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油っぽいオッサンは世界最強!?〜揚げ物は異世界を支配できるって知ってました?  作者: 春風邪 日陰
第四章 最恐VS最狂〜この世でもっともクレイジーなアイツの倒し方
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54、ファーストフードと魔法の才能

閲覧感謝です!


「ふふ〜ん。カラアゲ、トンカツ、タツタアゲ、それテンプラもありますわね〜。今日はどれにしましょう〜?」


鼻歌まじりに揚げ物の名前を口ずさみながら陽気なテンションでローゼスはユウジロウの店へ向かう。


「あれ?店に列がができていない…おかしいですわね。いつもならとっくに行列が出来ていてもおかしくありませんのに」


――もしかして、ユウジロウの身に何かあったんじゃ!?


ローゼスは最悪な事態も考えて急いで店の元に駆け寄る。


「ユウジロウ!無事ですの!?」


「お、ローゼス。今日も来たんだな」


「え、」


ローゼスの心配をよそにユウジロウは淡々と揚げ物の準備をしていた。


その横ではユグが可愛いエプロンを着てユウジロウの側でジャガポテトを運んだりして料理を手伝っている。


「あの、大丈夫なんですの?」


「何が?」


「何がって、店をやってないからてっきり何かあったのかと……」


「あー悪いな。今日は貸切なんだ。貼り紙貼ってあったんだけど見えなかったか?」


そう言われて店の前をよく見てみると確かに〈本日貸切〉と貼り紙が貼られていた。


「本当ですわ…でも随分急じゃありません?」


「どうしても揚げ物を食べて貰いたい人がいてな。急遽貸切にしたんだよ」


「それって女!?」


「それは俺がモテないの分かっての嫌味と受け取っていいのか?」


「なーんだ。違うのか……」


何故か安心した様子を見せるローゼス。


「オッサン。待たせたな、これで全部だ!」


ジャガポテトいっぱいに入った残りの木箱を引きずりながら持ってくるマルク。


「ありがとうございます」


「でも、貰ってくれるのは有り難いんだけどこれだけの量を使い切れるのか?」


「ご心配なく。寧ろこの程度の量で足りるかどうか」


「何を作るつもりなんだ……」


信満々に言い切ってみせるユウジロウに半信半疑なマルク。


そんなマルクの様子を見て驚く人物がそこに一人。


「え、マルク!?」


「ローゼス!…どうしてお前がここに?」


「それはこっちのセリフですわ!今日は貸切なんじゃ…もしかしてユウジロウがどうしても食べさせたい相手って」


「まぁな。別に貸切までする必要は無いって言ったんだけど、せっかくなら色々食べて貰いたいからって言われてな」


これは驚いた。このやり取りを見るに二人は知り合いだったようだ。


「二人ともお知り合いだったんですね」


「ローゼスはウチの店を雑貨屋じゃなくて武器屋として利用してくれる数少ない常連なんだ」


「マルクほど腕のいい鍛治師を他に私が知らないだけですわ」


「じゃあこの前お前が言っていた新しくパーティーを組んだ変わり者ってのは」


「ユウジロウのことですわ」


「やっぱり。確かに変わり者だな」


何故か俺を見て頷き納得するマルク。


俺にはその意味が自分のことながらさっぱり分からなかった。


「そうだローゼス。良かったらお前も新作食べて行かないか?」


「新作!?食べます!仲間である私が食べないわけがありませんわ!!」


「マルクさんもいいですよね?」


「もちろん。作る本人がいいって言ってんなら俺が断る理由はないからな」


今回ジャガポテトで作るのはファストフードで必ず頼むアレ。

俺からすればアレはサイドじゃなくて主役だ。もはやハンバーガーがオマケのようなものだ。


まずはジャガポテトの皮を剥きをくし切りにしていく。イメージするのは細切りが多いけど、せっかく自分で作るなら素材の味やホクホク感が楽しめるくし切りに限る。


誤解の無いように言っておくと別に細く切るのが面倒だからって訳じゃないぞ。


それにしてもマルクさんで買ったピーラー(ピーヤー)も新しい包丁も切れ味抜群で料理が捗るな。


「包丁の調子良いみたいだな」


「めちゃくちゃ良いですよコレ!これなら固い野菜も全く怖くありませんよ。ほら、この通り」


「わーー魔法で切ったみたいですね。でもお高いんでしょう?って、わざわざ見せなくても分かってる。俺が作ったんだから…」


口ではああ言っても満更でもないようだ。


二人で一通り深夜のテレビショッピングのようなやり取りを済ませると、ジャガポテトを水に晒す。

そうすることで揚げた時にカリッとしやすくなるのだ。


水に晒したら良く水気を切って、軽くコムニコをまぶしたら下準備は完了だ。


「それを油の中に入れるのか?……」


「心配いりませんわ。ユウジロウの油は特別ですから」


「いや、疑ってるわけじゃないんだ。ただどうしても油に食材を入れるのが慣れなくてな」


「気持ちは分かりますわ。私も最初見た時は、この人はどうかしてると心の底から軽蔑したものよ」


「あのさ、聞こえてるからな……」


あの時、浮かない顔してるなとは思ってたけど心の中でそんな事を考えてたとは思ってもいなかった。


「そんな怖い顔しないで。昔の話ですわ」


「分かってるよ。気にしてない」


そう気にしてない。ちょっと俺の心に擦り傷が付いただけだ。


複雑の気持ちになりながら俺はマジックコンロを用意して揚げる準備を始める。


「そういえばユウジロウのいつも使ってるソレ。マルクの所で売ってる売れ残りですわよね?」


「売れ残りじゃない。全く売れてないだけだ!間違えるな」


「何も変わりありませんわ」


でもマルクの言うとおりまだ売れていないだけだと俺も思う。時代が便利な道具に追いついていないのだ。


「俺はこっちの方が慣れてるんだよ。どうも薪を割ったりして火を付けるのは向いてなくてな」


日本にいた頃、キャンプブームが来て焚き火が流行ったりしたけれど俺にはそれがよく分からなかった。

焚き火を見ている暇があったら家のコンロで肉や野菜が揚がっていく様子を見ている方が疲れないしよっぽどいい。


まぁ、それを昔同僚に当たり前のように話したら「あっそうですか」と軽く流されたのは今となってはいい思い出だ。


「ずっと気になってたんですけど、それって魔力で動いてるのでしょ?」


「ああ。中に魔石が仕込んであってな、魔力を流し込む事で炎が発生する仕組みになっているんだ」


「じゃあユウジロウには魔力があるってことでしょ。魔法は使わないんですの?」


「え、」


そういえばどうなんだろうか?……マジックコンロが使えるから魔力があるのは分かっていたけど魔法が使えるかどうか、そんなの試した事は無かった。


「どうなんです?」


「…分からない。試した事ないんだ」


「なら試してみましょう!」


「え、今?」


今から揚げようとしてたんだけどな…….


「思い立ったらなんとやらですわ。そう時間は取らせませんからちゃちゃっと試してみましょう!」


「ユグもユウジロウがどんな魔法を使えるのか気になるの!」


「そうか?…じゃあユグが言うならちょっとだけ」


正直俺も気になる。

それに魔法を使えればモンスター相手に有利な攻撃手段が手に入るかもしれない。前のオークみたいに油が全く効かない相手もいるわけだからな。

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