第2話
毎日のように朝に寝て夕方に起きる生活をしていた私は金曜日も日が暮れる頃に目が覚めた。母親からの、ちゃんと大学行ってるの?というメッセージを無視してシャワーを浴びる。
なぜなら今日はまた友樹さんと会う日だからだ。「確か、かっこ良かった、気がする」というもやがかかった記憶を頼りに、少しでも可愛く思ってもらえるように努力する。
といっても、私も彼氏が欲しいわけではなかった。家族も友人も近くにいない私は、心にどこか寂しさを感じていたんだと思う。男女の関係はその寂しさを簡易的ではあるが埋めてくれる。だから私は毎晩違う男と寝ていたのだろう。その中で私を気に入ってくれる人がいればその人が彼氏になればいいな、と思っていた。
街が賑わってきた時間帯、友樹さんから連絡が来た。
[何時くらいに来る?]
最寄り駅を教えてもらって、乗り換え案内のアプリの指示通りに向かった。
駅の近くのコンビニで待っていると、後ろから声をかけられた。
『裕莉ちゃんっ。』
声のする方へ振り向くと友樹さんがいた。
「びっくりした!」
『なんか買う?』
「うーん、お腹空いたしご飯買おうかな。」
私はこういうのが好きなんだ。私も相手も別に思い入れはないけど、周りからはカップルに見えていて、幸せそうに見えているはずだ。
ご飯を買って、コンビニからほど近い友樹さんの家に行って、朝まで一緒にいた。土曜出勤だった友樹さんと一緒に家を出て、それぞれの路線へ別れるところでバイバイをした。
今まで同い年としか付き合ってこなかった私にとってその出来事はすごく新鮮でワクワクして、友樹さんが特別な存在だと勘違いしてしまった。