人権
「おいドベ、掃除しとけよーww」
それだけ言って神谷は教室から出ていった。
(なんだよ、お前も当番だろ)
あいつも、昔からこんなやつだったわけじゃない、俺が中学生になってすぐ、すべての人が自分のステータスを見られるようになった。
ラノベやゲームで見るあれだ。
実際、数字は的確で大体の人は納得のいくものだった
だが、そうじゃない人もいた。
極端にステータスが低かったり、高かったりする人がいたのだ。
ステータスがおかしいのではなく、ステータスが見れるようになった日にいきなり足が遅くなったり速くなったりした。
そんなステータスが急激に高くなった人を『天賦』、
低くなった人を『劣人』と呼ぶようになった。
そして、政府は天賦の優遇や劣人の冷遇を法律で認めた。
また、中学を卒業した時点で合計ステータス1000未満の人間は『ドベ』として扱い、人権を剥奪される。
そして、俺のステータスはというと
「ステータスオープン」
【高木和人
知力/300
瞬発力/200
腕力/200
発想力/150
魅力/140】
と、こんな感じで合計値990しかない。
神谷は校内トップで合計値8500の超天才だ。
この学校じゃ神と言っても差し支えない。
そのため、おれはあいつになにをされてもやり返せない、やり返してはいけない。
ドベの俺は、中学卒業後2つの選択肢しかない。
奴隷として売られるか、労働施設で働くかだ。
おれはドベだが、ドベの中では一応トップクラスだ。
奴隷になっても買い手がつくのはほぼ確定だし、労働施設でも過労死は考えにくい。
だが、やはり人権が剥奪されるというのは今まで人として過ごしてきた俺には辛すぎる。
実際にドベになった人の多くは自殺している。
俺も、一生を奴隷として生きるくらいならいっそ…
だが、そう思ってもこの足が動くことはない。
俺は惨めにほうきを握り掃除をするしかないのだ。
「もう、いっそ…」
そこまで言って俺は口を閉じた。
この先を言ってしまうともう、あとには戻れないような気がしたから。
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