オーグストとフィン
フィンは父であるオーグストの手伝いをしていた。
「最近のローザさんはどうだい?」
手は止めずにオーグストは息子にそう尋ねた。
ローザに関してはほとんどフィンに任せているオーグストは、こうして時折ローザの調子を尋ねることはあれど基本口は挟まない。
オーグストがローザにしたことといえば、自分の治める国に長期の滞在許可を出したことだろうか。
もっとも、この国を気に入ってもらえたら貴族位を出して定住してもらいたいとも考えているが。
「シエルとメーアが懐いてる。珍しく自主的に勉強教わりに行ってる」
「それは私からもお礼をしなくてはね」
報告は聞いていたとはいえ、やはり自ら進んで勉強するシエルとメーアは想像がつかない。
「でもそうなると、レン君はいじけていそうだね」
「少しだけ、ね。かといって役割は変わってないから成長だとか言って喜んでる」
弟がいたというレンはいいことだという反面寂しそうな顔で呟いていたという。
「フィンはどう思っているんだい?」
フィンが仕事の手伝いをしてくれるのは別に珍しいことではないのだが、仕事のスピードが速いときは大抵相談事だったり話したいことがあるのだ。
家族仲はいいのだが、だからと言って家族全員に聞かれたくない話もあったりする。
父であるオーグストと話たいときフィンは決まってオーグストの仕事の手伝いを始めるのだ。
「ありがたいとは思ってるよ。けど、なんか流されちゃいそうでさ」
「流されそうとは?」
オーグストが尋ねる。
「うーん、この国でもやってけるんじゃないかって声かけたってのが本音に近いけど……」
「周りはそうは思わないと」
「まぁ、そうだね」
年頃の男女にそう言った話が出るのは仕方ないと優しく笑ったオーグストは書類を書く手を止めて、フィンの方を向く。
「フィンは楽な道を選びたがらないからね」
「そのつもりはないんだけど」
「ゆっくりと悩みなさい。フィンもまだシエルたちよりちょっと賢いだけの子供だよ」
フィンは困った顔をして頰をかいた。
大人だと自信を持って言えるほどではないが、かと言って子供扱いされるとどうしていいか分からなくなる。
何も言えずにいるフィンに、オーグストは穏やかな顔をして衝撃的な言葉を言った。
「フィン、私は共和制にしてもいいと思っている」
「……そんな、こと」
あまりにも唐突な考えにフィンは言葉が出ない。
オーグストは前々から考えていたことだと静かに笑う。
この国の形が変われど、在り方は変わらないはずだと。
「任せられないからじゃなく、任せられるからこそだ。もちろん民を交えての話し合いにするがね」
「………………」
シエルやメーアの実力が足りなければ、自分が王として立たなければならないと思っていたフィンは、吹っ切れたように笑った。
「父上、ありがとうございます」
「フィンの悩みが解決に向かうのなら良かった」
大きく伸びをしたフィンはいつもよりもペースを上げるとオーグストの仕事を手伝うと、心を軽くして自分の部屋に戻るのだった。
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