22、二度目は御免だ。二度目はな
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間違いないアイツが噂のゴブリンだ。
くそッ、俺はどうして忘れていた。ここは避難所なんかじゃない。こここそがゴブリンの根城なんだ。ここまでの道は一本道、逃げ道は来た道を戻るしかない。
完全に嵌められた……。
ここなら誰かが助けに来てもソイツを袋叩きにできる。ゴブリンの隠れ家にはうってつけってわけだ。
「まずい、このままじゃ……ぐあぁっ!」
頭が痛い。それに目の前は暗くてよく見えない。
無闇に油を放てば人質に当たるかもしれない。視界がハッキリしない以上反撃もできない。
最悪だ……。
「キシャーーッ!!」
ゴブリンらしき怪物の雄叫びが聞こえる。聞こえる度に俺の体を鈍い衝撃が襲う。
「ぐっ……」
痛ぇ……身体中がマジで痛い。だけど分かってる。これは痛いなんてもんじゃない、これは死ぬってやつだ。
でも不思議なもんだ。人間ってのはいざ死を悟ると案外冷静でいられるらしい。
あーあ、熱中症の次は惨殺かよ。
「俺、また死ぬのか……」
異世界での生活も悪くなかった。いつも通り揚げ物を食べれたからな。そう考えると一度目と比べればちょっとはマシか。揚げ物を食べてから死ねるんだから……。
「冒険者ならちょっとは意地を見せなさいよ!!」
死を受け入れて目を瞑ったら、どこからか聞いたことのある声が聞こえた。
意地を見せろか……俺の意地。そうだ…俺の意地はこんなもんじゃねぇ!
揚げ物でこの世界を支配する、その夢も叶ってない。そして大事なことがもう一つ。
俺はまだこの世界でたらふく揚げ物を食べてない。
「それなのに……こんな所で死んでたまるかよぉ!!」
「フラッシュ」
女の声が聞こえた瞬間、暗かった周囲が閃光の様な激しい光に包まれた。
「ギェッ!?」
「眩しっ!だけど見えた!」
俺の目の前十二時の方向。光に目をやられ苦しむゴブリン。格好の標的みいつけたっ。
「これでも喰らえ!!」
発火点まで温度を上げた油をゴブリン達に浴びせると、みるみるうちに炎に包まれていく。
「ギィェェェッ!!!」
香ばしいごま油の香りが地下室に充満する。いい匂いだけど流石にこれを見て腹は空かないな。
「ユウジロウ!」
「ローゼス!」
「何か見つけたら必ず私を呼べと言ったでしょう!」
「悪い……反省してます」
頭を下げるユウジロウを見て渋々ため息を吐く。
「先輩冒険者として本当はもうちょっとキツくお仕置きしたいところですが、十分痛い目に遭ったようなので今日はやめておいてあげますわ。反省してるようですしね」
「助かるよ。文字通り痛い程身に染みたよ、死んじまうくらいにはな……」
「自業自得ですわ」
「分かってるよ。もうしない。こんな目に遭うのは懲り懲りだからな」
「じゃなきゃ困りますわ。アナタに死なれてはもうカラアゲが食べれなくなってしまいます」
「そうだな死んだら俺も食べられない。それは俺も御免だよ」
ちょっと前まで調子に乗ってた俺にも言ってやりたい。死んだら好きな揚げ物も二度と食えなくなるってな。
「でもどうして此処が分かったんだ?」
「どこを探してもユウジロウが見つからないから、仕方なくアナタの気配を辿ったのですわ」
「便利な能力を持っててくれて助かったよ。もうちょっと早く来てくれるともっと良かったけど…」
「間に合っただけでも感謝して欲しいですわ」
「冗談だ。ちゃんと感謝してるよ。ありがとう」
「お礼はカラアゲでいいですわ。もちろんレモヌも付けて」
「ふふっ。分かったよ任せとけ」
「なら早くここを出ましょう。こんな狭い所にいつまでもいたらその奇妙な油の香りが私の鎧に染み付いてしまいますわ」
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