14、トラブルの予感?
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「そういえばメルディアさん。今日俺を呼んだ理由ってなんなんです?」
「そうでした。私としたことが1番肝心な事を忘れていました。これを渡そうと思っていたんです」
「?」
片手で軽々と持っていたバッグを受け取る。
「中身は一体……重っ!!なんなんですコレ!?」
あんなに軽そうに持っていたのにこのバッグなんて重さだ。大の大人が両手で持ってギリギリだぞ。何が入ってたらこんなになるんだ。
「開ければ分かりますよ。まぁ、人目が多い場所ではオススメしませんが…」
どうしても中身が気になった俺はメルディアさんの忠告も無視して恐る恐るバッグのジッパーを開ける。
「どれどれ……!!」
慌ててジッパーを閉めるとバッグを両手で抱え込む。
「メルディアさん!これって…」
「例の物ですよ」
バッグの中には大量の金貨がギュウギュウと詰められていた。
「例の物って……あ、まさかアレですか?」
「先日オークションに出していた特殊個体のギカントラビット。アレにようやく値段がつきましてね」
じゃあ、今日俺を呼び出したのはこの事を報告するためだったってことか。
「バッグの中凄い量ですけど一体幾らの値がついたんです?」
「それはまあ、凄い事になってますよ。なんてたってオークション史上最高金額ですからね」
「最高金額!?」
「それもあって思ったよりオークションが長引いてしまいまして。本当ならもう少し早く渡せそうだったんですが、金額が金額なもので…」
「……あの、凄い枚数の金貨でしたけど、値段にすると一体どの位なんでしょうか」
俺は周囲を確認すると周りに聞こえないようにメルディアさんの耳元でひっそりと喋る。
そういえばメルディアさんの耳、俺と違ってちょっととんがってるような。気のせいか。
「金貨?…金貨なんて入ってましたっけ?」
「え?いや、入ってましたよ!大量に!ほら」
メルディアさんにだけこっそりとバッグの中身を見せて確認させる。
「…あれもしかして見るの初めてですか?」
「どういうことです?そりゃ、こんな大金一度に目にするのは初めてですけど」
これでも唐揚げで結構な額を稼いだつもりだったけどバッグの中身の方が遥かに多そうだ。
「そんなの私も一緒ですよ。そもそもこれはただの金貨じゃなくて白金貨です」
「白金貨?」
改めて中を確認してみると確かに金貨より少し大きい気がする。
「白金貨の価値は金貨の約百倍。滅多に出回る物じゃありません。しかもこの量は前代未聞ですよ」
「…確か金貨一枚の価値って、」
「相場は多少変わりますが、まぁ額にして10万ゴールドといったところでしょうか」
「10万ゴールドの約百倍てことは……いっ、1000万!!」
あまりの額に思わず大声出してしまう。
周囲にいた全員が一斉にこちらを向くが俺は必死に愛想笑いをしながら頭を下げ何事もなかったようにやり過ごした。
「だから言ったんです。人目のある所ではオススメしないと」
「まさかこんな大金だとは思わなかったんですよ」
たった一枚でこの前売ったウサギ1000頭分だと。
突如手に入れた大金に手を震わしながらなんとか声だけでもボリュームを下げる。
「あの、たった一枚でこの額なら全部でいくらになるんですか?…」
「私が確認できただけで20枚はあったかと」
「1000万が20枚ってことは……10枚で1億。それがもう一つで20億!?違う。2億だ…」
生涯見る事もなかったであろう大金を一度に目にして頭がこんがらがっている。先に20億だなんて思っちゃうから2億がなんだか安く感じるよ。全然安くないのに…
「凄いですよね。特殊個体とはいえモンスター1体にこの値段ですから」
「そりゃそうですよ」
「ちなみに数百年前に討伐された伝説のドラゴンの価値は100億だっていわれてますから。あのウサギたった5体分です」
「そう聞くとなんか不思議とドラゴンも倒せるような気がしますね」
「まあ、ドラゴンの出現はその時から確認されていませんが、もしもの時は是非お願いしたいくらいですよ」
「やめて下さいよ。もしもそんな時が来たなら俺は一目散に逃げさせて貰いますよ」
「分かってますよ。私も言ってみたただけです」
だけど困ったな。ただのまぐれとはいえこんな価値のあるモンスターを討伐したと思ったら、嫌でも調子に乗ってしまいそうだ。
あーー、なんかソワソワする。今ならなんでも出来そうな気するぞ。
「…あ、そういえば」
「はい?」
俺は高ぶる気持ちを抑える為になんとか話題を作り話し続ける事にした。
「こんな大金を一度に支払えるなんてよっぽどのお金持ちでしょうけど、どんな方なんです?」
「別にお金持ちなんかじゃありませんよ。ちょっとギャンブルが好きなだけのおっさんですよ」
「おっさん…」
俺と同じか。どんな人なんだろう。今の所はあんまりロクな人じゃなさそうだけど。
「ソイツ、ギャンブルだけじゃなく冒険者の腕もピカイチでしてね」
「へーメルディアさんは詳しいんですね。その人のこと」
「私はそこそこ昔から知ってるんです。それにソイツはこの街じゃ結構有名ですよ」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。なんてたって彼はこの街に二人しかいないSランク冒険者の一人ですから」
当然Sランクは冒険者の中でもトップクラスの証。てことはその人相当強いんだな。だけどそれなら大金を支払えた事も納得もできる。
やっぱりどの世界も冒険者って稼げるんだな。万が一本業が上手くいかなくても食いっぱぐれる心配は無さそうだ。
「ところでユウジロウ。このあと暇ですか?」
「え、まぁ、何もないですけど」
「それは良かった。でしたら私の部屋でお茶でも如何でしょう。ちょっと他に話したいこともあるもので」
話ってなんだろう。碌なことじゃない気もするけど、かといってお偉いさんの頼みを断る勇気もないしな。直感が当たらない事を祈ろう。
「分かりました。そういうことなら」
俺はバッグに手を突っ込み中身だけを密かに【フリーズボックス】に収納する。
「本当便利なものをお持ちですね。それなら強盗される危険性もない」
「ば、バレました?…」
「私の耳は特殊でね。誰かがスキルを使うと音になって聞こえてくるんです」
「凄いですねそれ」
「別に凄くなんかありませんよ。それを言うならよっぽどアナタの方が凄いでしょ」
「いやいや俺なんか別に…」
その時だった。息を切らしながら扉を勢いよく開けて一人の少女が飛び込んできたのだ。
「誰か、みんなをたすけてくださいっ!!」
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