第9話
高校時代の友人らしきアカウントや大学時代の同期らしいアカウントが出てきた。中には結婚してる人や子供との幸せそうな投稿をしている人も割といて「友樹さんって26歳にもなって、何してるんだろう。」と思っていた。
以前友樹さんと結婚観について話をしたことがある。その時友樹さんはこう言っていた。
「結局1人が楽なんだよね。結婚式にお金かけてる友達見てバカだなって思うし、人生賭けてこの人と添い遂げようって思える人が見つからない。同じ部署のだいぶ年上の先輩で独り身の人がいるんだけどさ、その人めっちゃかっこいい車乗ってて超かっこいいのよ。俺もああいう風なおじさんになりたいね。」
正直私も同じことを思っていた。彼氏とかって所詮口約束だけど、結婚となると国を通して書面で契約を結ばないといけない。自分の周りも巻き込むことだし、自分の人生、将来も大きく変わる。そんな決断について今の私は考えることすらできなくて、今を生きることで精一杯だった。
だからそのアカウントを開いた時、衝撃が走った。
順番にアカウントを覗いていると、ある女性のアカウントが目に留まった。
最新の投稿に見慣れた顔を見つけ、それが友樹さんだと分かるのに時間はかからなかった。でも、私も彼氏がいる時に友樹さんと会っていたし、友樹さんに彼女がいることにもあまり驚かなかった。確かに綺麗な顔立ちではあるし、職業も身長も学歴も申し分ないと思う。
そのまま下へスクロールすると、「入籍」投稿文とともに指輪と婚姻届の写真が目に入った。
1ヶ月前、友樹さんは既婚者になっていたのだ。
よく考えてカレンダーアプリを開くと、入籍してから2回も友樹さんと会っていたことに気がついた。
「嘘でしょ・・・?」
嫌いになったとかじゃなくて、ただ、放心状態になっていた。私と同じ考えで、「不安定な私」の1番近いところにいてくれていると思っていた友樹さんが、実は1番遠いところにいたのだ。
なんの感情も湧いてこなかった。ただ、それが今日会えなかったことへの腹立たしさを増大させた。何も知らなくても1番の理解者だと思えたから許せていたのに、今はもう、私と友樹さんは反対の道を歩いている。
確かに部屋に友樹さんが自分から好きになりそうにはないぬいぐるみが増えていた日や、可愛いキャラクターのスタンプを送ってきた時に違和感はあった。でも友樹さんが私のプライベートに踏み込んでこなかったように、私も友樹さんの領域に踏み込むことはしなかった。
もう一つの出来事を思い出した。ある日から友樹さんは毎回最後に「気をつけて」と言ってくれるようになった。最初の方は「急に気持ち悪いなぁ」くらいに思っていたが、何回か言われるとそう言われることに嬉しさを覚えている自分がいた。でも、そうやって優しいフリをして、友樹さんは彼女と手を繋いでいたのだ。