懐くメーア
「ローザさん、遊びに来たわ」
昼下がりの午後、ローザの部屋にメーアが遊びに来た。
特に予定もないローザはメーアを部屋を招き入れる。
ところどころ汚れかついた服のメーアは、服の汚れは気にかけず自慢気に手に持ったカゴをの上にかけてある布を外した。
「私が作ったのよ」
中にはカゴをいっぱいのクッキーが入っていて、甘い香りが周囲に広がる。
「まぁ、すごいわね。エリシャ、お皿に並べてくれるかしら」
「はい」
メーアからカゴを受け取ったエリシャは上品にクッキーを皿に置き、すぐにお茶を淹れて運んでくる。
「お待たせ致しました」
「エリシャさんたちも食べて。たくさんあるもの」
「お気遣い感謝します。メーア様」
感謝の言葉を口にしてからエリシャは下がるとマシューとヘレンにもクッキーを渡しに行く。
メーアの手作りに驚くマシューの隣では、クッキーを摘んでヘレンが遠い目をしている。
「どうかされました?」
「言ってしまえば水を差してしまうので控えさせて頂きます」
マシューが尋ねるとヘレンからそんな答えが返ってくる。
おそらくだが、ローザがいない間練習と称して日々大量に出来上がるクッキーを食べていたのだろう。
そう言えば、レンが良く差し入れだとお菓子を持ってくるのだが、最近はクッキーのような焼き菓子は最近見ていない。
当分は遠慮しておきたいとぼやいていたような。
「そうですか」
「とても練習されていたのですね」
「ええ」
短い会話をしながらメーアとローザの方を見ると、メーアがはしゃぎながら何かをローザに話していて、ローザは静かに耳を傾けて時折相槌を打っている。
「それでお兄さまってばレンに巻き込まれてたのよ」
「そうなの」
メーアはクッキーを口に放り込むと、でもと続ける。
「でも、面倒だっていうくせに楽しそうにしてるの」
どうしてかしらとメーアは不思議だと言って、自分たちの時はちょっと八つ当たり気味にからかってくるのにと愚痴をこぼす。
「そうね、不思議ね」
短い間でもフィンとレンがお互いに憎まれ口を叩く関係性だと分かっているローザはクスクスと笑う。
きっとクッキーもレンが上手いこと誘導して手伝わせたのだろう。
本当にあの二人は主従と呼ぶより友人と呼ぶ方がしっくりくる感じである。
メーアの話題はコロコロと変わっていき、シエルがローザに勉強を教わった話になり、シエルはローザの説明はわかりやすいと絶賛していたメーアは言う。
「それで、私も今度聞きに来てもいいかしら。なかなか聞ける人がいないの」
「手の空いている時なら、いつでも」
「ありがとう、ローザさん」
それなら明日と約束を取り付けたメーアは、フィンの説明で分からなかったところを教えてもらうと言い、珍しく嫌いな勉強を張り切っていた。
ありがとうございました。
ローザが来て一番楽しんでるのはきっとメーアです。




