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油っぽいオッサンは世界最強!?〜揚げ物は異世界を支配できるって知ってました?  作者: 春風邪 日陰
第四章 最恐VS最狂〜この世でもっともクレイジーなアイツの倒し方
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57、ランディルスの花畑

閲覧感謝です!


 俺はランディルスの花を求めてアヴェントゥーラの街を抜けた先にある大森林を片っ端から散策していた。


「見つかんねぇなランディルスの花……」


 依頼書と一緒に渡された図鑑を参考に探しているのだが一向にそれらしき物は見当たらない。


 ローゼスが言っていた通り、この辺のランディルスの花は全て狩り尽くされてしまっているのかもしれないな。やはりもう少し奥の方行かなきゃダメみたいだ。


「ねぇユウジロウ」


「どうしたユグ。見つけたか?」


「ううん。この近くにはないよ」


「だよな〜。もうちょっと奥へ行くか」


「そっち行ってもないよ。あっち行かなきゃ!」


 ユグは俺が進もうとしてる方向とは逆方向を指差す。


「いやあっちは街に面してる。きっとここと同じだよ」


「ううん。あっちならまだ見つかってない場所があるんだってば!」


「でもどうしてそんなの分かるんだ?…」


「ユウジロウ〜私のこと忘れたの〜?」


「え、」


「私は自然を司る大精霊だよ。私が植物のことで分からないわけがないじゃん!」


「言われてみれば……」


 ユグの正論過ぎる正論に俺は面食らった。


 どうしてこんな大事な事を俺は忘れていたんだ。この数日間で余りにもユグと一緒にいるのが当たり前になり過ぎていて大精霊だと忘れてしまっていた。


「そっか。最初からユグに聞けば良かったんだ」


「そうだよ!もっと私のこと頼ってよユウジロウ!」


「ごめん。そうだよな、ありがとうユグ」


「いいよ!じゃあこっち!こっちだよー!」


「分かったから焦るなって、」


 ユグは俺の手を引っ張っりながらランディルスの花のもとまで案内していく。


 ◇◇◇◇◇◇


「着いたよ!!」


「なんじゃここ……」


 ユグに連れられて約十分。街からそう遠くは離れていない。

 着いた場所はこの世のものとは思えない程一面ランディルスの花で埋め尽くされたお花畑だった。


「群生地がこんな所にあるなんて。よく今まで見つからなかったな」


「ここは人から近い分逆に見つかりづらいんだよ。それにランディルスの花は人気の無い場所より人気の近い場所の方が育ちやすい性質があるの!」 


「そんな性質が…依頼書や図鑑にはそんなこと書いてなかったぞ」


「でも教えちゃだめだよ。これはユグとユウジロウだけの秘密!」


 ユグはいつもと少し違う真剣な顔で俺の手を握る。


 そんなユグの顔もやっぱりかわいい。


「それはいいけど、でもどうして?」 


「どうしても!ここまで見つかっちゃったら二度とランディルスの花が育たなくなっちゃうかも」


「あ…」


「ここはランディルスの花が自分達で見つけた安息地なんだよ」


 要するに冒険者達が街の近くに咲いていたランディルスの花を取りすぎたせいでこの花は絶滅の危機にあるってことか。


「……分かった。だったら取るのはやめよう」


「いいの?」


 そうなれば依頼は失敗、俺はあの壁の中で何をされるかは分かったもんじゃないけどこの事を知ったからにはな、見て見ぬふりは俺の性に合わない。


「さぁ気が変わらないうちに帰るぞ。色々と覚悟もしなきゃだしな…」


 すると、帰ろうとした俺達を踏み止まらせるように花畑がキラキラと輝きだす。


「なんだ?」


 ユグはランディルスの花と会話を交わす。


「ほんとに?…ランディルスの花がユウジロウなら取っていいって!」


 しれっと花と話してるみたいだけどやっぱり大精霊って凄い。


「え、でもどうして?」 


「ユウジロウならいいって!認めてくれたんだよ!」


 ユグに共鳴するように花がひらひらと揺れながらキラキラと輝きを放つ。


「本当にいいのか?」


「うん。でもユウジロウだからって取りすぎちゃ、めっだからね!」


「分かってるよ。必要な分だけにする」


「後はちゃんと花達にお礼を言うこと。植物だってちゃんと生きてるんだから」


 見た目は幼いが言うことはちゃんと自然を司る大精霊。そんな大精霊に認められた俺は本当に運がいいよ。


「ありがとうランディルス。大事に使わせてもらうよ」


 こんなに綺麗に輝く花畑に認められた俺はもっと運がいいのかもしれない。

 そうして俺は必要な分だけを採取して改めて花畑に感謝を告げた。


「ユウジロウならまた来ていいって」


「必ず来るよ。でもそれは依頼じゃない時にしようか」


「そうだね!」


 その時だった。向こうの茂みからガサガサと怪しげな物音が聞こえた。


「なんだ!?もしかして冒険者か!?」


 だとしたらなんとしてでもここを守らないと!


「大丈夫。この気配は人じゃないよ」


「そうか?じゃあ一体……」


 警戒しながら様子を見守っていると茂みの中から出てきたのは小さな犬、いやオオカミのようだった。


「モンスター?…」 


「ううん。この気配、あの子フェンリルかも」


「フェンリル!?だけどあれは……」


 フェンリルといえば白や黒の毛並みが似合う異世界系の漫画や小説でもお馴染みの幻獣だ。

 でも何故かコイツの毛並みは白でも黒でもない。異様なほど真っ赤なのだ。


「ユグ。この世界のフェンリルってあんな色なのか?」


「フェンリル自体珍しいけど普通は白だよ。まれに黒いフェンリルも産まれてくるけど赤いフェンリルなんて私も見たことないよ!」


「グルルルゥ……」


「考えるのは後だ。今はやるしかないか…」


 見た感じ子供みたいだけど相手はフェンリルだ。油断したらヤバい。そんな気がする。


「ユウジロウ」


「やるぞ」


「え、違うよユウジロウ!」


 覚悟を決め油を噴射しようとする俺をユグが慌てて止める。


「え?でもアイツ唸って俺達を威嚇しただろ。やらなきゃ花畑も守れない」


「だから違うってば!」


「何がだ?」


「あれは唸ったんじゃない。お腹の音だよ!」


「は?……」


 え、おなかのおと?


 なんかこんなこと前もあったような….

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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