13、対等な賄賂
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「ようこそ冒険者ギルドへ!……ゲッ」
「そんなに嫌そうな顔しないでくださいよ。エミリアさん」
ギルドマスターに呼ばれて数日ぶりに冒険者ギルドに顔を出してみたらこのザマだ。あの一件以来、受付嬢のエミリアに嫌われてしまっている。
こっちとしては上手くやっていきたいと思ってるんだけどな…。
「私はできるだけアナタに会いたくないんです!」
「よくもまあ本人を前にしてハッキリ言えましたね…」
「私アナタの事嫌いですから」
なんてずぶといメンタルの持ち主なんだ。それだけは尊敬するよ。
「で、今日は何しに来たんです?前みたいにギルド内を油まみれにするつもりなら帰ってくださいよ」
「その際は失礼しました。流石に私もちょっとやり過ぎしてしまったと反省しています」
「ったく、あの後誰が掃除したと思ってるんですか!?私ですよ私!もうっ……」
そういえば、メルディアさんが今回の騒動を起こした罰として彼女に全て責任を取らせたって言ってたけどそういう事だったらしい。
だったらただの八つ当たりじゃないか!
おっと、別に今日は喧嘩しに来たわけじゃない。寧ろその逆だ。
「それでですね、あの時のお詫びと言ってはなんなんですが、実はお渡したいものがありまして」
「私に渡したいもの?…思ったより気がきくんですね」
露骨に嬉しそうな顔をして単純な人だ。だけどかえって都合がいい。なんてたって俺はビジネスをしにきたんだから。
「これ、俺の店で出してる商品なんですけど良かったら」
「なーんだ、宝石とかじゃないのか……ってカラアゲ!?これカラアゲよね!?」
「え、あ、はい」
「最近この街で一躍ブームとなっている謎の料理カラアゲ。その人気故食べたいと思った時には既に売り切れとなってしまう幻の逸品。まさかそれが目の前にあるなんて」
随分詳しそうだし、さっきの俺の顔を見た時の反応とは大違いだ。やっぱり持ってきて正解だったな。
「結構な数持ってきたんで、良かったら皆さんで分けてください」
「分けない」
「え、」
「私が全部一人で食べる」
「いや、流石に一人でこの量は…」
「うるさい!一人で食べるったら一人で食べるの!」
唐揚げに目がないって感じだな。まぁ、揚げ物の魔力に勝てる奴なんかそうそういるわけがないか。
「ふふっ唐揚げお好きなんですね」
「べ、別に!そんな事ないわよ!…ただ、昨日友達に一口だけ貰ったカラアゲの味が忘れられないだけよ!」
それを好きだっていうんだよ。
「じゃあ、こうしませんか?アナタは俺が嫌いかもしれないけど俺はアナタと仲良くなりたい」
「いきなり何?私は別にそんなつもりないけど」
終始ツンとした態度を取るエミリア。しかしそうしてられるのも今のうちだ。
「まぁそんな事言わずに最後まで聞いてくださいよ。俺の事は嫌いでもカラアゲはお好きでしょ?」
「そ、それは……」
「俺と仲良くしてくれたら、いつでも無料でしかも好きなだけ唐揚げを提供すると約束しましょう」
「なっ!?……まさかアナタ、受付嬢頭である私を買収するつもり?私も舐められたものね」
「買収だなんて口の悪い。俺はアナタと友達になりたいだけです。友達同士なら多少のサービスは当然でしょ?」
「……私に何しろっていうのよ。受付嬢頭っていたって私が出来る事と言ったら冒険者ギルドの資金を横領する事くらいよ」
サラッととんでもねぇこと言ってるぞこの女。
「いやいやお金は結構。そんなものに興味はありません」
「じゃあ何がお望み?」
「冒険者ギルドはあらゆるモンスターの素材の買取も行っていますよね。当然その中にはロックバードの素材もある筈」
「それがどうしたのよ」
「簡単です。ロックバードの素材、肉部分だけで構いませんから俺にだけ格安で売ってくれませんか?」
「え、そんなことでいいの?」
「実はここだけの話、唐揚げが大人気になったお陰で街中の肉屋からロックバードの肉だけが無くなってしまったんです」
流行りってのは恐ろしいもので、売れたと分かればそれをこぞって真似をしようとする者も増えてくる。既に巷では唐揚げの様な見た目をした串焼きが世に出回っているらしい。
しかし食用油が存在しないこの世界じゃ揚げ物は作れない。だからコムニコをまぶしてただ焼いただけ。そんなんじゃパクリにすらなっていないのでそれは別にいいのだが、そのせいでロックバードの肉が手に入りにくくなってしまったのだ。
「…なるほどね。通りで馴染みのの串焼き屋に行っても置いてないわけだ」
「肉屋にも色々と頼んではみたんですが、仮に入荷したとしても信用がない奴には優先的に売ることはできないとはっきり言われてしまって」
「そりゃそうよ。この街の肉屋は串焼き屋との信用だけでやっていけてるようなものだもの」
「そこでエミリアさんの力が借りたいんです」
調べたところ、肉屋は贔屓にしている冒険者の集まりから直接買取って仕入れているらしい。つまり問屋みたいなものがあるってことだ。
だから俺も真似する事にしてみた。冒険者達が持ち込んだ素材を直接買い取る事ができれば、肉屋を頼る必要はないからな。
「……私がそんな取り引きに乗るとでも?受付嬢ってのは誰にでも平等に扱うのが仕事なのよ」
見た目と能力で差別していた人間の言葉とは思えないほどいい言葉だな。
「そうですか、ですよね。残念です。じゃあ、この事は忘れてください……」
「ちょっと待った!何勝手に帰ろうとしてんのよ!」
「いや、取り引きには応じて貰えなさそうなので」
「そこは普通粘るところででしょ。こっちはそれを待ってたんだから」
やっぱりそうか。この娘の性格ならそんな事だろうと思ってたよ。
「じゃあ、」
「そうよ。こんな良い話私が乗らないわけないでしょ!」
「なら取り引き成立ってことで」
若干不服そうな顔をするエミリアだったが、最終的には手を出し、握手を交わした。
「……ギルドマスターにはくれぐれもバレないようにね。本当なら、冒険者から買い取った素材を直接冒険者に売る事は違反なんだから」
「分かってますよ」
「何が分かってるんです?」
「「うわっ!!」」
声が聞こえて振り返ると後ろには笑顔で笑うギルドマスターの姿があった。
「二人とも驚きすぎですよ。まるで聞かれちゃいけない事を話してたみたい」
「そ、そんなことないですよ!ね、エミリアさん?」
「え、ええ。も、もちろんですよ!別にやましいことなど何もしていません。ね、ユウジロウ」
「へぇー、いつの間に二人は名前で呼ぶほど仲良くなったんですか?特にエミリア。アナタは彼のことを嫌っていたと思っていましたが」
「私もちょっとは反省したって事ですよ。あ、そうだ。私まだやらなきゃいけない事あったんだった!失礼しま〜す!!」
焦りながらもなんとか誤魔化すとエミリアは直ぐにギルドの奥に消えていった。
「あっ」
あの小娘。怪しまれたからって全部俺に丸投げして逃げやがった。
「どうしたんですユウジロウ?アナタも慌てたような顔をして」
「そ、そうですか?…」
この取り引きの事がバレたら暫く唐揚げも作れなくなってしまう。そうなったら俺の夢も閉ざされたも同然。なんとか誤魔化さないと!
「そういえば、なんだか良い匂いがしますね」
「あっ、そうだ!実は今日、ギルドの皆さんにお土産と思って唐揚げを持ってきたんです。良かったらどうぞ」
俺はストックで用意していた唐揚げを猛スピードで容器に詰めると、何食わぬ顔でギルドマスターに手渡す。
「えらく気が利きますね。きっと皆喜ぶと思いますよ」
「それは良かった〜」
随分強引な気もするけどこれで誤魔化せたか?……。
「だからこそ逆に怪しい気もします」
――ギクっ!!
「…そんなの気のせいですよ。ほら、メルディアさんには色々とお世話になったから。その感謝も込めてです」
「本当に?」
「え、」
「本当にそれだけですか?本当は何か他の事を企んでるんでしょ?」
落ち着け俺。ただのハッタリだ。
ここで表情に出たら今までの努力が全てパーだ。バレるな、頼むからバレないでくれ。
「…だから何もしてませんって」
「……わかりました。ま、今日はそういう事にしておきましょう。このカラアゲに免じてね」
こんなに笑顔が怖いと思ったのは生まれて初めてだ……。とにかく話を変えよう。
「そういえばメルディアさん。今日俺を呼んだ理由ってなんなんです?」
「そうでした。私としたことが1番肝心な事を忘れていました。これを渡そうと思っていたんです」
「?」
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