第7話
それから私の生活は1年前に逆戻りした。大学にあまり行けず、いろんな人と遊んだ。だけどやっぱりいつも最後に戻ってくるのは友樹さんのところだった。
SNSで流れてくるいろんな恋愛ソングに重ねるのはいつも友樹さんで、私自身もそんな自分を楽しんでいた。実は就職を地元でしようと考えていて、こんな生活ができるのもあと2年だとわかっていた。だからこそ友樹さんに私の全てを預けられたんじゃないかと思う。
毎日はゆっくりと流れていくのに、振り返ってみるとその日々は見えないところまで離れていて、気づけば大学4年生になっていた。就職活動も終わりが近づき、地元に就職することが決まりそうだ。
友樹さんとは相変わらず会っていたが、新しい出会いがあった。友人と居酒屋で飲んでいたときに、サラリーマンの2人組が私たちの隣に座っていた。
「ねえ、お姉さんたち2人?」
声をかけてきたのは私が無意識に「ナシ」と思っていた方だった。
「あ、まあ、はい。」
「よかったら一緒に飲まない?」
友人に目配せをすると「どっちでもいい」というようなアンサーが返ってきたので、暇だった私たちはいまの居酒屋を出てその人たちと一緒に飲むことにした。
終電の時間が近づき「ナシ」のほうが「連絡先交換しない?」と声をかけてきた。帰ってブロックすればいいと思っていたし、お会計を払ってもらって断るのも気が引けたので、躊躇することもなく交換した。名前もよく覚えていなかったが、画面を見ると「しゅーと」の文字が表示されていた。その時「自分の名前、伸ばし棒で設定するタイプか・・・。」と引いてしまったのは秘密にしておこう。
しかし、帰りの電車で彼から送られてきたのは思いもしない内容だった。
[ホーム画ってもしかして〇〇のライブ?]
私はプロフィールのホーム画面に愛して止まないアーティストのライブに行った時の写真を設定していたのだが、それに食いついてきたのだ。
〈そうです!〉
[俺も親が好きで、ライブよく行くんだよね!この前のそれも行ったよ!]
〈ほんとですか?!私29日行ったんですけど・・・、〉
思いもよらないところで会話が弾んでしまったが、それよりも同年代で同じアーティストを好きな人が少ない中、3つ上とはいえ同じ音楽が好きであることがとても嬉しかった。
それからまた私と、友人と、「しゅーと」改め、秀斗さんの自宅で飲むことになった。あっという間に終電は逃してしまい、酔いも回ってきた私は秀斗さんのベッドで寝てしまっていた。
自宅がほど近い友人は私が寝たあと帰ってしまったみたいで、次に目が覚めたのは秀斗さんの鼓動に気づいた時だった。1人で寝ていたはずなのに私の背中には後ろから抱きしめている秀斗さんがいて、そのハイスピードな鼓動は私の背中を突き抜けて伝わってきた。そんな不器用な姿に思わず「可愛いな」と思ってしまった私は、その日の夕方まで秀斗さんと一緒に過ごした。2回目となる「この人と一緒にいたら幸せになれるかも」という気持ちが芽生えたが、それを邪魔するのは就職までのタイムリミットだった。