星野燈里の過去未来
「とーりんって向こうでもテレビに出てたよね?」
響からの無邪気な問いに燈里はどきりとする。
「そうだけど、何?」
悪気はないはずだとわかっていながらも、つい尖った態度をとってしまう。
すかさず響の後ろから奏が姿を表してこうつづけた。
「実は、僕達がアイドルを目指した理由って燈里君なんだよね。」
懐かしむように穏やかな笑みを浮かべる奏に、燈里はふと自分の心が軽くなったのがわかった。
「まさか憧れた存在と同じグループで歌えるなんて、毎日が本当夢みたい!」
響も屈託のない笑顔を浮かべ、キラキラした瞳を燈里に向けている。
「なら、もっとぼくに近づいてね?一緒に頑張ってあげるから!」
強がってはいるが、その声は年相応の愛らしさがあった。
親の意思、崇拝されるような人気、それに奢って努力もせずにわがままで贅沢だったぼく。
やっと努力をし始めた頃には、もう期待は大きすぎるほどに膨らんでいて、ぼくには背負いきれなかった。
そうして家族からも見放されテレビからも何もかもから消えた。
five Pointed starに入らなかったら、二度と人前に立つ事もアイドルとしてパフォーマンスをする事もなかったかもしれない。
そのメンバーの中にかつての自分を見て希望を持ってくれた人がいる事はたまらなく嬉しかった。
今までのことは全て無駄じゃなかったんだ。
燈里は静かに涙を流した。
双子は燈里に抱きついて頭を撫でている。
そんな様子を翔太と律は微笑ましく見守っていた。
そして燈里はまた一つ決心した。
「ありのままのぼくと向き合って、過去も受け入れて、そうして最高のぼくになる。」
決意の証として本来の黒髪に、もがいていた頃の名残として淡いピンクのメッシュを片方にだけ入れた。
こうして星野燈里はまた一回り大きくなった。