンスターの群れは例えばこれから来るドラゴンの脅威に逸早く気づいて逃げようとしてた、とか?
それならモンスター達が必死になる理由も頷けるしな。
「ギャオオオオオオ!!」
再び響き渡るドラゴンの咆哮。音の振動がビリビリと体に伝わるだけで体のあちこちが痛くなってる気がする。
「全員撤退!…と言いたい所だが逃しちゃくんねぇか……」
「奴の姿を見たのが最後。私達にはそんな選択肢最初からありませんわ」
ローゼス達二人は覚悟を決め武器を構える。
「だったら俺達も!」
「そうだ!いくらSランクだからってこんな強敵アンタ達二人だけに押し付けられるかよ」
「そうよ。私達だって援護くらいならできる」
「帰るぞお前達」
ローゼス達と共にドラゴンに勝負を挑もうと境界線を越えようとする数人の冒険者達をリーダー風の男がそれを止める。
「どうしてですかアニキ!?俺達もやらなきゃ!」
「そうですよ。ここでやらなきゃ冒険者になった意味が無い!」
「私達だって彼ら同様覚悟はできてます!」
「…邪魔だって言われたろ」
男は彼らに冷たく言い放つ。だとしても諦められない冒険者たちは強引に境界線を越えようとすると、男は彼らに剣を突きつける。
「だからってこのまま逃げるだなんて、」
「勘違いすんな!…俺達のやるべき事は無駄死にすることでも足手纏いになる事でもない。バンドルフ達の意思を受け継ぎ、生きてこの危機を街の人々に一刻も早く知らせる事だ!」
「アニキ……」
男は剣をしまい驚いて尻餅をついた冒険者を引き起こすと、真剣な面持ちでこちらを見つめる
「バンドルフ。それでいいよな?……」
「ああ。お前がいて助かったよデミス」
「すまない……俺のこと恨んでもいいからな……」
「へっ、恨むかよ。後は頼んだぜ」
デミスと呼ばれた男はバンドルフと知り合いらしく、目頭には涙を浮かべ必死に堪える姿が俺の目には印象的に残った。
まるでこれから先に何が起こるかを知っているみたいに思えて。
「行くぞお前達。全速力で街に向かう。死ぬ気で生きて必ず辿り着くぞ!後ろは決して振り返るな!!」
「「「…ハイ!!!」」」
そして、デミス率いる生き残った冒険者達は迷う様子も見せず街へと向かった。
「ユウジロウ、アナタも彼らと一緒に」
「嫌だね」
「…まだ何かとは言ってませんけど?」
そんなローゼス達の姿に俺も自然と覚悟が決まっていた。
「俺は残るぞ。何が出来るか分からないけど、俺は最後までこの戦いを見届ける。命を賭けてでもな!」
「……ユウジロウらしいですわね。本当にいいのですね。この先もう後戻りはできませんわよ?」
「俺だって冒険者だ。覚悟は出来た!」
俺はその覚悟を示すように追加で用意しておいた竜田揚げ棒を二人に手渡す。
「二人とも!この竜田揚げみたいに本物の竜も食っちまえ!」
「ふふっ。それいいですわね!」
ユウジロウの想いも背負い改めて竜田揚げを口にして気合を入れる。
「さてと、後はぶつかりに行くだけだな」
「いつでもどうぞ。私は準備できてますわ」
武器を構えてウォーミングアップがてらに小刻みに体を動かすローゼス。
「じゃあ前振りは終わりだな…行くぞ!」
「ええ!」
バンドルフの合図で二人は一気にドラゴン目掛けて駆け出した。
「アカ、ユグ!お前達も協力してくれるか?2人のサポートをお願いしたいんだ。頼む!」
頭を下げる俺の頭を大きな舌でベロっと舐めるとアカは俺を見て深く頷いた。
「ユウジロウがやるっていうならユグもやるよ!ユグ頑張る!!」
ユグも俺の手をギュッと握り返す。
「ありがとなユグ、アカ」
「うん!」
「ガウ!」
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