天使と神さま
あるとき天国から地上を見た神さまは、天地創造のときに自分を手伝ってくれた天使たちを集めるとこう言った。
「私は人間を間違えて作ってしまったかもしれない」
そう言って神さまは地上を指差した。地上ではあちこちで諍いが起こり、神に対する暴言が吐かれ、教えを破り享楽に耽る者が後を絶たなかった。
「いまの人間を滅ぼして、また新しい人間を作ろうと思う」
神さまの言葉に対し、天使の長が進み出てこう言った。
「お言葉ですが、主よ。いまはたしかに悪徳が栄えてはいますが、それでも人間は少しずつ良くなってきております。もう少しだけ時間をかけて、どうか長い目で見てやってはくれないでしょうか」
その言葉に神さまは頷くと、百年後にまた地上を見たときに、少しでも良くなっていればいまの人間を残そう、とそう言った。
天使の長は深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。
そして神様が寝所へと行ったのを見送ると、面倒くさそうにため息を吐いた。
「まったく、神さまの気まぐれにも困ったものだ。千年おきくらいに同じようなことを言いだすんだから。こっちは天地創造なんて面倒なことの手伝いは二度とごめんなんだ」
そうブツブツと文句を言うと、部下の天使も同じように頷く。しかし、百年後に人間の悪徳が少しでも減っていないと、いまの人間が消されてまた天地創造のやり直しになってしまう。
仕方ないと天使たちは人間たちをより良く導くために地上へと向かっていった。
寝所から地上と天国全体を眺めていた神さまは、天使たちが地上に降りていくのを見て満足そうに頷き、こう呟いた。
「うむ、怠け癖のついた天使たちを働かせるのは、やはりこの方法が一番だな」
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