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油っぽいオッサンは世界最強!?〜揚げ物は異世界を支配できるって知ってました?  作者: 春風邪 日陰
第二章 縦巻きロールなヒロインは薔薇と揚げ物がよく似合う
23/81

23、ごま油があれば大抵なんとかなる

閲覧感謝です!


「よし。後はこのまま村を出ればいいだけだ」


「いいえ、どうやらそう簡単には行かないみたいですわ」


「おいおいおい…コイツらいつの間に」


教会を出ると周囲には待ち伏せてしていたかのように大量のゴブリン達が俺達を囲っていた。


「このゴブリン達思っていた数倍は頭が働くみたいですわね」


「奴らはこれも全部予測していたってことか」


ゴブリンの数はザッと数えて百体。対する俺達は手負いの人質を抜けば戦力は俺達二人だけ。厳密にはローゼス一人に等しい位だ。

この戦い相手がいくらゴブリンとはいえ、どう考えても無理ゲーだ。


「ユウジロウ。分かってはいると思うけど自分の身くらいは自分で守ってくださいね」


「だから分かってるよ。俺だって一応冒険者だ!」


一応な……。


「ならよろしい。できる限り私がゴブリン達を惹きつけますわ。ユウジロウは人質を守りながら私の援護を」


「分かった…」


「…ユウジロウ。そんな顔してると側にいるあの子達が可哀想ですわよ」


「え、」


振り返ると怯えながら不安な目で自信無さげなの顔俺を見つめるインカ達の姿があった。


「冒険者ならどんな時でも堂々としてなきゃ。威勢で負けてちゃ勝てる勝負にも勝てませんもの」


「ローゼス…」


「大丈夫。なんてたってSランク冒険者の私がついてるんですから!」


自らをも鼓舞するように自信満々に言い切るローゼス。

それを自分で言うのかよ……なんて思ったけど、そんなローゼスの姿にちょっとだけ勇気が湧いた気がした。


「だな……前は頼んだぜローゼス」


「フッ、言いますわね。じゃあ、後ろとみんなは頼みましたわよユウジロウ」


「ああ!」


互いに相槌を打つと、直ぐにローゼスは周囲を惹きつけながら前へと前進して行く。


「相手は私ですわ、数で群れなきゃ威勢も張れない無様な小鬼ちゃん!」


「キィィッ…キシャーー!!」


見え見えの挑発に乗ったゴブリン達は一斉にローゼスに襲いかかる。


一部を除いては……。


「おじさん!…」


「大丈夫だ。君達は後ろに下がってて」


アイツら…他の奴らとは違ってこの戦況を見極めてやがるな。もしかして奴らがこの群れ指揮官か?だとしたら、奴らが次に取る行動はきっと。


「キシャーー!!」


指揮官と思われるゴブリンが笑うと雄叫びを上げ一部のゴブリン達をこちらに呼び寄せる。


「やっぱそう来るよな〜…」 


俺でもそうするもん。奴らが俺達から人質を取り返せば戦況は更に有利になる。ついでに守ってる奴が弱そうなら尚更だ。

俺達を攻めない手はない。


「こうなったらやるしかないか」


この子達を守れるのは俺だけだ。俺がなんとかするしかない。

だけど俺にはローゼスのような魔法を使えなければ実力も無い。俺が出来る事といえば……。


「キッシャーー!!」


完全に勝ち誇ったゴブリン達。


「これでも喰らっとけ!」


襲いかかってきたゴブリン達目掛けて俺は勢いよく発火点まで熱したごま油を噴射した。


「キャキャッ!!」


「なにっ!!」


寸前の所で俺の攻撃を悟ったのか、ゴブリン達は後ろに飛び上がり噴射したごま油をかわしてみせたのだ。


「…いいやまだだ!」


一発で駄目なら二発、三発と打ち続けるまでだ。

しかし、俺の攻撃はゴブリン達に読まれ全く掠りもしない


「キャッキャッキャッ!!」


コイツら完全に俺の事を嘲笑ってやがる。


「あのヤロウ……」


俺の唯一の攻撃手段が通用しない。これが効かないとなるともう俺が出来る事なんて。


「こうなったら力づくしかねぇ!」


一か八か距離を詰めれば嫌でも当てられる。それでも無理ならなんとしてでもローゼスが来るまで時間を稼ぐんだ!この程度出来ないで何が冒険者だ。死んでもこの子達には近づかせねぇぞ!


「うおおおおっ!!……ん?」


ちょっと待て。ゴブリンの様子がおかしいぞ。さっきまで余裕な動きを見せていた筈なのに今はそんな様子の欠片も見当たらない。

前へ進もうとしても中々一歩が出せず鼻をつまみとても苦しんでいるようだ。


「匂い?……あっ!」


俺は試しに今度は敢えてゴブリンの足元付近に油を噴射する。


「ギギャッ!!」


ゴブリン達は慌てて更に一歩後ろへと下がる。


「やっぱり。もしかしてゴブリンはごま油の香りが苦手なんじゃないか!?」


人間には食欲をそそる香ばしい香り。しかしゴブリンにとってそれは鼻を曲げるほどの悪臭でしかないのだろう。


「そうと分かればやりようはある」


奴らのすばしこい動きに俺は対応できない。だけど当たらないなら無理して当てる必要もない。


「避けたきゃ勝手に避けな!」


俺はゴブリン達を誘導するように油を噴射、逃げ道を塞いで追い込んでいく。


「ギギャァ……」


なんとか逃げようとするゴブリン達だが辺り一面に撒かれたごま油の異臭が奴らの動きを制限していく。


「ヘッヘッヘッ!…流石の俺でもこの距離なら外さねぇぞ」


俺の作戦は大成功。ゴブリン達を逃げ場の無い閉所へと追い込むことができた。


「さーてと、さっきはよくも俺のこと笑ってくれたなぁ?今度はこっちの番だ!」


こう見えても俺って意外と根に持つタイプなんでね。


「悪臭と共に油ぎった炎で燃え尽きろ!」


さっきのお返しとばかりに右手から吹き出されたごま油は見事にゴブリン達に直撃。悪臭と炎、二つの苦しみがゴブリン達を襲う。


「ギャアアアァァァーー!!」


「アハハハ!!」


…なんか客観的に見たらこっちが悪者だと勘違いされそうだが、まぁ、勝ったから良しとしよう。


「そっちはなんとかなったみたいですわね」


やれやれといった様子でローゼスがこちらにやって来る。


「そっちは?」


「もちろん終わりましたわ。これで恐らく辺り一帯のゴブリン達は一掃できたかと」


「そうか」


「そういうアナタも随分派手にやりましたわね。村中が変な香りで充満してますわ。さっきも思いましたけど何をしましたの?」


「油の種類を変えただけさ。それに変な香りじゃない、ごまのいい香りだ!ゴブリンは苦手みたいだけどな…」


「どういうことです?」


「いやさ、どうやらゴブリン達はこのごま油の香ばしい香りが苦手らしい。そのおかげで俺でもなんとかなったんだ。本当に油さまさまだよ」


ごま油が無ければきっと俺はここでやられていたに違いない。日本でもごま油こそ便利で最強だなんて言って、どんな料理にでもごま油をかけるマニアがいたけどその気持ちが分かった気がする。


「ゴブリンに苦手な香りがあるなんて初耳ですわね」


「そうなのか?」


まぁ食用油が存在しないこの世界でごま油なんて物があるわけないからな。知らなくて当然だ。


「この香りを上手く使えばゴブリン避けとして結界の様な役割に使えるかもしれませんわ」


「成程。その手があったか……」


確かに再びゴブリン達がこの村を襲う可能性はあり得る。その度村に助けに行くのは効率が悪いし色々と面倒そうな大人の事情のお陰で現実的じゃない。だけどそれをごま油の香りによって事前に防げるなら願ったり叶ったりだ。


「ローゼス。それ採用!ちょっと考えてみるよ」


「ちゃんと礼は貰いますわよ」


この香りがどれだけの期間効果があるかは分からないけど定期的に使えばなんとかなりそうだな。


「そうと決まれば早速街に戻ろう」


「ええ。またゴブリンでも集まってきたら面倒ですわ」


俺達は人質を連れて村を出ようとしたその時だった。


「ちょっと待ってくれぇ!!」

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